軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

なら、超えるか

だからこそ、ブリギッテは叫ぶ。

「イストファ! 渡した石を、剣に!」

そう、叡知の鍵石。ブリギッテが作りイストファに渡した、自身の錬金術の最大の成果物。

そして同時に、ジョセフに自分の命を狙わせるきっかけになった石。

それでも叡知の鍵石が2度作れるか分からない程の奇跡であることに違いはなく……だからといって、惜しむことなどしない。

何故なら、ブリギッテは王族であるからだ。切るべき札を切るべき時に切れるからこそ、生まれながらにして頂点である王族足り得る。

そして、イストファも……預かっていた青い魔石を、叡知の鍵石を取り出し……ルーンレイカーで、叩き切る。

その瞬間。叡知の鍵石から溢れ出た膨大な魔力が、全てルーンレイカーへと吸い込まれた。

「おお……」

「あれが、傭兵王の魔剣……」

そんな声が貴族の声から洩れる程に、ルーンレイカーが美しく、青く鮮烈な魔力を放出し輝く。

刀身を覆う、巨大な光の刀身。巨大剣を更に巨大に錯覚させる、魔力の刃。

誰もがその美しさに魅入った、その刹那。イストファの必殺剣が、放たれる。

斬、と響く音。必殺剣の名に恥じぬ、必殺の一撃がミノタウロス・ラゴウを斬り裂き胴を上下に分かつ。

そして、その代償とでもいうかのように魔力の刃は消え去り……ルーンレイカーは、ボロボロのアルスレイカーへと戻ってしまう。

イストファ自身も、ボロボロだ。何度も放った必殺剣の反動が、内部からその身体に痛みを伝えてもいる。だが、その姿を笑う者など何処に居ようか?

「イストファ!」

身体から力が抜けて膝をつきかけたイストファを、駆け寄ったカイルが支える。

「カイル……」

「やったじゃねえか! 完全勝利だぞ、お前!」

「僕の力じゃないよ。今回も……色んなものに助けられてる」

「知るかバカ! ああ、誰にも文句なんざ言わせやしねえさ!」

「そうですよイストファ!」

「早く怪我を見せてください、治しましょう」

ミリィとドーマもイストファを囲んでもみくちゃにしかけるが、そこにブリギッテの咳払いが響く。

「イストファ」

「ブリギッテ様……」

「よくやりましたわね。今回の戦い……私も、中々のものだと思いましてよ」

「いえ、そんな……」

「今回の黒杖合わせは、こうなってはもう中止なのは間違いないですけど……私個人としては、貴方の勝利だと思っていますわ」

そう、それは偽らざるブリギッテの本音だ。

ガラハドは確かにイストファよりも強かったし、魔剣である紅蓮剣ラゴウの能力も凄まじいものがあった。だが……逆に言えば、魔剣頼りのところが大きかった。

イストファが最初からルーンレイカーを解放していれば、あの傲っていた時点のガラハドであれば意外に簡単に切り伏せたのではないかとすらブリギッテは思っている。

まあ、それは今となっては「もしも」の話でしかないのだが。

「ねえ、イストファ」

「はい」

「もし、貴方が良ければですけど……私の正式な」

言いかけたその言葉はしかし、拡声魔法を通じて放たれた王の言葉で遮られてしまう。

「皆の者。見ての通り、あのモンスターは見事若者たちによって倒された」

「お父様……っ 恨みましてよ……!」

流石にこの状況で話を続けられるはずもなく、ブリギッテは王を睨みつけるが……王は当然聞こえているはずもなく涼しい顔だ。

「黒杖合わせは中止とするが、今回の件……いや、事件については厳しく責任を追及していくつもりだ」

その言葉に何人かの貴族がビクリと肩を震わせるが、それが恐らく第2王子ジョセフを支援していた者たちであろうことは、黙って見ていたカイルにもなんとなく予想がついていた。

「まずは最大の功績者であり、未来ある冒険者でもある若者達に盛大な拍手を。彼等には、改めて相応しい報酬を授ける事を王と国の名において宣言する」

そんな王の言葉に、各人の思惑はともかく拍手が送られ……どういう立場の者なのか、歓声をあげている者も居た。

まあ、そんな有象無象はともかく……イストファは観客席に座ったままのステラへと視線を向けて。当然のようにそれに気づいたステラは、イストファへと優しげな笑顔でヒラヒラと手を振る。

「……たぶんだけど」

「ん?」

「ステラさんなら、もっと簡単に倒せてたよね」

「あー……まあな。だがそりゃ、お前……」

比較対象が間違ってんだろ、と言いたげなカイルではあったが……イストファは、ステラへの憧れの視線を向けたままに呟く。

「遠いなあ、一流って」

「……はあー……お前って奴は……」

アレは一流とかいう区切りではないと、カイルは心の底からそう思う。

超一流とかでもなく、文字通りに規格外。そんなものを目指すのはどうかと思うが……しかし、悪くないともカイルは思う。

「なら、超えるか。俺とお前でよ」

「うん」

「お、即答したな?」

二ヒッと笑うカイルに……ドーマとミリィが、じっとりとした視線を向ける。

「またそうやってボク達を自然に省く……」

「どうしたもんですかね、この王子様は」

「あ、いや。悪かったよ……」

思わず謝ってしまうカイルにイストファが吹き出し……ドーマとミリィも笑い出す。

そんな4人をブリギッテが少し羨ましそうに、そして共に戦った審判役の白剣騎士が眩しそうに見ていたが……とにかく、こうして一連の騒動はようやく、一応の終結となったのだった。