軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

滅びなさい、骨野郎

だが、勝たなければ先に進めない。勝てなければ、自分の価値を証明できない。けれど、どうすれば。

キャプテンスケルトンと互いに距離を測りながら、イストファは僅かな焦りをみせる。

結局のところイストファの勝機は、飛び込んでいかなければ訪れない。だがキャプテンスケルトンの斬撃は速い。あの密林の追跡者と比べても、遜色はないかもしれない。

……いや。密林の追跡者と戦った頃よりもイストファが強くなっている事を考えれば、それ以上に。

「……やるしか、ない」

呟き、イストファは短剣を構える。やるしかない、やるしかないのだ。

元よりそれ以外の選択肢はなく、突っ込む以外にイストファは術を知らない。

ならば今までを超える最高速で、今までを超える最大力で。

地面を蹴り、イストファは走る。アイツの懐に飛び込むと、その意思のみを持って地を駆ける。

キャプテンスケルトンがそれを許すはずはなく、イストファへとカトラスを振るい……だがイストファは、今度は余裕をもって小盾で受け流す。

小盾の表面を削るような重く激しい音と、何かが剥がれたような音が響く。

それが小盾の表面に貼られた鋼鉄部分が剥がれた音だとイストファは気づいてはいたが、気にしている暇はない。

懐に入りこんだ。自覚した一瞬で、イストファはキャプテンスケルトンに斬りかかろうとして。

「えっ」

何かに足を引っ張られ、イストファはグラリと態勢を崩す。

何が、一体何が。戸惑うイストファが視線を向けた先には、地面から突き出した骨の腕……新たなスケルトンの腕がそこにあった。

それだけではない。わざと残した1体のスケルトンを抑え込んでいたドーマのところにも、そしていつでも援護できるように態勢を整えていたカイルのところにも。

「ガガガ! ガガガガガガ!」

笑う。嗤う。キャプテンスケルトンが、哂っている。

こんな簡単に罠にはまったイストファに、カイルに、ドーマに。

倒されたらまた決まった場所に配下を呼び出す。そこにパターンを見出すのは相手の勝手。

そのパターンを崩すのは、呼び出す側の勝手。

そんな当たり前の事にイストファは気付かなくて。

後ろへと倒れていくイストファの腹に、キャプテンスケルトンがカトラスを突き立て……迷宮黒鉄のチェインシャツは、カトラスにあっけなく貫かれてしまう。

「が、ふ……」

「イストファアアアアアアア!」

カトラスが地面まで届いた音が響き、イストファの身体が地面に縫い付けられる。

自分を襲ってきたスケルトンの攻撃を杖で防いでいたカイルも、そして慌ててスケルトンにトドメをさし追加のスケルトンの頭蓋を砕いていたドーマも、間に合わない。

キャプテンスケルトンは、ゆっくりとイストファからカトラスを引き抜いて、トドメを刺そうと再びカトラスを振り上げる。

「ざっけんなよテメエエエエ! ボルトオオオオオ!!」

カイルが至近距離から放ったボルトの魔法はスケルトンのカトラスを持つ腕を吹き飛ばし、同時にカイルにも幾らかのダメージを与えてしまう。

指が折れるかと感じたほどの自爆的ダメージにカイルは小さく呻き声をあげ、それでも杖を握り「ボルト!」と叫ぶ。

「ぐうううううう!」

ボルトを撃つ時の僅かな衝撃がダメージになる。自爆ダメージなど魔法初心者でもやらないようなミスだ。魔法を撃つ時は一定の距離をとる。そんな大原則など関係なかった。

これ以上やらせなどしない。これは自分のミスだ。頭脳担当を気取っておきながら、この体たらく。

指程度がなんだというのか。スケルトンを吹き飛ばしたカイルは、前へと走る。そうする事でキャプテンスケルトンの注意が一瞬でも自分に向けられると考えていたし、それは正しかった。

キャプテンスケルトンの腕は止まり、カイルへとその虚ろな眼窩を向けてくる。

「ドーマァ! ショットを使え!」

叫ぶ。カイルの足元に新たなスケルトンが地面を割り這い出てくる。

イストファよりもドーマよりも遅いカイルの足では、それから逃げる事など出来ない。

自分を掴む骨の手に気付きながら、それでもカイルは杖を向ける。

「エアッ! ストオオオオオオオム!」

ゴウ、と。小規模な空気の奔流が巻き起こる。

竜巻というには小さすぎるそれは、しかし確かに渦を巻きながらキャプテンスケルトンへと迫り……カトラスの刀身で受け頭蓋を守ろうとしていたキャプテンスケルトンを大きく後退させる。

だが、それだけだ。空気の奔流が消え去ったのを確認し、キャプテンスケルトンはカトラスの刀身を下ろして。

「ガッ……!?」

真下へと迫っていたイストファに気付き驚愕の声をあげる。

キャプテンスケルトンは気付かなかった。先程のカイルの魔法が放たれていた間に、ドーマの遠距離回復魔法ヒールショットがイストファに放たれていたことを。

キャプテンスケルトンは知らなかった。全快ではないにせよ動けるようになったイストファが、不屈の闘志を見せることを。諦めるという言葉を知らないことを。

そして……仲間を頼れる少年だということを、知らない。故に、イストファの足払いをまともに受けてしまう。

「ドーマ!」

「ええ!」

迫っていたドーマが、ヘビーウェポンのかかったメイスを低い体勢から横薙ぎに振るう。

「滅びなさい、骨野郎」

軋む鈍い音と、何かが壊れる音。キャプテンスケルトンの頭蓋骨が砕け飛び散った、その直後。

キャプテンスケルトンの呼び出していたスケルトン達は、一斉にその活動を停止する。

そして……キャプテンスケルトンがもう動かない事を確認したドーマは、ハッとしたようにイストファへと振り向く。

「そうだイストファ! すぐにヒールをかけなおしま……」

言いかけて、ドーマはイストファの突き出した拳に気付く。

それが何を意味しているかは、ドーマも当然知っている。

先程の魔法の後転んだままのカイルにチラリとドーマは視線を向けて、やがてドーマは少し遠慮するようにイストファの拳に自分の拳をぶつける。

「……やったね、ドーマ」

「ええ。反省点は多いですが」

「ああー!」

気付いたカイルが慌てたように起き上がり走ってくるのを見て……イストファとドーマは、思わず一緒に笑いだす。

それは、この勝利の喜びと、安堵。そんな感情の入り混じった、けれど明るい笑いだった。