軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そんな事言っても、今は出来ないでしょ?

「それもそうだね。カイル、そろそろいける?」

「ああ、問題ねえ。しかし実際問題としてモンスター共が何処かに集まってるなら、ちょっと考える必要があるぜ」

「考えるって、何か策があるの?」

「ねえな……いや、本来は『ある』んだが」

言いながらカイルは立ち上がり、ふうと息を吐く。

その顔には不機嫌そうな表情が浮かんでおり、苛立たしげに地面を杖で叩く。

「正しい対抗手段は魔法士による広域攻撃魔法だ。つまり、俺の魔法が本来そうあるべき威力を発揮できれば解決する問題なんだ」

「そんな事言っても、今は出来ないでしょ?」

「……ああ。だからこそコツコツ魔力を上げなきゃいけねえっつーのに」

「それでしたら、二階層を目指してみればよいのでは?」

そんなドーマの提案に、カイルは「いや……それは」と否定しつつも悩むような姿を見せる。

「それは、別の意味で無謀だ。ゴブリンガードとやり合うにはイストファに前面に立ってもらう必要があるし、そもそも現状では火力もイストファに頼ってる。少なくとも俺のフレイムがもう少しマトモにならねえと、危なくて挑めねえ」

「襲われた時に使ってた、えーと……メガボルなんとかって魔法はどうなの? 強そうだったけど」

「メガン・ボルテクスか。アレも本来は上級魔法なんだぞ。普通なら、あんな連中は骨も残さず砕け散るんだ」

「そんなものを人に……」

「分かってんだろ、今の俺が使っても人は殺せねえ」

フン、とカイルは腕を組みながら言うが、イストファだったらそんなものは怖くて使えない。

万が一殺してしまったら、と思うからだが……その辺りはカイルは自分に自信があるからなのだろうか?

「でも、あれと……ボルトの方も人を吹っ飛ばしてたよね。あれならゴブリンガードにも効きそうだけど」

「どうだろうな。あの情けない連中と違って、ゴブリンガードは重装だし鍛えてる戦士だ。それに何より、ゴブリンガードと組み合うのはイストファ、お前だぞ? お前をすり抜けてゴブリンガードだけに当てる自信なんかねえからな」

「なるほど、イストファに当ててしまえば私達の敗北が確定する、と。牽制程度の事で賭けをするのは怖いですね」

「そういうこった。それで、お前は? 二階層とか言い出すからには、何か手はあるんだろうな」

「二つほど」

言いながら、ドーマは手を突き出し指を1本立てる。

「まずは、ヒール。どんな神を信仰していようと最初に必ず授かる魔法ですから当然ですね」

「傷の回復が出来るのは素直に有難いな。それで、あと一つは?」

「ライトウェポン。武器を軽くする魔法です」

「え、それ凄いんじゃないの?」

「はい、実際凄いです。これで武器を軽くすれば、どんな武器も楽に振るえます」

「へえー!」

素直に感心するイストファと違い、カイルは渋い顔だ。

「……確かに凄ぇが……なるほど、微妙な魔法だな」

「え、どうして?」

「軽くなるって事はだな、イストファ。重さによるダメージも減るって事だろが」

「ん? んん? どういう事?」

「重さは強さって事だよ。何のためにデカい武器を頑張って振るう奴がいるのか考えてみろ」

たとえば巨大ハンマーを想像してみるといい。

アレは重さによる衝撃がダイレクトに攻撃力になる武器だ。

その「重さ」がなくなってしまった時、巨大ハンマーはただ大きいだけの張りぼてになってしまう。

「だがまあ、イストファ。お前の短剣はそもそも重さがどうのこうのって話とは無縁な武器だ。意外と相性がいいかもしれねえぞ」

「そうですよ。斬撃武器であればライトウェポンは待ち望んだ魔法のはずです」

「場合によるな。斬撃武器とはいうが余程斬れる名剣でもなきゃ、まだまだ『切り裂く』よりは『叩き切る』の方が主流だ」

「イストファ、私こいつ嫌いです」

「カイル、その辺で……」

「な、なんだよ。俺は真面目に話してんだぞ!?」

ドーマに服の裾を掴まれたイストファが困ったように仲裁すると、カイルは目に見えて狼狽える。

「分かるだろ、イストファ。不安要素を残したままゴブリンガードには挑めねえ。しっかり検討する必要があるんだ」

「うん、それは分かる。でもほら、もうちょっと表現をさ?」

「……ぐ、配慮はする」

カイルは渋々といった様子ながらも頷くが、そのすぐ後に難しそうな表情になる。

「だがまあ……別にこれは悪口じゃないからな? ドーマの特殊魔法を加味しても挑むのは結構賭けになるぞ」

「あの鎧だよね?」

全身を鉄製の鎧兜、更には盾で固めたゴブリンガードを攻撃するには、まずその防御を突破しなければならない。

しかしイストファの短剣もまた鉄製だ。その防御を抜くにはかなり難儀するだろう。

「手がないわけじゃねえんだが……」

「何か?」

カイルの視線に気付いたドーマがそう問いかけると、カイルは「いや、なんでもねえ」と返す。

「……魔石を集めるしかねえな」

「武器の進化、ですか」

「ああ。鋼鉄とは言わねえが、何か別のもんに進化してくれりゃあ『武器の差』で押し勝てる。勿論そんな単純な話でもねえが、確実に有利にはなる」

「ついでに言えば、私が他の魔法を授かれば……」

「それに、俺の魔力が高まれば鎧相手の真っ向勝負なんて無茶も必要なくなるしな」

これだな、と笑うカイルに……しかし、イストファは首を傾げてしまう。

「えっと……つまり、普通に狩りをしようって事だよね?」

「……まあな」

「大量のモンスター対策は」

「会わない事を祈るしかないな。でなきゃ諦めて帰るしかねえぞ」

「それは……嫌だね」

「だろう?」

結局のところ、自分達の幸運を祈って進むしかない。

それが分かっただけでも有意義な話し合いだったに違いない。

イストファはそう自分を納得させると、再び歩き始める。

その「祈り」が天にでも届いたのだろうか?

こちらに背を向けたゴブリンの姿が見えたのは、その時だった。