軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第205話:誕生日パーティー その2

この世界でパーティーというと堅苦しいイメージがあるが、身内で行うパーティーはさすがに例外である。

特に誕生日を祝うパーティーとなると用意した料理や飲み物に舌鼓を打ちつつ、楽しく談笑して祝うのが一般的だ。前世なら一発芸を披露する者もいるかもしれないが、さすがにそれはない。いやまあ、道化師であるアレクがいるから、やってもらおうと思えばできるけども。

「透輝くん! おたんじょーびおめでとー! はいこれプレゼント!」

「おう、ありがとうエリカ……クッキー?」

「うん! とっても美味しいんだよ! あとで食べてね!」

誕生日パーティーが始まるなり、エリカが真っ先に突撃して透輝にプレゼントを渡す。どうやら消え物を選んだらしい。適切といえば適切だろう。

「あ、あの、透輝さん……わたしからは、その、これを……」

「ありがとうスグリ。これは……ポーション? えーっと、この色の濃さだと……」

「ちゅ、中品質の回復ポーション……です」

続いて、スグリが透輝に中品質の回復ポーションをプレゼントする。錬金術の師匠として、こちらも適切な代物だろう。透輝は表情を輝かせると、早速剣帯のポケットにポーションを差し込んでいる。

「では次はわたしから……透輝、これを」

「ありがとうナズナ。これは……グローブ?」

「ええ。剣の扱いには多少慣れたようだけど、まだ手の皮がそこまで厚くなっていないから。手を保護するためのものよ」

「おお……なんかカッコいいなコレ」

そう言って早速グローブを手に付ける透輝。革で作られた指抜きグローブで、手の平を保護するためのものだ。あとは拳で殴るのに使ってもいいだろう。拳の保護にも役立つはずである。

(うーん、実戦的なチョイス……さすがナズナだな)

値段も手頃だし、学園の売店でも買える。もしも壊れてしまったら買い直すこともできるな。

「それではテンカワ、私からはこれをプレゼントしよう」

「ありがとう、モリオン。えー……っと? これは?」

「来週のテストの試験対策だ。復習がてら作ってみた」

「実用的だな!? でもめっちゃ助かるやつぅ!」

モリオンが差し出したのは紙の束だった。そしてその内容を聞いて透輝が驚くが、モリオンらしいというか、なんというか。俺もちょっと欲しいな、なんて思えるプレゼントである。

「それじゃあ次はアタシね。はい、プレゼント」

「ありがとうアレク……って、この瓶はいったい……」

「香水よ。身だしなみはしっかりしないと、ネ?」

そしてアレクはというと、プレゼントに香水を選んだらしい。アレクのことだから香りもバッチリだろう。あとは訓練後は汗とか臭いとかに気を付けなさいっていう注意かな?

「それでは透輝! 次は僕からのプレゼントだ!」

「お、おお、ありがとうルチル。早速開けさせてもらうけど……これ万年筆だっけ?」

「そうだとも、是非使ってくれたまえ! 本当はもっと高いものにしようかと思ったんだが……」

ルチルはそう言いながら頬を掻く。実家の家業に対して思うところがあるからか、ルチルは言葉を濁した。あるいは、高額なプレゼントを贈るのは実家の影を感じるから嫌だったのか。万年筆とはいうが、質は良くとも値段はそれなりのプレゼントに丁度良い品を選んだらしい。

「それじゃあ次はわたしね。はい、透輝君。プレゼント」

「ありがとうございます、カトレア先輩。えーっと……これは?」

「ハンドクリームよ。剣を振っている内に手の皮が厚くなっていくけど、ケアも大切だから買ってきたの」

おっと、カトレアは女性らしいというべきか、ハンドクリームをプレゼントに選んだらしい。たしかにケアについては意識したことがなかったな。子どもの頃から剣を振っていたら自然と手の皮が厚くなっていたしさ。

