軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47.86層探索① 第一部隊の実力

南の大迷宮の八十六層へと移動してきた。

そこは、地下とは思えないほど広大な空間になっている。

草原が広がっていて、上には空が広がっているように見える、開放的な場所だ。

大迷宮の中層までは洞窟のような空間だが、下層からはこのように様々な環境の空間が広がっている。

八十六層から八十八層は、見晴らしのいい草原の空間となっている。

初めて来た探索者は、過ごしやすい環境ということで喜ぶが、当然ここもそんな生易しいところではない。

全員が安全地帯で装備などの最終確認をしている。

ウィルを見ると、鎧や盾の類の装備が見当たらない。

打ち合わせで聞いていたから驚くことはないけど、やっぱりディフェンダーには鎧や盾を装備しているという固定観念があるため、若干の違和感を感じる。

◇ ◇ ◇

「ウィルは鎧とか盾は装備しないのか?」

作戦室で、各人の戦闘スタイルを聞いたときに疑問に思ったことを、聞いてみた。

「あぁ、俺は王道のディフェンダーとは違うからな。だからこそ、前衛アタッカーにコンバートさせられそうになったわけだ」

鎧や盾を装備しないディフェンダーで思い浮かぶのは、やはりSランクの彼女だ。

「もしかして最終的には回避型を目指しているとか?」

「ん? いやいや、あの子みたいに全部躱すなんて無理だ。ま、ヘイトはちゃんと稼いで、オルンの戦いやすい環境を作ってやるから任せとけ!」

ウィルが自信ありげに豪語する。

他のメンバーたちも特に指摘していないようだし、大丈夫なんだろう。

俺はウィルのアタッカーとしての実力しか知らない。

アタッカーとしてもAランクならエースを張れる実力があったが、本職のディフェンダーは 如何(いか) ほどのものだろうか。

話を聞く限りでは、ウィルのスタイルは相当の熟練度が必要だと思うんだけど。

◇ ◇ ◇

しばらく周りを警戒しながら歩いていると、右側から魔力の塊が 飛来(ひらい) してきた。

魔獣からの攻撃と判断した俺は、待機させていた【 反射障壁(リフレクティブ・ウォール) 】を発動しようとした。

――が、

「俺に任せな!」

ウィルがそう叫ぶと、攻撃の方へ向かっていく。

次の瞬間には右手に武器が握られていた。

その武器には柄の両端に刃が付いている。

――名称は 双刃刀(そうじんとう) 。

扱いが非常に難しく、使いこなせる者が極端に少ない武器だったはずだ。

共同討伐では長さの違う二本の剣を使った二刀流だった。

ディフェンダーでは双刃刀を使用するらしい。

「っらぁ!」

ウィルが双刃刀を巧みに振り、刃が魔力の塊に触れると、跡形もなく消え去った。

(ホント面白い発想だよな。それを難なく使えているウィルの魔力コントロールは相当なものだし、胆力もかなりあると思う。失敗したら直撃だもんなぁ……)

「ルクレ!」

セルマさんがルクレに声を掛けると、

「もう見つけてる! 【 閃光(フラッシュ) 】!」

ルクレが【 閃光(フラッシュ) 】を発動させると、約二百メートル先の上空で赤い光が弾ける。

「【 魔法力上昇(マジックアップ) 】」

セルマさんがレインさんの魔術の威力を向上させるためにバフを掛ける。

「ルクレ、セルマ、ありがとう! それじゃあ、オルン君の加入を祝して、おっきな 祝砲(しゅくほう) をあげるよ! 【 超爆発(エクスプロード) 】!」

赤い光が弾けた場所に炎の塊が発生し、急降下する。

地面に当たると、轟音とともに周囲が爆発に包まれる。

初っ端から火系統の特級魔術かよ……。

俺は今回の一連の流れに付いていけなかった。

まぁ、無理して割り込む場面でもなかったけど。

今の一連の動作で、この人たちの練度が高いことがわかる。

セルマさんとレインさんに関しては術式構築が早い。

特にレインさん。

特級魔術は威力が高く、攻撃範囲も広い強力な攻撃魔術だけど、その分膨大な脳内処理が必要となる。

つまり術式構築に時間が掛かる。

それを、威力が控えめだからとは言え、数秒で構築するなんて。

普通の人ならレインさんの倍近くは術式構築に時間が掛かっていたはず。

わかっていたけど、流石は深層にたどり着いた探索者なだけある。

そして、ルクレ。

やはり彼女の異能も有用なものに違いない。

地味なんて、とんでもないな。

最後にウィル。

事前にその武器の特徴は聞いていたけど、実際に魔力の塊を消し去る所を見ると、やっぱり驚く。

ウィルは魔力を消し去るために、俺の【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】と同じようにタイミングがシビアなことをやっている。

更に俺の【 瞬間的能力超上昇(インパクト) 】は基本的に攻撃に合わせる魔術だ。

それに対してウィルは、自分に向かってくる魔力の塊に対して行っている。

タイミングをミスれば、大怪我にも繋がりかねない。

それでも難なくやっているように見えるってことは、相当な努力に裏打ちされているからだろう。

「なんか、 在(あ) り 来(き) たりな感想だけど、凄かったな……」

今の一連の流れに正直な感想が零れる。

「ふふん! これがボクたち、《夜天の銀兎》最強パーティの実力さ!」

ルクレが胸を張りながらどや顔をしている。

うん、あんまり無いな。何処が、とは言わないが。

ルクレの発言でパーティ内の雰囲気も多少緩んだが、

「さて、とどめを刺しに行くぞ」

セルマさんの一声で全員が意識を切り替える。

そう、まだ倒していない。

今の攻撃をしてきたのは、恐らくアイツだろう。

であれば、ダメージは与えられているだろうが、魔石にはなっていないはず。

俺たちは周りを警戒しながら爆心地へ向かう。

ここ八十六層から八十八層は、森林もあるが見晴らしのいい草原が半分以上を占めている。

更に今回の目標であるノクシャスシープを除けば、ほぼ全ての魔獣が遠距離攻撃を持っている。

つまりここでは、遠距離での戦いがメインとなる。

そのため、この草原エリアは前衛アタッカーがあまり活躍できないと言われている。

接近する方法はいくつかあるんだけども、それよりは魔術メインで戦った方が効率的だからだ。