軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

14.ワイバーン襲撃

ワイバーンの影が上空に現れてから、1時間以内。

王宮の魔術師が王都上空に結界を張り巡らした。

対魔法攻撃用の防御魔法ではあったが、ワイバーンからの炎にも効果があった。

そのおかげで、ワイバーンが完全に接近するまでは街に被害はなかった。その時間稼ぎにより、街のほどんどの人は避難の時間を持てた。

王国騎士と警備隊の誘導の元、教会や貴族の屋敷などの頑強な建物や、地下水路に身を隠してゆく。

先頭のワイバーンが結界を体で破り、中央広場に降り立った。それを皮切りに次から次へと巨大な体躯が石畳や屋根の上に降り立つ。そこに立っただけで、石も瓦もガラガラと割れて落ちてゆく。

翼を動かせば強風が巻き起こり、口を開けば熱風を生じる。それがなくとも、足には鋭い爪があるし巨大な口には鋭い牙が立ち並んでいる。

数体のワイバーンはまだ王都の外にいるようだった。街まで侵入してきたのは3体。

一番初めに侵入したワイバーンに向かってライアスはいち早く馬を走らせた。

間近で見ればやはり、大きい。小さな家1軒くらいの大きさはある。目は獰猛な獣のように赤く光り、口からは泡の混じった涎を垂らしていた。

穏便な解決は難しそうだ。

それを直感的に感じ、ライアスは同行してきた魔術師に短く命じた。

「あいつからだ」

魔術師が魔法陣を展開する。

魔力の流れを察知したのか、ワイバーンが大きく口を開けた。魔術師に向けて炎を吐き出そうとしている。

詠唱が間に合わない。ライアスは身体強化を使い地面を蹴った。

突然自分に向かってきた 物体(ライアス) にワイバーンの意識が反れる。放とうとしていた炎を急遽ライアスに向けてきた。それを素早く避けながらライアスは力を込めた剣を振り下ろした。

——硬い。

通らないことはないが、相当な硬さだ。

翼を切り落とそうとしたのに、ガツリと岩を切るときのような音がして、弾き返される。深追いすれば反撃されそうで、半分も切れなかった。

ワイバーンが傷つけられ怒り狂ったように咆哮した。

耳を裂くような鳴き声だった。

幸い、魔術師は先の戦争も経験した熟練の者だったので、詠唱が途切れることはない。続いて別の魔術師が周囲の消火活動に当たる。

ワイバーンの動きが一段早くなった。痛みか怒りか、暴れながらライアスに突進して来る。

「——ライアス!!」

ライアスがワイバーンの攻撃を防いでいると、ワイバーンの背後から大剣を振り下ろす影があった。昔から共に戦ってきた友人のアイザックだった。同じく王国騎士団に所属している。

「かってえな!」

アイザックの剣も僅かに傷をつけただけだった。ワイバーンは大きく体をひねり、アイザックを払いのけようとする。その隙にライアスはワイバーンの翼に再度剣を振り下ろし、片翼を切り落とした。

ワイバーンの口からものすごい熱量の炎が吐き出される。あまりの熱風に息もできず、ライアスとアイザックは一旦距離を取ろうと駆け出した。

二人に向かってワイバーンは炎を吐きつつ、足を振りかざし爪を立てようとする。

その時、魔法陣が、ようやく間に合った。

ワイバーンに向けて巨大な楔が打ち付けられた。続けて重厚な鎖が幾重にもワイバーンを縛り上げ捕獲する。

丸くなって暴れ狂うワイバーンに向かって、ライアスは飛翔して剣を振り下ろした。

最大限の力を込めて首と胴体を切り落とす。

辺りに血飛沫が飛び、ワイバーンはこと切れた。

「手が空いたものから、消火しろ!」

ライアスは周囲に指示して、死んだワイバーンに近づいた。

皮膚はどこも硬い鱗で覆われている。

「ヨシファ」

先ほどの熟練の魔術師の名を呼べば、ヨシファはよいしょ、と体が重たそうに歩み寄ってくる。

王国の魔術師団長である。

「こりゃあ、とんでもないバケモンだな」

「拘束魔法はどれくらい持ちそうだった?」

「・・・儂で、20分か30分と言ったところか」

魔術師団長でそれという事は、一般の魔術師だと半分程度だろう。

「アイザック、首を斬り落とせそうな騎士は何名いると思う?」

「馬鹿野郎、一人もいねえよ」

お前と一緒にするな、と言われる。

ライアスは少し考えた。

弱点を探りたくて先陣を切ったが、そんな余裕はなかった。相対してすぐにやらないと、こちらがやられる。

魔術で拘束して首を切り落とすのが一番効率的かと思ったが、首は相当な硬度だった。他に柔らかいところがあるか調べるが、どうにもなさそうだ。切り落とした首を見れば、口の中くらいはかろうじて柔らかい。が、炎を吐く口が無防備に攻撃を受けるとも思えない。

「ヨシファ、攻城魔法陣はどうだろうか」

戦争で、敵の城門を破るときに使う魔法陣がある。ちょっとした建物なら跡形もなく吹き飛ぶ。

「鱗が弾き返さぬか、やってみねばと分からぬのと・・・対象物が動くと大変なことになる。どこに向けて放つかだな」

「アイザック、騎士何人なら首を落とせる?」

「——安全にいくなら最上級騎士5名」

それだと2組しか隊を組めない。

「国王陛下をお守りしてる騎士を中級騎士に代えるか」

「え・・・この非常時に?」

ライアスは頷いた。

オルティメティもそれなりの実力はある。いざとなったら頑張ってくれるだろう。短時間で攻勢に出て決着をつけるのが、一番被害が少ない。直感的にそう判断した。

「飛翔中と地面にいるワイバーンそれぞれ、二手に分かれるぞ。降り立ったワイバーンには騎士団主体、騎士5名と拘束魔法を扱える魔術師3名で当たる。飛翔中のワイバーンには魔術師団が主導しろ。風魔法で気流を作って拘束魔法、攻城魔法陣をそのまま空中に向けて放つ。——ヨシファ、どうだ」

「伝令役と消火にも人手を割かねばならぬのに、魔術師が足りぬ」

「では、拘束は騎士と連携して行え。両翼を切り落として動きを封じればいい」

「簡単に言うなよ・・・」

アイザックが少し刃のこぼれた自分の剣を見ながらぼやく。

「ペンシルニア騎士団を到着次第配分する。王国騎士団は避難誘導と一般人の守護任務を優先しろ」

ワイバーンの話を聞いてから、ペンシルニア騎士団では実験的に空中戦の訓練をしていた。どこまでうまくいくかはわからないが、連携して当たればワイバーンを地面に叩き落とすくらいはできるだろう。

身体強化を扱える者を配分すれば、首を落とすこともできるはずだ。

「首を斬れないなら、拘束した後私を呼べ。切り落としに行く」

「そっちの方が現実的かな」

あちこちで火の手が上がっている。遠方から残り6体のワイバーンも街に降り始めていた。

興奮して暴れそうになる馬をなんとか宥めて、ライアスは再び馬に乗った。

「——伝令を頼む。私は巡回する」

「わかった。俺も一旦編成しに戻る」

頷き合って別れた。

軽い火傷を負っただけで、今の所無傷に近い。

あと何体斬れるだろうか。

少し遠くのペンシルニアの屋敷に被害がないのを確かめてから、ライアスは近くの火の手が上がる場所へ向かった。