各人が贈るプレゼントを見ながら色々と考えていたが、次は俺の番かな、とプレゼントを取り出す。最後はやっぱりアイリスに回すべきだろう。

「透輝、俺からの誕生日プレゼントはコレだ」

「……短剣? え? マジで!? いいのか!?」

俺がプレゼントに選んだのは短剣である。剣帯は既に贈っているし、剣はアイリスが贈ったため、他の物をと考えて思い浮かんだのが短剣だったのだ。

ただまあ、買ってプレゼントするには高く、俺一人だけ突出して高いプレゼントになりかねないため、俺が持っていた予備の短剣をプレゼントする形だ。使う機会がなかったものの、手入れはしっかりとしていたからすぐに使うこともできる。

「うわぁ……ミナトがほら、腰のところにつけてるだろ? それ見てカッコイイなぁって思ってたんだよな!」

そう言って透輝が俺の腰裏につけている短剣へ視線を向ける。俺の短剣はあくまで予備の武器であり、『瞬伐悠剣』が使えない時、持ち込めない時のサブウェポン、あとは投擲用の武器でしかないが、それなりに質の良いものを選んでいた。

透輝の場合は『鋭業廻器』やアイリスから贈られた名剣を主に使い、俺が渡した短剣は予備の予備と使い道がないかもしれないが、備えっていうのはないよりもあった方が良い。なんなら俺と同じで投擲しても良いのだ。あ、今度から投擲術も教えるか。うん、そうしよう。

「今度中規模ダンジョンに挑むからな。予備の武器もあった方がいいだろ?」

「うん、待ってくれ。中規模ダンジョンに挑むってなに? 初めて聞いたんだけど?」

「初めて言ったからな」

丁度良いから『飛竜の塒』に関して透輝に簡単に伝える。これもサプライズってやつだ。腕試しの絶好の機会だから嬉しいだろ?

「ひ、『飛竜の塒』? 名前から考えるとドラゴンが出そうな感じだけど……」

「おう、出るぞ。ドラゴン系に鳥系に獣系と複数の種類のモンスターが出るダンジョンだ。ドラゴン系オンリーってわけじゃないからまだ易しいな」

あと、出現するドラゴン系モンスターも火竜みたいに強いやつじゃない。ダンジョンの名前のもとになった 飛竜(ワイバーン) や空を飛べない 地竜(ちりゅう) ぐらいだ。

各属性を司る火竜や水竜なんかは上級モンスターだけど、ワイバーンや地竜は中級モンスターである。ただまあ、ドラゴン系ってことでステータスが高く、他の種類のモンスターと比べれば格段に強いが。

なお、『花コン』だと手に入れたドラゴンの卵から生まれるドラゴンは飛竜や地竜ではなく、光属性の 光竜(こうりゅう) になる。これは光属性の主人公が卵から育てた影響とされ、ダンジョンだろうと突っ込める便利な移動手段となる。

「俺のししょーが恐ろしすぎる……い、いや、ミナトじゃなくてミナトに剣を教えた師匠の影響か?」

いやいや、安心しろよ透輝。ランドウ先生から教わったことを易しい難易度に置き換えているだけだぞ。ランドウ先生なら事前の説明なしで鉄火場に放り込むからな。

ただ、誕生日パーティーで詳しく話す内容でもない。そのためここまでで話を打ち切る。

(しかしナズナのグローブにスグリのポーション、俺の短剣と、今日のプレゼントだけで見た目はだいぶ剣士っぽくなったな。これでダンジョンに挑む準備もバッチリってわけだ)

あまり装備を増やし過ぎると今度は動きが鈍くなるため、これ以上は装備を厳選する必要があるだろう。以前ダンジョンで見つけた『俊足の指輪』みたいに、装飾品として身につけられるアイテムがあればいいんだが。

(まあ、この世界で装備アイテムを金で買おうとすればかなり高いだろうし、そもそも店で見かけないし……プレゼントで渡すには 重(・) す(・) ぎ(・) る(・) か)

