軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第222話 中等部本校舎の再訪

ぼくたちは白い部屋で会議を続けた。

「あとどれくらい、このあたりに骨さんが来てるか、ですね」

「まあ、こっちは精鋭とはいえ、数も少ないからね。さっさと楔の場所を発見したいところだけど」

急ぎすぎて、敵をたくさん引き連れてしまっても意味がない。

すみやかに中等部本校舎にたどりつき、楔の位置を探索し、競争相手は各個撃破しつつ楔を手に入れる。

こちらが勝つには、それしかない。

加えて魔獣軍団もいつまで味方かわかったもんじゃない。

前にも後にも注意しつつ、迅速に行動しなければならない。

ミッションの難易度が高いなあ。

いろいろ相談し、これから先の事態に備える。

ミアがいない分、どうしてもぼくとルシアがリードすることになった。

慎重に、さまざまな角度から作戦を検討して、そして……。

「それじゃ、お話もまとまったし……ねえ、カズさん」

たまきが、猫撫で声をあげる。

アリスとルシアも寄ってくる。

「えーと、これはどういうことですかね」

「さっきね、ルシアが、わたしとアリスだけじゃずるいって」

「あー、そういうことか」

ルシアを見ると、少し恥ずかしそうに視線を泳がせていた。

ぼくは思わず、視線を彷徨わせる。

ここにいないはずの誰かの姿を探してしまう。

こういうとき、彼女がまっさきにからかってきたからだ。

今回もきっと、ツッコミが入ると……そう期待してしまってから、自分のミスに気づく。

三人の少女は、ぼくを心配そうな目で見つめていた。

「あー、うん、はい。……ねえ、ルシア。きみもぼくを慰めてくれるかな」

「はい、喜んで」

ぼくは彼女の手を引いて抱き寄せる。

キスを交わした。

だいぶ長いこと、楽しんだ気がする。

それはある意味、現実逃避だったのかもしれない。

このままずっとこの部屋にいたいという気持ちは、間違いなくあったのだ。

でも、それはできなかった。

この戦いは、あいつがつくってくれた好機を最大限に生かしたからこそ生まれたものだ。

ザガーラズィナーが消え、その空白をめぐって残る四天王が争い……結果として、強大すぎた魔王軍につけいる隙が生まれた。

ぼくたちにとってのおおいなるチャンス。

これを生かさなくては、どうして彼女に顔向けできようか。

いつか……いつかはわからないけど、ずっとずっとあとかもしれないけど、戻ってくるであろうあいつの顔を正面から見るためにも。

ぼくたちは、もとの場所に戻らなきゃいけない。

戦いを再開しなきゃいけない。

そのための活力は、少女たちから受け取った。

「いこうか」

「はい」

ぼくと、アリスとたまきとルシア。

四人はうなずきあい、最後の確認をしたあと……。

白い部屋を出る。

戦いに、戻る。

もとの場所に戻ったあと、アリスたちが手早く残る敵を全滅させる。

ハイウィザードのほかに、スケルタル・チャンピオンも四体、いたとのことだ。

これらを倒して、ぼくとルシアもレベルアップした。

和久:レベル57 付与魔法9/召喚魔法9 スキルポイント4

強化召喚4(使い魔強化4、使い魔同調3、使い魔維持魔力減少1)

