軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第45話:トーグ村防衛戦 その1

「名代殿、本来なら私か御嬢様がするべきことをお任せしてしまい申し訳ございません」

「気にするな。さっきも言ったが、兄に妹を斬らせるわけにはいかん。カリン殿に命の恩人を斬らせるというのも……酷だろう」

エミリーの首を落とし、他の遺体がモンスター化していないことを確認していた俺は、背後からかけられたクリフの声に振り向かずに答えた。カリンは茫然自失としてしまい、先ほどまで休んでいた家屋へと兵士をつけて送っている。

エミリーを斬るのは他の者に任せることもできた。俺の立場上、兵士に命じて責任を負うのが正しい在り方だったかもしれない。

だが、その命令に従う者はどう思うだろうか? いくらエミリーが既に死んでいて、ゾンビになっていたとして、だ。数時間前までは生きていて、主君を守るために死んだ者を斬るっていうのは嫌だろう。少なくとも俺なら嫌だ。

しかもエミリーはまだ子どもといえる年齢の女の子だった。見た目や年齢、性別で区別するわけではないが、兵士の中にはエミリーぐらいの年齢の娘を持つ者もいる。クリフのようにエミリーと似た年齢の妹を持つ者もいるだろう。

だから俺が斬った。気が滅入るし吐きたくもなるけど、斬った。これならゾンビじゃなくて幽霊みたいな死霊系モンスターになってくれた方が気分的にはまだ楽だった。そう思うぐらい、気分が悪くて精神がささくれ立つ。

それでもこれまで培ってきた貴族としての教育だとか、ランドウ先生に叩き込まれてきた剣士としての精神だとか、そういったものを支えにして堪える。

「若様、兵士を呼んできましたが……」

「御苦労。紐で縛るだけじゃ安心できないんでな。今から焼くぞ」

ゲラルドが兵士を呼んできたためそう宣言する。本当なら夜が明けてから火葬したいが、エミリーがモンスター化した以上放っておけない。

首を落としたとしても、『花コン』にはデュラハンという首無しの騎士みたいな外見のモンスターが登場する。そのため、遺体の首を落とした状態で夜明けまで待つのは怖い。リッチと同じく中級だが、その強さは中級の中でも上位に位置するからだ。

その点、肉体を焼いてしまえば死霊系モンスターになっても限度があるだろう。レイスっていう悪霊みたいなモンスターもいるが、『黒弾』を撃ってくるぐらいで強くない。まあ、5%の確率で即死すると思えば怖いが。

「クリフ殿、遺品や遺髪を回収したらすぐに焼くが構わないか?」

「こうなっては仕方ありません。ですが、焼く時は御嬢様に立ち会っていただきます」

そう言ってクリフは厳しい顔をするけど、それはさすがに無理じゃないか? 俺がエミリーを斬ったせいで精神の限界が近いと思うんだが。

俺が危惧していると、言葉に出さなくても通じてしまったのかクリフの表情の厳しさが増す。

「御嬢様は名代殿と同じ年齢で、我々にとっては主家の方です。名代殿と同じことをとまでは言いませんが、立ち合い程度はこなしてもらわなければ」

現状、キドニア侯爵家側で生き残っている者の中ではカリンに次いでクリフが上位者になる。そのため俺からも反対はしにくいんだが。

「貴公は手厳しいな……だが、それがカリン殿への当てつけや反発からの発言なら責任者として止めさせてもらうぞ。外敵に備えているのに村の中でモンスター化されると困るから焼く。それ以上でもそれ以下でもないからな」

「……そういうわけではありません。ただ、亡くなったのはキドニア侯爵家の者達ですから。その お(・) 血(・) 筋(・) である御嬢様に立ち会ってもらうのが筋だと思ったまでです」

防衛の責任者として突いてみると、クリフは真面目な顔で答えた。反応するのに少し間があったけど、まあ、見なかったことにしよう。筋としては間違っていないし。

カリンの立ち合いはいいとしても、火葬の臭いに釣られるモンスターはどうにか対策したい。ダンジョン化した当日だから数が少ないかもしれないけど、念には念を入れるべきだろう。