そういう意味では俺が渡した短剣も大概だが、俺の場合は他のみんなと違って剣の師という立場がある。そのため妥当だろう。

ちなみに値段だけで考えると、スグリの中品質の回復ポーションが一番高いんだが……素材はこの間のダンジョン調査で集めたし、あとはスグリの技術代を除けばほぼタダである。

それにスグリはスグリで透輝にとって錬金術の師匠だし、プレゼントしては問題ないだろう。

「それでは最後にわたしですが……透輝さん、これをどうぞ」

こほん、と小さく咳払いをしてアイリスがプレゼントを渡す。包装紙で綺麗にラッピングがされたプレゼントだが、あれは王都の大商会の包装紙だったような……。

「ありがとう、アイリス。せっかくだから開けさせてもらって……え?」

心底嬉しそうな顔でアイリスのプレゼントを受け取り、中身を確認した透輝だったが、途中で笑顔が固まった。

アイリスがプレゼントに選んだのは外套だった。これからの時期にピッタリなロングコートで、膝ぐらいまでの長さがある。それでいて動きやすさを損なわないデザインになっており、剣帯に剣を差しても邪魔にならないようなっている。

(うわぁ……あのコート、絶対に高いやつだ……)

俺の短剣やスグリのポーションどころではない。アイリスを除く、全員のプレゼント代を足しても到底届かないであろう高級品だ。

動きやすさやデザインだけでなく、防寒性や頑丈さも両立させた逸品である。

「こ、この間、いきなり採寸してきたから何があるのかなって思ったけど……着心地が良すぎる……体にジャストフィット……うん、ジャストフィットってこういう時に使う言葉だったんだなぁ……」

透輝は頬を引きつらせながら外套を身に着け、着心地を確認していく。そして外套を贈ったアイリスはといえば、着飾る透輝を見てニコニコ笑顔だ。なんとも充実したような笑顔である。

(剣の時もまさかとは思ったけど、こんな高級な代物を贈るなんて……い、いや、透輝を召喚したことに対する詫びの一環だと思えば……思えば……うーん……)

以前贈った剣に関しては、王城の宝物庫から持ち出した可能性を考慮した。王家としてもアイリスが召喚した人間に渡すと言われたら拒否はしにくいだろう。召喚したことに対する補償の一環だと考えれば理解もできる。

だが、今回の外套は透輝の体格を採寸して作ったものらしく、完全なオーダーメイドとなるとかなりの高級品だろう。それも透輝の発言を信じるなら割と最近採寸したらしく、今日の誕生日パーティーに間に合わせるために急いで作らせた可能性が高い。

(アイリス、まさか本当に……いや、それこそまさかだよな。透輝に貢ぐことが嬉しかったりはしないよな?)

さすがに言葉に出して尋ねるのは失礼すぎるため何も言わないが、思わずそんな疑問を込めてアイリスを見てしまう。するとカトレアやアレクも俺と似たような視線を向けていたため、俺一人だけの危惧ではないらしい。

そして、プレゼントを贈られた透輝もさすがに思うところがあったのか、頬を引きつらせたままで口を開いた。

「ら、来年のアイリスの誕生日……頑張ってこの服に見合うプレゼントを用意するな?」

「そんな……気にしなくてもいいんですよ? わたしが贈りたくて選んだものなんですから」

そう言って微笑むアイリスに、透輝がますます頬を引きつらせる。

ちなみにだがアイリスの誕生日は六月二十四日のため、まだ半年近く先だ。贈られた外套に見合うだけのプレゼントを透輝が用意するのは中々に難しいだろうが、時間はある。

「と、とりあえず料理を食べましょうか!」

「そうですね先輩! そうしましょう!」

カトレアが話を逸らしてくれたため、俺もそれに全力で乗っかった。

もしかしたら今度のダンジョン巡りでドラゴンの卵以外に何か良い物が見つかるかもしれないし、半年も期間があれば他のダンジョンで宝箱から何か出るかもしれない。

そのため未来の透輝の幸運を祈りつつ、誕生日パーティーを騒がしくも楽しいものとして進めていくのだった。