軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

33.お試し機能

「あっ! 次は私の曲ですね。ノリノリでスピード出しちゃいましょう!」

「馬鹿たれ! やめんか! 怖くてちびるわ!」

「ティナ、気持ちだけにして、気持ちだけ!」

今日もキャンピングカーの中は賑やかだ。とにかく、ティナに安全運転をさせるのに気を遣う。いい曲が流れてテンションが上がるのは分かるけれど、それだけにして欲しい。

「スピード出した方が気持ちいですよ。窓から入ってくる風とか」

「そんなスピードで入ってきた風は凶器じゃ! 顔中の肉という肉が波打ってしまうわ!」

「顔面ホラーになるから、落ち着いて!」

「そういうのも見たいんですけれど」

「「ティナ!」」

やっぱり、ハンドルを握ると性格が変わる。本当に冷や冷やして堪らない。どうにかして、ティナを落ち着かせる物はないだろうか?

すると、ティナの目が少し細まる。

「あれ、ティナどうしたの?」

「日の光が強くて、目があまり開けられないんです」

「それだったら、サンバイザーを使えばいいよ。ほら、ここにある」

運転席の上に手を伸ばし、サンバイザーを開く。すると、日の光で影が出来るのだが――。

「……明るいままですね」

「ちょっと、背が足りないか」

ティナの身長が足りな過ぎて、サンバイザーの影が届かない。じゃあ、次の案は――。

「よし、サングラスでもつけてみる?」

「それってなんですか?」

「色のついた眼鏡なんだけど、それをかけると日の光を遮断出来るんだよ」

「へー、そうなんですか。つけてみたいです」

すると、ティナがキャンピングカーを止める。私はネットショッピングを開き、サングラスを検索する。すると、たくさんのサングラスが画面に出てきた。

「ほう、これがサングラスか。面白いのう」

「色々ありますね。出来れば、自分に似合うものをつけたいです」

確かに、それは言えている。試着して似合わなかったら、凄く残念だ。何か試着できるような機能があればいいんだけど……。

「……あっ。買う前に試せるらしいよ」

「えっ、本当ですか? だったら、試してみたいです」

「ほう……。だったら、わらわもつけてみるのじゃ!」

「じゃあ、みんなで試してみようか。はい、画面で気になった物を教えて」

ネットショッピングの画面を見せると、二人は身を乗り出して見つめた。

「色々ありますねぇ……。ノリノリなものがいいですね」

「サングラスにノリノリなんていうのはないと思うけれど……」

「わらわは面白いものにするのじゃー!」

どんどん、画面を進んでいき――。

「私はこれをつけてみたいです!」

指さしたのは薄い紫色の縁がとがったサングラスだ。

「かなり攻めてるね」

「自称お淑やかなティナにはキツいんじゃないか?」

「自称とはなんですか。私はちゃんとしたお淑やかですよ。メル、これを出してください」

試着のボタンを押すと、そのサングラスが出てきた。ティナに渡すと、まじまじと見つめた後にそっと耳にかけた。

「どうですか。カッコいいですよね?」

「なんか、雰囲気変わったね。自称お淑やかじゃなくなった」

「じゃな。似合わな過ぎて、違和感しかない!」

「えーっ!? 私はカッコいいと思ったのに……」

「そもそも、見た目がお淑やかだから、無理やり印象を変えているようにしか見えない」

「まぁ……運転でハイテンションになっている姿には合うかもしれんがなぁ」

「そ、そんなー……」

これはこれで面白いが、今のティナには似合っていない。がっくりと肩を落とすと、サングラスを受け取って元に戻した。

「他には何かあるかな」

また、画面を見ていると――。

「これ、これなんかどうじゃ!?」

サリサが指さしたものは、未来にありそうな形をしたゲーミングカラーのサングラスだった。

「この世界観にまるであってないね」

「凄いカラフルです。つけてみましょう」

「そうじゃろう? こんなにカラフルなものは見たことがない。ほら、メル、早く!」

「はいはい」

商品の試着ボタンを押すと、手元にそのサングラスが現れた。それを、サリサに渡すとスチャッとかけた。

「どうじゃ。カッコいいじゃろう?」

「配色がいい感じです。しかも、見る角度から色が変わっていくから楽しいですね」

「うーん。やっぱり、世界観にあっていない」

「あってないのがいいんじゃろ。ほら、ティナもかけてみるのじゃ」

サリサがティナに渡すと、すぐに耳にかけた。

「これもカッコいいですね。なんか、ノリノリな気分になれます」

「なんか、ティナの印象が変わったようじゃの。じゃが、どうしても違和感が……」

「違和感ねぇ……あっ! もしかして、服装が問題なのかも」

「なるほど! じゃあ、服装も変えればしっくりくるか?」

サングラスだけ現代っぽいから、違和感を覚えていたんだ。でも、服装も変えればピッタリ合うかもしれない。

すると、パァッ! と、ティナが嬉しそうな顔をした。

「運転する時に服装を変えたり、サングラスをかけたり、とてもテンションが上がります!」

とても、わくわくした表情で頬を赤く染めている。この高揚は――。

「お、おい……メル。サングラスもつけて、服装も変えたら、ティナのテンションが上がって歯止めが利かなくなるんじゃないのか?」

「……私も考えてた。と、なると……運転が荒くなるかも」

想像してみたら、怖いことしかなかった。果たして、このままティナに試着をさせてもいいのか。でも、本人はとても楽しそうだし……。

「あのっ、早く画面を見せてください!」

「えっと……ティナ。服に着替えても、運転は安全運転だよ。それは、約束してね」

「つい、うっかりアクセルを踏むとかはなしじゃぞ! 蛇行もダメじゃ!」

「いくら何でも、そんなことにはならないですよー。もう、二人とも怖がりなんですからー」

そう言って、ティナが笑った。思ったよりも自制が効いている? ……だったら、大丈夫か。

私は服の画面を見せて、みんなでサングラスに合う服を探し始めた。