軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第十章 ぶっ倒して終わりだろ?

「はーい、ここが伝説の聖剣が眠っていた場所になりまーす」

ヴァルマンの街の南東にある『古の洞窟』。かつてレベル90以上の勇者のみが持つことを許された伝説の聖剣が眠っていた白く神秘的な光を放つ場所で、胸元の開けた魔術師のローブを身に纏った妖艶な色気を放つ観光ガイドがフラッグをひらひらと揺り動かしながらそう言った。

「なあなあガイドさん、伝説の聖剣ってどこに行っちまったんだ? 勇者が持ってんのか?」

「伝説の聖剣は一度も使われることなく、皆さんもよくご存じの一人の村人によってそれが何かもわからずに行商人に売り払われましたー」

観光ガイドがそう言うと同時に、観光ガイドの案内で連れて来られた魔族と人間を含む十数人の観光客は全員、伝説の聖剣がどういうものかを知っているが故にざわつき始める。それを見て、ウェーブの掛かった紫色の髪をした観光ガイドは、「ま、そういう反応になるわよね」と鼻で軽く笑った。

「こ、この台座に剣が刺さってたんだよな? 何で……こんな強引に剥がされたみたいになってるんだ? えぐられたみたいになってるぞ」

「そちらもかの有名な村人が強引に引き剥がしましたー」

「ど、どうして引き剥がされたんですか? 何か意味があって? 剣を抜こうとして?」

「そこは詳しくは伝えられておりません。村人が引き剥がしたとだけ伝えられております」

言い終えた後、心の中で『本当は私達が素直に力を認めなかったからだけど』とつぶやき、わざわざ自分が犯した醜態をさらす必要はないなと、一見観光ガイドには全く見えないパルナは観光客の質問を次々に華麗にさばいていく。

「それでは今から三十分間休憩時間と致します。この場所は古の魔術師の力で守られてモンスターが侵入しませんのでご安心ください。ここから離れて洞窟内を見回りたい方は付き添いのスタッフにお声がけの上、一緒に行動するようにお願い致します。スタッフが安全を保っているとはいえダンジョン内のモンスターには充分ご注意くださいませ」

そう言い終えると同時に、パルナはフェードアウトするかのように聖剣が眠る場所からそそくさと脱出し、「……疲れた」とぼやきながら大きく溜息を吐いて肩を軽く回した。

この古の洞窟を観光スポットにするにあたって、モンスターの総数を減らすために毎日のように雇った元冒険者に依頼して駆除を行っているため、よっぽどのことがない限り危険はない。

それと観光客として訪れた魔族連中には魔力を抑える布を巻き付けてある上、あの場所から出ようとする者がいても雇った熟練の元冒険者が観光客を守ってくれる。

「……私も休憩しよ」

カジノに鏡がいなくなって既に三年の月日が過ぎていた。

カジノは更なる発展を遂げ、こうして本来なら高レベルの者しか足を運びいれることのできないヴァルマンの街周辺にあるダンジョンを観光スポット化させ、お金を稼ぐようにまでなっていた。安全を確保するのに維持費が掛かるが、モンスターを駆除することで得られるお金も利益に計算することで、割の良い仕事として運用していた。

とはいえ、危険が伴うため熟練の冒険者の同行が必須ではある。

いつもならカジノで雇った冒険者だけで向かわせる仕事だが、たまたま今日人手が足りなかったため、こうしてパルナが抜擢されたのが事の発端だった。

「デビッドの奴……帰ったら絶対に何か奢らせるんだから。今日の給料も水増ししてもらわないと。なーにが、「パルナ様がいれば安心ですなふぉふぉふぉふぉふぉ!」よ!」

ふらふらとダンジョンの中を歩きながら、パルナは愚痴をつぶやく。

だが 事実、デビッドの言葉は間違ってはいなかった。

「ぎぃいいいいい!」

「邪魔!」

どこからか流れ着いた魔族の魔力がスポーンブロックに蓄積したことにより、経った今出現したばかりのブルーデビルがパルナの放った爆破魔法により一瞬にして葬り去られる。

使った魔法は、三年前にパルナが使っていた爆破魔法と全く同じである。なのにも関わらず昔はてこずっていた相手を一瞬にして消し去れたのは、単純にパルナのレベルが143という、かなりの実力を兼ね備えた存在になっていたからである。

これ程の実力を持つようになったのも、全ては三年前に交わした約束を守るため、そして、守っていたからである。

「アリスー、どうせ今日も来ているんでしょ? 出てきなさいー」

暫くふらふらと洞窟内を歩いた後、おもむろにパルナはそう叫び始める。

返事はなかったが、おおよそいるであろう場所の見当はついていたため、声をかけながらも古の洞窟内をそのまま歩き続けていると、宝石のように輝く長く赤い髪を揺らし、パルナの胸元くらいの背丈はあるであろう小柄な少女が古の洞窟の壁に向かってもぞもぞと動いているのを発見する。

その少女に近付くと、その少女は手に持った金槌を振って、コンコンッと何かを砕く作業をしていた。