前世で売っていた消臭剤みたいなものがあったら……いや、さすがに無理か。

(獣系なら鼻も利くだろうし、村の外で焼いてモンスターを誘き寄せて魔法で吹き飛ば……いや、何を考えてるんだ。さすがにそれは駄目だ。くそ、どうにも普段通りとはいかねえな)

一瞬、外道な方法が浮かんでしまって思考を打ち切る。平常心を心がけているが、ささくれ立った精神は普段よりも過激な案を導き出してしまった。

他に手段がないのなら仕方ないが、それをやったらキドニア侯爵家の者達からの印象は最悪なものになるだろう。うちの兵士達も命がけで戦っても死体ごと吹き飛ばされるかもしれない、なんて思えば士気が下がってしまう。

(守られる側の住民からも不満が出そうだし……住民……住民か)

そういえば、と記憶を探る。この村は近隣にあった二つのダンジョンに挑むための拠点でもあるのだ。そのため冒険者が少なからずいるし、今回の騒動で指揮下に組み込んでもいる。

「ゲラルド、冒険者を呼んでくれ。いくつか聞きたいことがある」

「はっ! 少々お待ちください!」

俺が指示を出すと即座にゲラルドが動き出す。初陣を乗り越えたからか、出会った頃と比べれば動きに迷いがないし指示に従うのも早くなったようだ。

その証拠に、五分と待たされることなくゲラルドが戻ってくる。その後ろには兵士とは違う雰囲気かつ装備もバラバラな男が三人続いていた。

「この村にいた冒険者の内、中級冒険者を二人。それと引退してこの村に移住していた元中級冒険者を一人呼んできました」

大人数で来られても困ると判断して中級冒険者を連れてきたのか。良い判断じゃないか。

「ありがとう。急に呼び出してすまないな。現在この村の防衛を行っているサンデューク辺境伯の名代、ミナト=ラレーテ=サンデュークだ」

そう名乗って視線を向けると、冒険者達は気まずそうに顔を見合わせる。なんだ? 何か疚しいところでもあるのか?

「その、お貴族様相手に失礼がないような喋り方はできねえんですが……」

「ああ、そんなことか。その気遣いだけで十分だ。この状況で細かいことは言わんさ」

どうやら失礼なことを言ったらまずいのでは、と警戒していたらしい。今の状況で礼儀がどうとか気にする余裕はないし、俺のスタンスとしては露骨に侮られなければ流す。

「早速だが聞かせてほしい。ダンジョンに入った時、臭いの対策はどうしていた?」

わからないことはわかる人に聞けばいい。それも騎士や兵士が行うような 真(・) っ(・) 当(・) な(・) 対(・) 処(・) 方(・) 法(・) ではなく、少人数で行動する冒険者ならではの方法があるのではないか。そう判断して問いかけた俺に、この村に移住していた年嵩の元冒険者は合点がいったように頷く。

「そういうことですかい。その臭いっていうのは、あー……死体の処理についてですかね?」

「話が早くて助かる。他にもモンスターに気配を悟らせない方法とかもあれば聞いておきたいが、まずは臭いの対策についてだ」

モンスターになっちまったか、と呟く冒険者達。その反応からダンジョン内で死んだ人間がどうなるか、よく見知っているのだろう。

「臭いの対策ってのは割と簡単ですぜ。体や鎧に磨り潰した草を塗ったり、泥を塗ったりするんですわ。 ダ(・) ン(・) ジ(・) ョ(・) ン(・) 内(・) に(・) あ(・) る(・) も(・) の(・) で(・) においを上書きすると気付かれにくいんでさぁ」

「ほう……なるほどな」

「それと死体は魔法で風を使うと臭いが周囲に広がらねえし、敢えて臭いを流してモンスターを誘導することもできやす。首を落として焼けばモンスター化はしねえと思いやす」

言われてみれば納得の対策方法である。消臭剤でにおいを消すのは思いついたが、俺は木属性魔法が使えないから風を使ってどうこうっていうのは思い浮かばなかった。

(風で臭いを操ってモンスターを誘導して、魔法でズドン……モリオンならできるか?)

