軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32.人助けの後は気持ちがいい

それからしばらく、私たちは村に滞在し、畑の様子を見守ることにした。

最初は半ば枯れかけていた作物も、日を追うごとに葉に張りを取り戻し、くすんでいた色が少しずつ鮮やかさを取り戻していく。土もまた、以前より柔らかく、踏みしめるとほのかに湿り気を感じるようになっていた。

そして、種をまいた区画。

最初の数日は何の変化もなく、ただ静かな土のままだった。けれど五日、七日と過ぎる頃には、よく目を凝らせば、土の表面がわずかに盛り上がっている場所が見つかり始める。

そして十日目の朝。

「おぉ! 芽が生えておる!」

村長の弾んだ声に駆け寄ると、そこには小さな緑が確かに顔を出していた。まだ頼りないほど細いが、それでも力強く土を押しのけて伸びている。

よく見れば、一つだけではない。あちこちから同じように、みずみずしい芽が顔を出している。どれも色が濃く、葉の縁がぴんと張っていて、いかにも健康そうだ。

「なんだか、すごく生き生きした芽じゃないか?」

「ええ……前に見た芽よりも、ずっと勢いがありますね」

指先でそっと土に触れると、ふかふかとした感触が返ってくる。魔物の液体で荒れていた畑とは、まるで別物だ。

「もしかして、畑の状態が以前よりも良くなっている?」

「なんということだ……こんなに変わるものなのか」

村人の一人が、信じられないといった様子で呟く。ほんの十日。されど十日。土の状態が変わるだけで、こんなにも作物が変わってくる。

「へへっ。やったな、メル!」

「メルのお陰ですね!」

「……うん!」

この十日間は不安だったけれど、芽が出てきたことによって、私の見立ては正しかったということだ。これで、村の困り事が解決した。

すると、私たちの前に村長たちが近づいてきた。

「お陰様で、畑は元に戻りました。あなたたちのお陰です、本当にありがとうございました」

「ちびちゃんたち、本当にありがとう! これで、作物を育てることが出来る!」

「君たちはこの村の英雄だ!」

ワッとなって村人たちが感謝の言葉を口にする。みんな、とても嬉しそうにしていて、こっちまで嬉しくなってしまう。

「メルの耳と尻尾が面白いくらいに動いておるの」

「ふふっ、可愛いですね」

「も、もう……茶化さないでよ」

嬉しくなると自然と耳と尻尾が動いちゃうんだもん! 感情がバレるのって本当に恥ずかしい。

「これは少ないですが、感謝のしるしです」

そう言って、村長が袋を手渡してきた。それはジャラッとした音がする。これってまさか、お金?

「もう、お金はもらったからいいのに」

「いえいえ。村に滞在してくださって、我々の不安を解消してくださったのですから、これくらいの事はさせてください」

石灰を買ったお金はもう受け取ってあったのに、さらにお金が貰えるなんて思ってもみなかった。

「皆さんは旅をしているのでしょう? 少しでもお金があったほうが、旅もしやすいでしょう。少しだけ、援助させてください」

「……ありがとう。大切に使うね」

お金のためにやったことじゃないけれど、こうやって形になって返ってくるのは本当に助かる。私は素直にお金を受け取り、嬉しそうにしている村人を眺めた。

「さよーならー!」

「元気でのう!」

「畑仕事頑張ってくださいねー!」

手を振って村人と別れる。村人たちも遠くから手を振って、私たちを見送ってくれた。存分に手を振ると、私たちは前を向いて歩き出した。

「いやー、いっぱい感謝されたのじゃ! とても気持ちよかったぞ!」

「ですね。あんなに感謝されたのは初めてです」

「そうでしょ? やっぱり、良いことをするのっていいなー」

「まぁ、その分メルの耳と尻尾が凄いことになっていたのじゃ!」

「とても可愛かったです!」

「そ、それは蒸し返さないで……」

感謝をされるのは嬉しいけれど、耳と尻尾を見られるのは恥ずかしい。

「それで、貰ったお金はどれくらいなんじゃ?」

「待って、見てみるね。えーっと……あっ! 10万コルトも入ってる!」

「凄いですね。石灰を売ったお金の分がまた返ってきました」

こんなにお金をくれるなんて、なんだか悪い気がするなぁ。

「ほう……人助けとはいいものじゃな! 感謝はされるし、お金も貰えるし。よし。これからは人助けをして金儲けじゃ!」

「いやいや。人助けをしてお金をもらえるのはほんの一部だよ。普通だったらないよ」

「じゃあ、お金がある人を狙うとかですか?」

「ティナ……その台詞は泥棒みたいだよ」

二人とも、大分がめつくなっているような気がする。まぁ、お金があればネットショッピングで欲しい物を買えるから、そっちに傾いちゃうのは分かる。

「でも、今回は私に付き合ってくれてありがとう。二人に何かやりたいこととかあれば付き合うよ」

「だったら、わらわはダラダラしたいのじゃ! 遊びもしたいし、美味しいものを食べたい!」

「私は色んな所を運転してみたいですね。あと、キャンピングカーの装飾なんかもしたいです」

「じゃあ、ネットショッピングをすれば、何か見つかるかもねー」

「やはり、金か……。金は全てを解決する」

「人助けで金儲けですか?」

さらっと言った言葉に二人の目がギラリと光る。……言わない方が良かった?

「お金を稼ぐには冒険者稼業をしつつ、各地で砂糖を売るのがいいよ」

「やっぱり、そうですよねぇ」

「ここは、わらわが強敵を倒してきて、お金をがっぽり稼ぐのじゃ!」

楽しい旅をするには、やっぱりお金が必要。そんな事を話し合いながら、村を離れていった。