軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

え、だって地図ってもっとこう

迷宮武具の神ニールシャンテ。

その名前にイストファは心臓が大きく跳ねる。

一体どんな神様なのか。詳しく聞いてみたい感情に襲われ……しかし、カイルの「はあ?」という声に遮られてしまう。

「迷宮武具、迷宮武具かあ……」

「カイル。何か思う所でもあるの?」

「いや、な。武具系の神の神官ってのは能力が尖ってるんだよ」

「尖ってる?」

意味が分からずにイストファが首を傾げると、カイルは「あー」と言いながら視線を宙に彷徨わせる。

「……ま、実地で体感するのが一番だろ。そんじゃ、しっかり『イストファ』に支援頼むぜ」

「ええ、勿論です」

「え? え?」

意味が分からないままのイストファの背をカイルが叩き「行こうぜ」と促す。

「いや、うん。いいけど……」

言いながらイストファは先頭を歩く。

イストファの後ろではカイルが杖を構え……その隣を、ドーマが紙のようなものを広げて歩いている。

そのガサガサという音に気付き、イストファが振り返り「あっ」と声をあげる。

「それって、もしかして地図?」

「はい。ダンジョンの探索を地図も無しで行うなんて自殺行為ですから」

「……耳が痛いね、カイル」

「俺様は天才だからいいんだ」

そんな事を言ってあらぬ方向を見るカイルに苦笑すると、イストファは再び歩き出して。

ついつい気になって、チラチラと振り返ってしまう。

そんなイストファに気付いたのだろう、ドーマは仕方なさそうに「見てみますか?」と提案してくる。

「え、いいんですか?」

「構いませんよ。あと、その敬語も必要ないです」

「あ……うん。分かった」

「では、こちらへ」

小走りでドーマの後ろに回り込んだイストファは地図を覗き込み……「えっ」という驚愕の声を漏らしてしまう。

その地図に描かれていたのは四隅の壁と方角……そして入り口と出口「だけ」だったのだ。

「な、何これ」

「地図ですが」

「え、だって地図ってもっとこう」

「この入り口と出口以外何もない一階層で、他に何を描けというんですか」

「それ、地図の意味あるの!?」

「今何処にいるかは何となく分かりますよ」

真面目な顔でそう言われてしまえば、イストファも「そうなのかな」という気になってきてしまう。

実際、昨日の探索では迷って酷い目にあった。

「まあ、こんなもの乱戦になったら方角を見失うんですけどね」

「……そっか……」

この階層、冒険者の先輩達はどうやって攻略してるんだろう。

そんな事をイストファが遠い目で考えてしまうのも無理はない。

ない、が……探索でいつまでも気を抜いている程、イストファも愚かではない。

軽く頬を叩くと「よしっ」と気合を入れ直す。

「それじゃあ、迷わないようにこの周辺を探索ってことにしようよ」

「ま、妥当だな」

「そうですね」

イストファの提案に二人も頷き、あまり入り口から離れない範囲を三人はウロウロとし始める。

しかし、何故だろうか。昨日とは違い、ゴブリンに驚くほど会わないのだ。

「出ねえな……」

「そうだね」

出ないといっても、この場所では見えない「少し先」にグラスウルフが隠れている事だってあり得る場所なのだ。

気を抜かないように周囲を見回し、いつ何が飛び出してきてもいいように小盾と短剣を構える。

しかし、歩いても歩いてもゴブリンの一匹すらも出てはこない。

「むむ……これでは疲れるだけで無駄になってしまいます」

「そう考え始めた時が一番ヤベえんだ。油断してるとそのうち」

「カイル!」

横を歩くドーマにカイルが講釈を始めた、その時。

虚空から現れたグラスウルフが横からカイルへと襲い掛かる。

完全に攻撃態勢に入った、飛び掛かるその態勢。

間に合わない。そう判断したイストファは盾を投げようとして。

しかし次の瞬間、地図を投げ捨てたドーマがカイルを引き倒し、グラスウルフの鼻を殴りつけた。

「ギャンッ!?」

殴られた衝撃と驚きに空中を横回転しながらも、グラスウルフは着地し唸り始める。

そして……その時にはもう、ドーマの手には一本のメイスが握られている。

ドーマはそのままグラスウルフと睨み合い……仲間を呼ぼうとグラスウルフが口を開けたその瞬間に走り出す。

「ウオ……ゲァっ!」

大きく開かれたその口へと、低い態勢から横薙ぎにスイングされたメイスが叩き込まれる。

牙をへし折り、咆哮を上げようとした喉ごと叩き潰さんという勢いの、力任せの打撃。

しかしそれは確かな効果を発揮し、声にもならない声をあげるグラスウルフへ、ドーマはメイスを振り上げる。

「トドメです」

唸りを上げて振り下ろされたメイスがグラスウルフの頭蓋を叩き割る。

それで、終わり。あまりの速さにイストファもカイルも言葉も出ない。

「……どうしました?」

「え、あ、いや」

「凄ぇな、流石はダークエルフってことか」

言葉を失っているイストファとは違いカイルは称賛を口にするが、ドーマは嫌そうな顔を浮かべてしまう。

「確かにダークエルフが身体能力で多少優れている事は否定しませんけど。その言い方はあまり好きではないです」

「あ、でも。僕が援護する暇もなかったよ……ほんとに凄いね」

「それは考え方の違いですよ、イストファ」

そんなドーマの言葉にイストファは「考え方の違い?」と聞き返す。

「というか……メイスって、結構腕に衝撃くるんですよ。連戦とか無理です」

そう言うと、ドーマはちょっぴり涙目でメイスを持つ手をもう片方の手で押さえた。