軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そこは頑張ってよ

「大丈夫? ごめんね、僕が上手くフォロー出来てれば……」

「だからそれは考え方の違いですってば」

呆れたような目でドーマはイストファを睨むと、メイスを持っている手をさすり始める。

「いいですか? 前衛は前を守るから前衛なんです。後ろに抜けてきた敵は、後衛がある程度対応するのが基本です」

「そりゃ、そうかもだけど」

イストファは言いながら、ちらりとカイルを見る。

カイルは後衛だが、あまり近接戦闘要員としては頼りにならないと分かっている。

それは当然で、だからこそイストファがフォローするべきだと思っていたのだが……。

「今分かったと思いますけど、グラスウルフの一匹くらいまでなら私が対応できます。それ以上は無理ですから、早めに助けてください」

「う、うん……」

「あ、イストファ。俺には期待するなよ。グラスウルフの相手を俺にさせたら死ぬと思え」

「お荷物じゃないですか」

「今はな」

そんな応酬をするドーマとカイルの間に入ると、イストファは「それより」と口にする。

「さっきは決めてなかったけど……報酬の分配、どうする?」

「報酬……あ、そういうことですか」

三人の側に落ちているのは、先程グラスウルフが残した爪のようなものだ。

「僕は三等分でいいかな、と思うんだけど」

「ん、まあ……俺はそれでいいぜ」

「私もそれで大丈夫です」

「だとしても、その爪はいらねえな。ゴミだ」

ゴミと言われてイストファは少し悲しそうな顔をするが、そんなイストファの表情にドーマは目敏く気付く。

「魔石が欲しかったんですか? なるほど、武器を成長させる為に?」

「いや、新しい鎧が欲しくて」

「ふむ」

イストファの全身をジロジロと見るとドーマは、もう一度「なるほど」と口にする。

「確かに必要だと思います。どうせなら鎧も迷宮武具にすると良いと思いますが」

「そ、それは……どうだろうなあ」

そもそも、そんなものはあるのだろうか?

そんな事を考えながらイストファは苦笑するが、カイルに肩を叩かれ振り向く。

「それより、もう少し奥に行くしかないんじゃねえか? このままじゃ鎧代なんか三人分の稼ぎ合わせたって貯まらねえぞ」

「う、それは……そうだね。ドーマはどう思う?」

「そうですね……」

ドーマは顎に手をあて悩むような様子をみせると、「いいんじゃないかと思います」と答える。

「事実、私達は強さの意味でもお金の意味でも、もっと戦う必要があります。せめてゴブリンの10か20は倒さないと……」

「そうだな、それは俺も同意だ。俺達は此処におしゃべりに来てるわけじゃねえ」

「なら、もう少し別方向に進んでみようか」

イストファは一階層の奥へ進むルートを選び、歩き始める。

けれど……歩いても歩いても、ゴブリンが出てこないのだ。

それは昨日のダンジョン探索の状況と比べると、あまりにも不思議な事だった。

それでも歩いて、歩いて。やはりゴブリンは出てこない。

「……おい、イストファ。ちょっと休憩しないか」

「うん、いいけど……なんで今日はこんなに出ないんだろう?」

「私は今日入るのが初めてですけど、普段はどのくらいの頻度で?」

へたり込んでいるカイルとは違い、多少余裕のある感じに座っているドーマにイストファは「うん」と頷く。

何となくカイルと比べると女の子っぽい座り方だな……と思わないでもないのだが、それは口にしない。

「昨日は、ちょっと歩くと出てきてたかな?」

「なるほど……」

「勿論、僕達も昨日が初めてだし、今日みたいなのが普通って可能性もあるけど」

その言葉にドーマは考えるような様子を見せるが、多少落ち着いてきたらしいカイルが胡乱げな視線を向ける。

「なんだよ。何か気になる事でもあるのか?」

「そうですね。嫌な想像になるので、当たらない方が良いのですけれど」

「いいから言ってみろよ」

「では、言いますけど。何処かに溜まってるんじゃないですか?」

何処かにゴブリンやらグラスウルフやらがひしめいている光景を想像して、イストファとカイルは顔を見合わせる。

「……嫌だね、それは」

「八つ裂きじゃ済みそうにねえぞ」

そんなに数が居れば、カイルの魔法で怯ませる事も出来ないだろう。

「もし会ったら、逃げるしかなさそうだけど」

「いや待て。それ、俺だけ置いてかれそうじゃないか?」

「そこは頑張ってよ」

「無理だ。その時は背負ってくれ」

「ええ……?」

情けない事を言っているカイルに困り顔のイストファだが、ドーマに見られている事に気付き「ど、どうしたの?」と問いかける。

「いえ、二人は前からの友達なのかなあ……と思いまして」

「違うよ? ねえ?」

「ああ、違うな。昨日からの付き合いだ」

「それにしては、なんというか……」

随分と距離が近いような、と。そうドーマは思う。

まるで昔からの親友のようであり、互いに信頼し合っているように見える。

「そう言われても僕、今まで友達とか居なかったし……こんなもんかな、と思ったんだけど」

「そうですか……」

ドーマは頷き立ち上がると、イストファの近くに立つ。

「貴方の事に、少し興味が湧いてきました」

「そっか。あ、ドーマとも友達になれたら嬉しいな」

「それは、いずれ。それより、そろそろ行きましょう。休憩のし過ぎは良くないですからね」