たまき:レベル46 剣術9/肉体9 スキルポイント2

ルシア:レベル46 火魔法9/水魔法9 スキルポイント2

さきほどの戦いの音を聞きつけたのか、たて続けにアンデッド軍団の襲撃を受けた。

もちろん鎧袖一触なのだが、たまに奇妙なモンスターが混じっていた。

頭がふたつある巨人のスケルトンや、馬の骨に人間の腕が生えたスケルトンなどである。

「あれらは、まとめてキメラ・スケルトンと呼んでいます」

ルシアが教えてくれた。

なんだろう、アンデッドをつくったひとが実験でもしていたのかな……。

動きが素早かったりちからが強かったりするものの、アリスやたまき相手には雑魚も同然だったせいで、どれだけ強いのか不明である。

それ以外は、スケルタル・チャンピオンに率いられたベテラン・スケルトンやナイト・スケルトンがわらわらと。

さくさくと全滅させて、先を急ぐ。

この間に、アリスがふたつ、ほかの皆はひとつ、レベルが上昇した。

「これで、わたしもついに派生スキルを使えるんですね」

アリスはレベル48になったのだ。

無論、選んだ派生スキルは槍術と治療魔法の複合である聖槍術である。

聖槍術は、その名の通り、主に槍にいろいろな魔法を付与して戦うためのスキルだ。

治療魔法がからんだ派生スキルだからといって、別に槍を突き刺して回復するようなアビリティは……ある、けど……まあいらないだろこれ……。

一部、治療魔法を強化するアビリティも存在する。

アンデッド特効系のアビリティもあるので、そのへんを取ると今回の戦いに貢献できそうだ。

ただ、アンデッド特効系アビリティってつまり、アンデッド以外に対しては無意味なわけだから……じつに悩ましい。

アンデッド以外にも効く聖属性攻撃アビリティなんかもあったりするので、そのへんはアンパイか。

自力を底上げする強化槍技というアビリティもある。

効果は強化召喚とほぼ同様で、無造作に槍術スキルの性能をランク0.5分底上げするというものだ。

これはマスト取得だろうなあ。

「カズさんが選んでください」

アリスは綺麗に丸投げしてきた。

こんにゃろう、自分の意見はないのか!

「カズさんの役に立つことができれば、なんでも嬉しいです」

「ああ、うん」

うおお、そういわれちゃ、仕方あんめえ……。

ぼくはみんなと相談しながら、アリスのアビリティを選ぶ。

みんな、といってもたまきはこういうことの役には立たないから、主にぼくとルシアで相談して、アリスの希望を随時、聞いていく感じだ。

ちなみにアリスは、もうぼくの使い魔より強いことを望んだりはしていない様子。

昨日の夕方以降、ぼくがいない間になにかあったのかな。

聞けば教えてくれそうだけど……いまはいいか。

結局、選んだアビリティは強化槍技と槍楯技。

槍楯技は、MPを槍に込めることでリフレクションに似たシールドを展開できるアビリティだ。

ランクは3まで存在し、ランク3になると攻撃を相手に撥ね返すことができるようになる。

っていうかランク3でほぼ完全なリフレクションになる。

回復役である彼女のMPを消費するとはいえ、間違いなく強い……。

センスと判断力がものをいうから、アリスにはぴったりだろう。

「これで、もっとお役に立てますね」

そういってにこにこするアリスは、なんだか尻尾をぱたぱた振っているかのように犬系女子だった。

たまらなくかわいい。

で、ぼくは強化召喚のランクが5になった。

アビリティは使い魔強化を5に、使い魔維持魔力減少を2に上昇させる。

これで、幻狼王シャ・ラウたちをランク9.5扱い、維持MP97で召喚できる。

和久:レベル58 付与魔法9/召喚魔法9 スキルポイント1

強化召喚5(使い魔強化5、使い魔同調3、使い魔維持魔力減少2)

アリス:レベル48 槍術9/治療魔法9 スキルポイント1

聖槍術1(強化槍技1、槍楯技1)