対策はどうにかなりそうだ。風を使って云々は木属性魔法が使えないとどうにもならないけど、モリオンだけでなく兵士の中にも使える者が何人もいる。

「あとはモンスターに気配を悟らせない方法ですが……こっちはちぃと難しいかと。においの対策をして足音を立てない、金属の防具を脱いで音を立てない、風上に立たない。それぐらいしか方法が……死霊系モンスターなら誤魔化しやすいんですが」

「その方法を詳しく教えてくれ」

いや、死霊系モンスターに気配を悟らせない方法とかそっちの方が重要だろ。死霊系モンスターはリッチだけじゃないし、何かあった時に便利じゃないか。

「これも魔法を使うんでさ。死霊系モンスターは魔力に敏感らしいんで、それこそ魔法で風を起こすとそっちに気を取られるから近付くのも逃げるのも簡単になりやす」

魔法の魔力で気配を見失うんでさ、と付け足す元冒険者。なるほど、とは思うものの俺じゃあ活用できない。『風刃』すら使えないから気配を隠して近付くぐらいしかできないぞ、俺は。

「勉強になるな……ちなみに実践はしたか?」

「もちろんでさ。兵士や騎士の方々なら正面から対処できるんでしょうが、冒険者の場合はその手の や(・) り(・) 過(・) ご(・) す(・) 手(・) 段(・) ってのが大事でしてね? ただまあ、あくまで少人数で行動する時の話なんで、今回みたいに大人数だとさすがに難しいでしょうな」

「そうだな。さすがにこの村の人数……だと……」

元冒険者の話を聞いていた俺は、ふと、閃くものがあって言葉を途切れさせる。

この村には大勢の人間がいて、ダンジョン内だとモンスターが人工物や人を狙って襲ってきて、そんなモンスターの中でも確率で即死させてくるクソみたいな魔法を使ってくる存在がいて。

(リッチは厄介だけど、今の情報が本当なら手の打ちようもある……か? 死体を焼く臭いは風魔法でできる限り散らして、死霊系モンスターが出たら……)

救援がくるまで防衛戦に徹しなければ、と考えていたけど、ある程度はこちらから仕掛けてもいいかもしれない。特にリッチの対処は急務だ。広範囲に即死魔法をばら撒ける存在なんて即座に排除する必要がある。

もちろん、リッチが現れなければ無理をする必要もないんだが。

(あとは村の住民が自棄にならないよう注意して、しっかりと守って鼓舞もして……負の感情が少しでも溜まらないよう、『想書』を書かせることも徹底しないとな)

ひとまず今夜を乗り切れば明日の日中に村の防備を更に整えられるだろう。そして多少は長期戦になることも覚悟しなければならない。

「よし……大体の方針は決まった。ゲラルド、村の者達には毎日『想書』をしっかりと書くよう伝達しておいてくれ。それと騎士を集めろ。今夜の防衛態勢と休憩を取る順番を決める。ああ、日中に魔法を使った兵士は最優先で休ませるからな。明日も働いてもらう」

俺は総指揮官として眠れないが、可能な限り兵士を休ませなければならない。そんなことを考えつつ、キドニア侯爵家側の代表としてクリフも含めて騎士達を集めたんだが。

『若様はお休みください』

マーカス、クリフ、他の騎士達に揃って休むよう言われてしまった。いや、待ってくれ。俺は総指揮官だし、せめて初日の夜ぐらいは……。

「指揮権をいただければ私の方で守り抜いてみせます。ここまで防備が整ったのならなんとでもなりますから」

マーカスが真面目な顔でそう言えば、クリフもまた、真面目な顔で頷く。

「名代殿に助けていただいた命、ここで使うことに躊躇いはありません。どうぞご命令を」

いやいや、君はほら、指揮権の問題がね? 他所様の騎士だからそうはいかないからね?

