軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

頑張ってるわね

そして3人は、4階層への階段を降りていく。

見た目通りであれば3階層の出口である扉……海賊王の墓の入り口である扉はそのまま室内へと繋がっているはずだが、そこはダンジョン故……というものなのだろう。

長い階段を降りていき……やがて3人はその先の光を見る。

どんよりと曇っていた3階層とは違う、太陽の光。その先へと進み出て、イストファは思わず「うわっ」と声をあげてしまう。

第4階層へと降りたイストファ達を待っていたのは……絶景ともいえる景色だったからだ。

連なる山々、切り立った崖、上ではなく下に雲がある光景。文字通りの天上の光景にイストファは言葉を失い……それはカイルとドーマも同様だった。

けれど、妙に寒いのは、この階層の季節が冬ということなのか。気にはなるが、この絶景の前では今のイストファにとって些細なことに思えた。

「凄い……」

「ええ、これは……かなりの高さですね。噂に聞く霊峰山脈と同等でしょうか」

「確かに絶景だが、喜んではいられねえぞ。何しろ此処が」

「そう、此処が」

言いかけたカイルの言葉を、聞きなれた……イストファにとっては聞きなれた声が遮る。

「第4階層『天空の牢獄』よ。おめでとう、イストファ。頑張ってるわね」

「ステラさん!」

その顔に一目で分かるほどの喜びを浮かべたイストファがステラに駆け寄る。

「こんな所で会えるなんて。どうしたんですか?」

「イストファを待ってた……って言えたなら中々ロマンチックだけど。お仕事よ」

自分を見上げるイストファを引き寄せ優しく背中を叩くと、ステラもまた微笑む。

「仕事ォ? 金級がか? 第4階層で?」

「まあね。理由については、君なら言わなくても予想はつくんじゃない?」

言われてカイルは「むっ」と唸る。金級冒険者のステラが此処にいる理由。

第4階層が適正? そんなはずはない。

現在冒険者ギルドが把握している階層は19階層。これは銀級冒険者が攻略中の階層であり、金級冒険者のステラであれば当然そこまでは行けるはず。

となると、それを置いても解決すべき何かがあるということ。

その上で自分が予想できる問題……と、カイルはそこまで考えて。

「あ、ひょっとして……此処に何か出るんですか?」

「ええ、そうよ。賢いわね、イストファ」

イストファに先を越され、カイルは「ぐっ!」と唸る。

「カイルは考え過ぎね。それは貴方の武器でもあるけど、弱点でもあるわ」

「チッ、俺はあまり自分の直感は信じてねえんだ」

「それも1つの正解よ。逆にイストファは直感を頼りすぎなところがあるわね」

「す、すみません……」

「いいのよ。3階層を越えて来たんだもの。直感だけでやってはいないって分かってるわ」

言いながら、ステラはイストファの頭を撫でる。そのついでとばかりにギュッと抱きしめるので、イストファの顔はすでに赤く染まっている。

「では、折角なので師匠らしく授業よ。イストファ、此処はどんな階層で、どんなモンスターが出ると思う?」

言いながらステラはイストファを離し、それを合図にイストファは周辺を見回す。

こうして見る限りでは、此処は山々が連なる場所……そして、かなりの高さだ。

恐らくは、此処から下に向かっていくというのはあまり現実的ではない。

それは階層名である「天空の牢獄」や、遠くに見える橋のようなものからも推測できる。

と、なると……少なくとも「どんな階層か」については答えが出る。

「……この高い場所で移動する階層、なんだと思います」

「うん、それは見たままね。それによる危険、注意点についてはどう?」

「此処から落ちたら助からないんじゃないかって気がします。晴れてるから、足が滑る事はなさそうですけど」

しっかり考えたイストファの言葉に、しかしステラは苦笑し……イストファからは見えないがカイルは額に手をあて、ドーマも難しい表情を浮かべている。その雰囲気にイストファは思わず「え? あれ?」と声をあげるが、ステラは「ま、仕方ないわね」と頷く。

「此処にはないけど……イストファ、あっちの山。白いのがあるの分かる?」

「え? はい」

「雪を見たことは?」

「雪、ですか? えっと……それってなんでしょう?」

「うん、そこからなのね」

ステラはしばらく悩むような様子を見せた後、山肌に指を向ける。

「スノウブリザード」

ゴウ、と凄まじい音をたてて放たれた雪の嵐は山肌をあっという間に凍てつかせ、イストファとドーマは感嘆の声を……カイルはチッと舌打ちする。

「詳しい説明は省くけど、今のが雪。凍り付いてるのを見れば分かると思うけど、極低温によって状態変化した水と言えば分かるかしら」

正確には違うんだけどね、と呟くステラだが知らない者に雪の成り立ちを1から説明しても分かるはずもないので、そういう説明にしかならない。

「……ツルツルしてる」

氷に触れ自分の指が濡れた事に気付いたイストファは、そこでハッとしたような表情になる。

「こういう状態になってるってことなんですか!?」

「そういう場所もあるわ。ここ、寒いでしょ?」

「は、はい。確かに」

「今は大丈夫そうだけど、この階層を進むうちに寒さは行動を阻害していくわ。そうなった状態でツルッといったら……」

言われて、イストファは地上も見えぬ「下」を見てゾッとする。

「怖い、ですね」

「ええ。超怖いわよ? 私みたいに対策できる魔法を長時間使用・維持できれば話は別だけど」

言われてイストファはカイルへ振り返るが、そこにあったのは渋面だ。

「……そんなに長い時間は無理だ。たとえ維持できたとしても戦闘が不可能になる」