たまき:レベル47 剣術9/肉体9 スキルポイント4

ルシア:レベル47 火魔法9/水魔法9 スキルポイント4

強化召喚が上がったあと、すぐに天亀ナハンを送還し、再召喚する。

実質ランク9.5。

ただでさえバリエーション豊かな彼の使える魔法がさらに増えた。

ぼくたちはまた透明になって前進する。

少し手間取ってしまったけれど、ついに中等部本校舎が見えてきた。

茂みのなかから本校舎を覗くと……。

空から大量のスケルトンが降ってくるところだった。

巨大な鳥のスケルトンが、何匹も上空を旋回して、背中のスケルトン軍団をばらばらと撒いている。

あれって……ロック鳥のスケルトンだよな……。

「ねえねえ、カズさん。あの鳥さん、翼が骨なのにどうして飛べるんだろう」

「そもそも、普通に考えてあんな巨大な鳥が飛べるはずもないからなあ」

ロック鳥自体、魔法でなんとかしているんだろう、と考えていたからその点は驚かない。

空から降ってくるスケルトンたちは木の葉のように舞っているから、きっとメイジとかがソフト・ランディングみたいな魔法を使ったんだろう。

やばいな、敵戦力がガンガン増えている。

「これじゃ、ゆっくりと楔の場所を探すってわけにはいかなさそうだなあ」

『支援が来る』

クァールがいった。

アルガーラフの方から応援を出してくれるのか……いたれりつくせりだな。

っていっているうちに、上空のロック鳥めがけて何本もの雷撃が飛んだ。

山の下からなんかの魔物がこれを放っているようだ。

うわー、こんな遠距離射撃型のモンスターがメキシュ・グラウ以外にいたんだな。

相手にしたくないなあ。

いまは彼らも味方だけど。

いつか、こういうやつとも戦わなきゃいけないんだろうし。

ここにいるクァールだって、それは同じだ。

「いまの攻撃は、どんなモンスターが?」

いちおう聞いてみた。

クァールは無言。

ま、しゃあない……。

「支援ありがとう、って伝えてくれ」

『礼は無用。いまは共闘中だ』

「それはそうなんだけどね」

ひとつわかったことがある。

クァールはなんらかの手段でいまこの瞬間も仲間と連絡を取り合っているということだ。

考えようによっては、彼はお目付け役にしてスパイということで……まあ、いまは頼もしいんだけど。

「ナハン、地下の様子を探るには、どれくらい近づけばいい」

『近ければ近いほどよろしい。可能ならば、あの鋼鉄の城のなかで魔法を使いたく思います』

ナハンは地下の様子を探る魔法を持っているとのことだった。

本当に、この使い魔はすごい。

地水火風の四属性魔法のみならず、さまざまな便利魔法を習得しているとのことである。

「わかった。じゃあ林沿いにまわって中等部校舎へ近づこう」

インヴィジは確実じゃないことが、さきほどの遭遇戦で判明してしまっている。

少し手間がかかっても、校舎のすぐ近くまで木々の傘を盾にした方が安全だ。

急がば回れ、である。

そう、思っていたのだが……。

林のなかを小走りに駆けていると、突如、地面がおおきく揺れた。

『伏せろ!』

クァールが切迫した声で叫ぶ。

ぼくたちはすかさず彼の指示に従った。

異世界に漂流して、今日で六日目だ。

ぼくたち全員、考えるより先に身体が動くようになっている。

そうでなくては、生き残ることなどできなかっただろう。

今回も、その積み重ねが生きた。

首をすくめて地面に転がったぼくたちの頭上を、突風が吹き抜けていく。

木々が折れる音がそこかしこで響き……。

頭上に光が差す。

顔をあげれば、青空が広がっている。

つまり、そう……。

「木々が、なぎ倒された」

「違います、カズ」

起きあがったルシアが呆然として告げる。

「あれは、木々をまとめて刈り取ったのです」

彼女の視線の先を仰ぎみれば、巨大な鎌を両手に一本ずつ持った巨人の骸骨が、三体も宙を舞っている。

どれも全長十メートルくらいの巨人だ。

巨人たちの背中には、これまた骨だけの翼があった。

でかいだけじゃなくて、なんか神々しい。

ひと目でわかる。

あれは……神兵級だ。

「ゲブシュ・ヘラグ……」

ルシアが呟く。