軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

向き合うこと、それが始まり-14

「素晴らしい。実に素晴らしい! いやはや生きていて良かったですよ。表情に出ない方ですが王もきっと喜ばれているはずです。さあ、折角助かった命なのですから……無駄にせず、私の言う通りに行動していただけると助かります」

そう言って、ミリタリアは威圧するように鏡を睨みつける。だが、次の瞬間――、

「……黙れ」

その言葉が耳に入ると同時に、ミリタリアの視界は一瞬真っ暗になった。

何が起きたのか、ミリタリアには理解できなかった。そしてすぐに気付く、今の一瞬で鏡が自分の目の前にまで接近していたことに。

「な……何をしたのです?」

「制限を……解除した」

「制限? ああ……パルナが言っていたほんの少しの時間だけ強くなる力ですか。ですが私のスキルの前では無駄です。私のスキルは敵対する存在の全てのステータスを5割も削る。『神に愛されし者』の力。更に私自身が放つステータスダウンの魔法を重ねることによってあなたの力はレベル100にも……満た………………な……い?」

そこまで言葉にして、ミリタリアは異様な鏡の様子を前に思わず額に汗を浮かばせて言葉を途絶えせせる。

自分のスキルの力は発動している。身体能力を下げる魔法もかけ続けている。なのに、鏡は性能が落ちたと思えない程に威圧的な闘気を放っていた。かつて自分の力の前にこれほどの威圧的な力を全身から放つ存在がいただろうか? いや、いない。

そうはっきりと思える程に、すぐ目の前にいる存在は身の毛のよだつ程に怒りに満ちた表情で、全身から禍々しい程の闘気を放ってこちらを見据えていた。

「馬鹿な……力は抑えているはずなのに! パルナから聞いていた制限解除とは違う? な、何をしたのです!?」

「きっちり下がってるよ。身体がだるくなってる感じがひしひし伝わってる」

「な、ならば何故それ程の力が!? あなたの制限解除は本来の力を2、3倍するだけのもののはず……そもそもの力が低ければ効果はないはず……っ!」

すると、焦りきった表情でミリタリアが言葉を吐き続けている間、真顔だった鏡はそこで不敵な笑みを浮かべ――、

「俺が……ここまで追い込まれるまで。この力を使わなかったのはなんでだと思う?」

威圧するようにそう言った。

対するミリタリアは思わず後方へと飛び退いて冷や汗を浮かべた。もしも、パルナから聞いていたこの男の力から、その真意を予測するなら、答えは一つしかなかったから。

「私達を利用して……強くなっていたですと?」

「不利による経験値はどうやら……モンスターと魔族との戦いじゃなくても入るみたいだな。かなり危なかったし、予想外に死にかけたけど……おかげでお前をぶっ飛ばせる」

その瞬間、ミリタリアの全身から噴き出るように汗が溢れ出した。それと同時に気付く、先程、自分の視界が真っ暗になったのは……この男の威圧的な力の前に、気絶したのだと。

威圧したつもりが、威圧されていた。そう素直に理解出来るほどに、ミリタリアは目の前の男が恐ろしく感じていた。どす黒いまでの力の渦を放ち、目を合わせられぬ程に恐ろしい形相でこちらへと一歩ずつ近付いてくる存在に、恐怖せずにはいられなかった。

「お前は一番……やっちゃいけないことをやったんだ」

そして飛び退いたミリタリアを追い詰めるかのように一歩ずつ近づきながら、鏡はそうつぶやいた。

「大切な人の死が、どれだけその後の人生に大きな影響を与えると思ってる? どれだけその人がいなくなったことで自分の生き方を変えようともがき苦しむか……お前は知ってるか?」

まるで、自分が体験してきたと言わんばかりに、近付けば近付く程に、鏡の表情は更に険しく、更に大きな威圧を放った。大気が震えていると錯覚する程に。

「まだその死が、自然に成り立ったならいい。でも……パルナは違う。お前が、お前の作り上げた嘘に苦しまされたんだ。わかるか? お前はパルナの人生を狂わせたんだ」

気付けば、ミリタリアの足元は震えていた。今すぐ逃げ出したい程の恐怖が目の前に接近している。だが、バリアのせいで逃げ道はない。ふと王に助けを求めようと視線を送るが、王も予想外の事態なのか、焦った表情を浮かべて動かずにいた。

「う、うわああああああああ!」

たまらず、ミリタリアは自分が使える攻撃魔法を鏡に向けて連射する。だが、僧侶のミリタリアに使える攻撃魔法は多くなく、結局全て通用せず、鏡は止まることなく魔法を喰らいながらミリタリアへと近付いた。

「結局……全部。パルナが魔族を恨んでいたのも、クルルとレックスが洗脳されたのも、魔族が虐げられる世界になっているのも全部……魔王討伐に固執しているから、強い奴を次のステージに送り出そうとすることに必死になっているからじゃねえか」

「そ、それが、全てです! 王は誰よりもこの世界を考えて……!」

「ふざけんな……たった一つの目的のために、多くの連中が悲しむようなのが全てだって?」

そして、鏡は力強く拳を握り締めるとゆったりと力強く、拳を振り上げ――、

「そんなの、俺が断じて認めない」

そう叫びながら、拳をミリタリアの顔のすぐ横に振り抜いた。

その瞬間、ミリタリアは殴られてもいないにも関わらず、その拳から発生した衝撃波により側面の壁に展開しているバリアへと身体を打ち付ける。

一瞬の出来事だった。ステータスが極端に下がっているにも関わらず、当たってもいないただの拳圧で人が吹き飛んだ光景に、その場で見ていた者全員が驚愕の表情を浮かべた。

そして、衝突のダメージとバリアから跳ね返ったダメージに耐えられなかったのか、ミリタリアは悲痛な叫び声をあげるとそのまま気を失わせて床へと倒れ込んだ。