軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

136.チーズはよく伸びる

(なぜだ……?)

なぜレティーシアは、あのような嬉しそうな笑みを浮かべることができるのか。

そして自分は、なぜ彼女の微笑に心を動かされているのか。

わからないままに、グレンリードの鼓動は早まった。

(私がぐー様であると、こんなにも好意的に受け入れられるとはな……)

人は異質な存在、理解の及ばない対象を拒みがちだ。

グレンリードが先祖帰りであり、銀の狼の姿に変じることができる、と。

それを知った相手は賞賛の裏に怖れを滲ませるか、敬い持ち上げ遠ざけるばかりだ。

両親でさえ、その反応は同じだった。

恐れ期待し、グレンリードを特別扱いしていたのだ。

「……やはりおまえは、変な奴だな」

照れ隠しにそっけなく呟いた。

「ふふ、失礼いたしました。ついぐー様の時のお姿を思い出してしまって――――」

レティーシアの言葉の途中で扉が鳴った。

毒見を終えた料理の到着が告げられる。

「陛下、ご夕飯はまだですよね? 持ってきた料理、食べていただけませんか?」

「あぁ、そうしよう」

今日はどんな料理だろうか?

レティーシアの料理は美味しい。

おかげでここ数か月、グレンリードは食の楽しみを取り戻していた。

「今日もこの場で加熱するのだな」

ルシアンが小型のフライパンと、埃避けの蓋が被せられた食材を持ってくる。

蓋が開けられると、皿にはふんわりと白い食パンがのっていた。

「トーストか?」

「ピザトーストです。陛下、ピザはお好きですよね?」

「あぁ、期待している」

「ふふ、ご期待に応えられるよう作っていきますね」

レティーシアがてきぱきと、料理を準備していった。

すぐ食べられるよう、下ごしらえは既に済まされているらしい。

ふんわりと白い食パンに、潰したトマトが塗られていった。

「念のためですけど、陛下って玉ねぎは大丈夫ですよね? 犬や狼には、玉ねぎを食べさせてはいけないものですが……」

「問題ない。玉ねぎはどちからと言えば好物だ」

「失礼いたしました。では、玉ねぎを多めにしますね」

軽く口を叩きながらも、レティーシアの手つきは淀みなかった。

玉ねぎの上から細かく刻まれたチーズをまぶすと、薄切りにされたソーセージをのせ、最後に表面全体にバランスよく、輪切りにされたピーマンを並べていった。

「では、焼いていきますね」

加熱はレティーシアの魔術による火だ。

油とバターを引き食パンを入れると、蓋をして弱めの火で焼いていった。

「よい香りだ」

漂いだすチーズの香り。

フライパンの鳴る音と共に、グレンリードの食欲を煽ってきた。

「そろそろ完成、ですね」

鍋掴みで蓋をずらし、中の様子を見るレティーシア。

焼き具合を確認すると、皿へと食パンを下した。

「なるほど、確かに、ピザでありトーストでもあるな」

食パンにはこのような食べ方もあるのかと、グレンリードは軽く感心していた。

チーズにはところどころ焼き目がついており、香ばしい匂いを漂わせている。

トマトの赤にチーズの黄色、ピーマンの緑が目にも賑やかだった。

口にすればとろり、ついでさくり、と。

とろけるチーズと食パンの食感が一口で味わえ、濃厚なトマトの酸味がソーセージによく合っている。 玉ねぎとピーマンがよいアクセントになってり、舌を楽しませてくれた。

「むっ」

チーズは美味いがよく伸びる。

切れ端が跳ね、口の横についてしまったようだ。

指先でとっていると、レティーシアが小さく笑った。

「ふふ、ぐー様の姿でピザを食べた時も、チーズに少し苦戦されてましたね」

「…………」

無言で、グレンリードはピザトーストを食べ進めた。

美味しいが恥ずかしい。

レティーシアの微笑は愛らしくずっと見ていたいが、それはそれとして恥ずかしかった。

「もう一枚食べられますか?」

あっという間に食べ終わりと、お代わりを勧められた。

「あぁ、もらおう」

「わかりました。よかったら、陛下御自身で上にのせる具材の量を調節してみますか? 今食べた具材だけではなく、ハムやベーコン、鶏肉を軽く焼いたものも持って来てます。自分好みの味や配分を、研究して極めるのも楽しいですよ」

「そういう楽しみ方もあるのだな」

食にこだわるレティーシアらしい提案だ。

グレンリードは二枚目の食パンを受け取ると、そこで少し考えこんだ。