「何かあれば起こすことになると思いますが、若様にはできる限り休んでいただきたく」

「若様は総指揮官なのですから、家臣に任せてゆっくりとお休みください」

他の騎士からも休めと言われてしまう。たしかに肝心な時に使い物にならなかったらまずいし、休める時に休むのも仕事だけどさ。初日から休むのって村の住民達からどう思われるか。

「安否が知れぬキドニア侯爵家の方々を救出するために、自らダンジョンの中に飛び出していかれたのです。名代殿を侮る者、不安や不満に思う者は住民の中にはおりませんよ」

トーグ村の代官までそんなことを言ってくる。

(うーん……ここまで言われて無理に起きていたら逆に反感を買うか。仕方ない……)

俺はため息を一つ吐き、意識して苦笑を浮かべた。

「そこまで言うなら火葬を済ませてから休もう。マーカス、俺が休んでいる間は指揮官代行として他の騎士と協力しながら防衛をしろ。他の者達もきちんと休みを取れよ?」

休むにしても、まずは火葬を終わらせないと落ち着かない。モンスターの襲撃頻度によっては寝ている暇もないだろうしな。

「あと、俺を寝かしつけてまで指揮を執るんだ。住民、兵士、そしてお前達全員、勝手に死ぬことは許さん。いいな?」

寝て起きたら大勢死んでいた、なんてことになったらさすがに精神がもたんぞ。何かあれば起こすだろうけど、寝ている間に人が死ぬかも、なんて考えると本当に寝付けるかどうか。

それでも休める時に休んでおかなければ。睡眠不足は悪影響しか及ぼさないしな。

そして、風の魔法で対策した状態で死体を火葬するとモンスターが大量に襲ってくることはなかったため、俺は後事を託して眠りにつくことにした。最終防衛ラインとでも評すべき、村の中央広場に面した民家で雑魚寝だ。

『ククク……カカカ……』

だが、眠ろうとしていると何やら遠くから笑い声が聞こえてくる。人間のものとは思えない、不快で甲高いその笑い声は風に乗ってトーグの村の防壁を超え、内部にまで届いてきた。

『アアアアアアアアアアアァァァァ……』

『オオオオオオォォォォ……』

笑い声だけでなく、無念と絶望を滲ませた唸り声も聞こえてくる。おそらくは死霊系モンスターのものだろう。

完全に日が暮れて死霊系モンスターの活動が活発になってきたのか、うるさくて眠れない。

何かあった時のために備えて耳栓をして眠るわけにもいかず、かといってこのまま眠るにはうるさすぎる。それに、兵士や騎士が守っているとはいってもここは既にダンジョンの中だ。トーグの村の住民達は俺以上に耳障りに、そして不安に思うだろう。

(……大人しく寝ておくつもりだったんだけどな)

俺はため息を一つ吐いて目を開ける。『魔王』が発生するメカニズムを知らなければ無視して眠ったが、このままだと村の住民達から発生する負の感情がとんでもないことになりそうだ。

「モリオン、起きているか?」

「はっ。起きています」

名前を呼ぶとすぐにモリオンが身を起こす。眠るのに邪魔だから防具は脱いでいるが、何かあった時のために武器は手元に置いてあった。俺は愛剣を手に取ると、あくびを一つ漏らす。

「ふぁ……モンスターがうるさくてかなわん。この分だと村の者達も不安で眠れんだろう」

「そうでしょうね……さすがにこの状況で眠れる者は少ないかと」

そうだよな。俺もそう思う。防衛の指揮は任せているけど、こうして村の外から笑い声や唸り声が響いてくるだけだと対処が面倒だろう。

だが、非常に効果的な手だ。声だけでこちらを不安にさせ、なおかつ疲弊させることができる。しかも村の中から攻撃しようにも、暗くて視認しにくい。

「ところでモリオン、君はどれぐらい強い魔法を使える? 光と闇以外なら中級以上の魔法も全属性使えたりするのか?」

「えっ? あ、はい。中級までですが」

「それは助かるな、っと」

俺は自らの『召喚器』を生み出し、ページをめくる。今回の件、初陣の時と比べても大きな出来事といえるだろう。そうなると――。

(……よし、やっぱりページが増えてるな。少しでも増えていて……くれれ……ば……)

