軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

63.深層へ

じいちゃんに魔術の相談をしてから更に一週間が経過した。

俺は今、武器開発室の鍛冶場に向かっている。

遂に俺の剣が完成したらしい。

「おはようございます、アランさん」

「よぉ、オルン。おはようさん。ついにできたぞ。お前の剣が!」

そう言いながら、布に包まれた剣を渡してきた。

それを受け取ってから、布を捲ると柄から刀身まで全てが黒で統一されている剣が現れる。

要望通り、黒竜のウロコを使いながらも光沢は無く、逆に光を飲み込みそうな黒になっている。

形は俺の身長に合わせた諸刃の長剣。

過度な装飾は無く、シンプルな形状ながら、業物だとすぐにわかるほどの存在感があるように感じる。

「アランさん、ありがとうございます。軽く素振りしても?」

「あぁ、勿論」

空いているスペースに移動してから、黒い剣を振るう。

剣を振る際の違和感は全く無く、手に馴染む。

重心も完璧だ。

(これが俺だけに合わせた剣か。すげぇ……)

「使い心地はどうだ?」

「問題ありません。流石は《夜天の銀兎》1番の鍛冶師ですね。完璧です」

「そいつは良かった。オルンの要望通り、黒竜のウロコや鉱石にはハイドタートルの血を馴染ませている。そのためかわからんが、耐久力は若干落ちちまっている。ま、そこら辺の普通の剣よりはよっぽど丈夫ではあるがな」

「そこは俺の支援魔術でカバーできるので問題ありません」

「そうか。んで? その剣の名前はもう決めているのか?」

「えぇ。銘は『シュヴァルツハーゼ』です」

「シュヴァルツハーゼ? 聞かない単語だな」

「でしょうね。これはとある地域の言語ですから」

「ほお。そんなのがあるのか。その単語の意味は?」

「黒い兎って意味です。《夜天の銀兎》で生まれた黒い剣なので」

「なるほどな。いいんじゃないか」

剣を受け取ってから、作戦室へと向かうと既に全員が集まっていた。

「おはよー、オルンくん! ねぇねぇ! できた剣見せてー!」

俺が入るなり、ルクレがハイテンションで剣を見せて欲しいと言ってくる。

「おはよ、ルクレ。いいよ」

収納魔導具からシュヴァルツハーゼを出す。

ルクレだけじゃなく、他の人たちも興味津々な表情でシュヴァルツハーゼを眺める。

「おぉ! 黒い! カッコいい!」

「黒竜のウロコを使ったにしては、光沢が無いな」

ウィルが疑問を投げかけてくる。

「光沢は無くすようにお願いしたんだ。光に反射してたら目立っちゃうから」

「これで、ついに深層に行く準備は整ったな」

セルマさんが不敵な笑みを浮かべながら呟く。

「待たせてゴメン」

「何、もう一年も待っていたんだ。こんなの誤差の範囲内さ」

「そうね。ようやく深層――リベンジできるときが来たわね!」

レインさんが発した言葉には万感の思いを込められているように感じる。

「では、以前より話していた通り、満を持して深層へと向かう! 今日は九十一層の探索だ。問題が無ければ、再び九十二層の攻略に乗り出す! みんな準備はいいか!

俺たちはセルマさんの問いかけに首を縦に振る。

「……では行くぞ!」

「「「「おぉ!!!!」」」」

大迷宮の九十一層へとやってきた。

ついに、このメンバーで初の深層だ。

九十一層は沼地のエリアとなっている。

足元はぬかるんでいて、上手く踏ん張りが効かない。

ところどころに生えている木には葉が無く、腐敗している。

ここに現れる魔獣は、ほとんどがドロドロに腐っているか、骨だけになっているか、といったアンデッドと呼ばれる系統の魔獣だ。

行動は単純だし、一体ずつの戦闘力も低い。

だけど出現する数が異常だ。

次から次へと湧いてきて、そいつらの対処に追われる。

更に随時魔石を回収しないと、それを取り込んだ魔獣が強くなる。

数個取り込んだくらいじゃ目に見えて変わるものじゃないけど、塵も積もれば、だ。

魔石を取り込まれないようにするに越したことはない。

魔獣だけでも厄介だが、ここは臭いが酷い。

空気も淀んでいるし、長時間居ると気分が悪くなりそうな劣悪な環境だ。

早速魔獣が現れた。

猿のような二足歩行している、腐った魔獣だ。

数はざっと五十体以上。

これでもこの階層では数の少ない集団だって言うんだから、如何に数が多いかがわかる。

この階層では固まって戦うのがセオリー。

これだけの数の魔獣がいれば、一体ずつのヘイト管理が難しい。

後衛は接近されると本来の力が発揮できないため、ここでは前衛が後衛を背に護りながら戦うことになる。

後衛の三人が固まって周囲に魔力障壁を張る。

その外周に俺とウィルが対角線上になるように立ち、迫りくる魔獣を対処する。

レインさんとルクレは遠くからやってくる魔獣に対して魔術で攻撃している。

セルマさんはいつも通り指示とバフ管理だ。

ここでは複数の魔獣をまとめて攻撃できる面制圧が求められている。

『準備できたよ! 二人とも魔力障壁の中に入って!』

レインさんの声が脳内に響き、指示通りに魔力障壁の中に入る。

それを確認したレインさんが、時間をかけて丁寧に術式を構築していた魔術を発動する。

俺たちを中心に周囲三六〇度に津波を発生させ、大量の魔獣を巻き込む。

レインさん以外の四人で雷系統の魔術を水の中にばらまき、感電を引き起こし、一気に魔獣を討伐する。

「魔獣多いし臭いし、やっぱりここ嫌い!」

魔獣を一通り討伐し終わったタイミングで、ルクレが愚痴を零す。

まぁ気持ちはわからんでもない。

魔獣も異形というか、腐っていて気持ち悪いし、劣悪な環境だしな……。

「最悪に近い環境だが、この中で長時間戦闘できるようになれば、今後の階層で似たことがあっても耐えられるだろう?幸いここの魔獣は数が多いだけで強くはないしな。もう少し頑張ろう」

確かにこの環境でも問題なく戦えれば、九十二層と九十三層はここよりも環境はマシだし、セルマさんの言い分もわかる。

九十四層はこことは違う意味で厳しい環境だし、俺も行ったことの無い九十五層以降が、ここよりもひどい可能性だってある。

その後も何度も戦闘を繰り返した。

他の階層以上に一回ごとの戦闘時間がどうしても長くなる。

休憩している時間があまり取れないし、やはり深層ともなると下層よりも難易度が高くなるな。

そして、入手した魔石の量がかなり増えてきたため帰還することになった。

九十一層と九十二層は真逆とも言えるが、ひとまず今のメンバーであれば、深層でも大したケガもせずに切り抜けられることが分かった。