作品タイトル不明
34.即席袋ラーメン(醤油、塩、味噌)
「あっ!」
ハッと我に返って、現状を見た。窓の外が薄暗くなっている。
「しまった……。検索に夢中で全然進んでなかった!」
「あっ! そうですね! 画面に夢中で進むのを忘れてました!」
「なんてこった。今日は全然進んでおらんぞ?」
つい、あーでもない、こーでもないと盛り上がってしまった。
「まぁ、いいのではないか? 別に急ぐ旅でもなかろう。やりたいことがあれば、そっちを最優先にすればよい」
「言われてみると、そうですねぇ……。さっきまでは検索が楽しかったから、それでよしとしましょうよ」
「……そうだね。みんなと画面を見ると楽しくて、時間が過ぎちゃったよ。まぁ、今日は無理をしないってことで。車体のほうにいく?」
そう尋ねると、二人は頷いてくれた。一度、車から下り、車体の方に向かう。扉を開けると、そこは広いリビングだ。
ソファーに寝転がると、それだけで力が抜ける。
「ずっと、同じ姿勢だったから疲れたね」
「あれくらい、どうってことないのじゃ!」
「運転席に座るのは好きなので、疲れてませんよ。まだまだ、やれます!」
「ふふっ、二人は元気だなぁ」
意気込む二人を見ているだけで、こっちが元気になってきそうだ。
「なんじゃ、メルは疲れたのか? だったら、食事は無理をしなくてもよいぞ」
「私たちは食事が作れないので、メル頼みになってしまうのですが……。今日は簡単に作れるものでいいですよ」
「簡単なものかー……」
今から一から作るのは大変そうだから、そうさせてもらおう。一番難しいのは、メニューを考えることだ。
すぐに食べられて、美味しいもの……。
「じゃあ、即席袋ラーメンでも食べる? スープに細い麺が入った食べものだよ」
そう言って、ネットショッピングの画面を出す。そこには袋に入ったラーメンが映し出された。
「へー、こういうものなんですか。絵でどんなものか分かるのはいいですね。食べてみたいです」
「わらわも食べてみたいのじゃ! 食べたことがないから興味がある!」
「じゃあ、これにしよう。えーっと、袋麺を買って……素麺じゃ寂しいから、トッピングも買って……」
ポチポチと必要な物をカートに入れて、最後に精算を押す。すると、テーブルに商品が届いた。
「よし、作ろう!」
届いた商品をキッチンへ運び、調理開始。まず、大きな鍋にお湯を沸かす。沸くまではトッピングの準備だ。
二つの耐熱容器に卵を割り入れる。別の容器で醤油、中華だし、水を入れてよくとく。それを、卵が入った耐熱容器に入れる。
最後につまようじで何か所かに穴を開けて、ふんわりとラップをする。一つずつ電子レンジに入れて、スイッチオン。
卵が破裂しないように見守りながら、卵を温めていく。そして、数分後――レンジから取り出すと。
「うん。即席の味玉子の完成」
温泉卵みたいにやわらかいけれど、即席なら合格だ。
次にフライパンを火にかけ、ごま油を垂らす。ひき肉を軽く炒め、火が通ったらもやしを入れる。そして、油を絡めるように軽く火を通す。
「はい。味噌ラーメンのトッピングが完成」
そんなことをしている間に、お湯が沸いた。その中に袋麺の麺を入れて、まとめて茹でる。その間にどんぶりを用意して、スープの素を入れておく。
すると、キッチンタイマーが鳴った。火を止め、鍋を持つ。そして、どんぶりにお湯を入れてスープを作る。その中に麺を入れて、綺麗に見えるように少しだけ麺を持ち上げて、綺麗に畳むように下す。
醤油と塩には買っておいたメンマ、チャーシューを乗せ、味玉を乗せる。味噌には先ほど炒めた野菜を乗っけると――完成。
「おまたせー! これが即席袋ラーメンだよー!」
お盆に乗せて、テーブルで待つ二人に届ける。
「おぉ! これがラーメンというやつか! 中々、美味しそうな匂いがするのう!」
「どれ、食べる?」
「えーっと……私はこの色の薄いラーメンにします」
「わらわは土みたいな色のラーメンにするのじゃ!」
ティナが塩を選び、サリサが味噌を選んだ。ということは、私は醤油だ。
席に着き、手を合わせると――。
「「「いただきます!」」」
箸とレンゲを持つと、先にレンゲでスープをすくう。すすって飲むと、醤油の香りが鼻を通り抜ける。うん、醤油と言えば、この香り。
ちらりと見ると、二人がこちらを見ているのが見えた。そして、私の真似をするようにレンゲでスープをすくって飲む。
「んっ! 上品な塩のスープの味がします。とてもあっさりしていて、いくらでも飲み干せそうです」
「こっちは濃いのう! これが味噌の味か! 中々、パンチがあって美味しい味じゃな!」
「じゃあ、麺も食べようよ。美味しいよ」
二人とも味を気に入ってもらえたようで嬉しい。箸で麺をすくうと、少し息を吹きかけて冷ます。それから、ずずっと麺を吸い込む。
醤油のスープが絡んだ、インスタント麺。このジャンキーさが堪らない。お店で食べるラーメンは美味しいけれど、即席袋ラーメンならではの美味しさが口に広がった。
「二人とも、どう?」
懐かしい味を堪能すると、二人に感想を求めた。すると、二人は目を輝かせる。
「とっても、美味しいです! なんか、夢中になる味というか、食感というか……独特のクセがありますよね?」
「それは、この即席袋ラーメンでしか味わえないクセだと思うよ」
「いつものほっぺが落ちるような美味しさではないが……。妙に引き付ける味と食感じゃな。何故だか分からんが、手が止まらんぞ!」
「そういう美味しさもあるってこと」
ほっぺが落ちるような美味しさじゃない、独特の美味しさ。この癖は食べれば食べるほど夢中になる。
私も麺をすすって、スープを飲む。メンマの味と食感を楽しんで、麺をすする。市販のこってりとしたチャーシューの味を堪能しつつ、スープをすする。トロッってした味玉子を頬張ると、これだけちょっと次元の違う美味しさだ。
「んー、美味しいです。麺もスープも具材も。短時間で出来たとは思いない出来ですね」
「……なぁ、このスープは飲み干してもいいのか?」
「ちょっと体に良くないけれど、飲んでも問題ないよ」
「だったら、わらわ飲む!」
「……私も」
サリサがどんぶりを持ち上げて、凄い勢いで飲み始めた。その横ではティナがレンゲですくいながら、ちまちまと飲み進める。
この止まらない美味しさが魅力だよね。私も満足がいくまでスープを飲み込んだ。
そして、数分後――見事に空になったどんぶりが三つ出来上がっていた。