『召喚器』がどれぐらい変化したかを確認して、思わず動きを止めてしまう。

『召喚器』は新しく三ページ増えていた。その点に関しては、まあいい。増えると思っていたから実際に増えていても驚きはない。

増えたページの一ページ目はモリオンが俺に対して膝を突いている絵である。軍監を護衛しながらダンジョンから脱出しろって言った時の光景だった。これに関しては……なにやらモリオンの態度が妙なことになっていたし、驚きはない。

問題は次のページだ。俺がゾンビ化したエミリーの首を斬る瞬間――それを、目を見開いて驚愕とも絶望ともいえない顔で見ているカリンの姿が描かれている。

俺の『召喚器』はこれまでの傾向から、『花コン』の主要キャラに何かしらの影響を与えた場合にその場面が記録されているのではないか、と考えていた。そうなると、俺がエミリーを斬った時にカリンが抱いた印象、与えた影響が何なのか。

(俺の立場で考えるなら、ナズナが俺を庇って死んでしまった上でゾンビ化して……それを斬った相手、か。『花コン』云々抜きにして、何も思わないっていうのは無理だな)

カリンやクリフにゾンビ化したエミリーを始末させることを考えれば、最善だとあの時は思った。しかしこうして後々考えてみると や(・) っ(・) て(・) し(・) ま(・) っ(・) た(・) ような気もする。

だが、クリフに語った通り恨むなら恨めと、そう覚悟して斬ったのもまた事実。後になって悔いるのはそれこそエミリーに対する侮辱だろう。

(どのみち、カリンが婚約者候補になったとしても後々破局するんだ。それを考えれば悪い流れじゃない……酷い話だけどな)

『花コン』のミナトとは違った理由で謀殺されそうだな。

そう考えると思わず乾いた笑いが口から出てきそうになるが、追加された最後のページを確認することで心を落ち着ける。

そこに描かれていたのは、目を瞑って祈るように手を組んでいるスグリの姿だ。

一瞬俺の脳内に疑問符が飛び交ったが、おそらくは母親を治療した俺が今回の件で大変な目に遭っているとでも思い、無事を祈ってくれている――すぐにそんな願望を抱いてしまったのは、カリンのページのインパクトが強すぎたからだろうか。

「ミナト様、それは? 『召喚器』ですか?」

「ああ。いまいち使い方がわからないけど、一応は役に立つ。モリオンの『召喚器』は?」

動揺や葛藤を飲み込んで尋ねると、モリオンは手をかざして己の『召喚器』を発現させる。

そこに現れたのは一振りの杖だ。打撃には向いていない短い杖だが、先端に五つの宝石がはめ込まれている。宝石はそれぞれ青、赤、黄、白、紫と五色にわかれており、俺が『花コン』で知るものと同一の『召喚器』のようだった。

外見だけでなく名前や性能も『花コン』と同じなら、『 五剋放杖(ごこくほうじょう) 』で間違いないだろう。年齢的にまだ使えないだろうが、『顕現』の段階まで至ると光と闇を除いた五属性の魔法を同時に放つ、魔法特化の必殺技を使えるようになる『召喚器』だ。

『顕現』まで至らなくても魔法を使いやすくする上に威力を高める効果があり、魔法特化のモリオンに相応しい『召喚器』と言えるだろう。

「この杖が私の『召喚器』です。効果は魔法の威力の増大で、この『召喚器』があるからこそ中級魔法まで使えるといっても過言ではないでしょう」

中級魔法は基本的に範囲攻撃だ。下級魔法と比べると消費するMPが増えるが、威力も増える。その点で見れば汎用性があって便利な『召喚器』だ。

「しかしミナト様、何故突然『召喚器』をお出しになったのですか?」

「ちょっとした確認さ。それでモリオン、危険だけど手伝ってほしいことがある。ついてきてくれるか?」

俺がそう問いかけると、モリオンは目を瞬かせた後に表情を輝かせる。

「もちろんです! 私の力を御所望とあらば、どこへでも!」

「そうか……ありがとう。ちょっとリッチを斬りに行こうと思うんだ」

「はっ! ついていき……え?」

大きく頷いたものの、すぐに首を傾げたモリオンへ俺は笑いかける。

初日の夜からリッチが出てくるとかやばいし、うるさくて眠れないし、一狩りいこうぜ。