軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まさかの追求

忘れもしない、幼少期のヴィルオルの生意気な眼差しを――。

記憶とまったく同じ声、様子、姿で、彼は私の前に現れたのだ。

「名前は? 女なのにどうして銃をそのように扱うことができる?」

新たな人生を歩んでからずっと、ヴィルオルに会いたいと思っていた。

話せなくてもいい、遠目でもいい、ただ元気でいることさえ確認できたらよかったのに。

まさか目の前に現れて、私を問い詰めているなんて。

こんな状況になるなど、予想すらしていなかった。

頭が真っ白になる。

「ユークリッドお嬢様、何をしているの? 行くわよ!」

いつの間にか、皆先に進んでいたらしい。エルマが立ち止まっていた私に声をかけてくれる。

「あら、お友達?」

「いいや、違う」

申し訳ない、そんな気持ちを抱きながら踵を返す。

「おい! 待て!」

ヴィルオルの叫びが聞こえてきたものの、私と同じく六歳の幼い彼の体は人波に飲み込まれてしまった。

きっと従者が助けてくれるだろう。そう信じてこの場を去ったのだった。

その後、用意された席に座って武闘大会を見学する。

もしかしたらまたヴィルオルに見つかってしまうかもしれない、と帽子を深く被っておく。自意識過剰かもしれないが、念には念を入れて対策しておこう。

それにしても、あんなところでヴィルオルと出会うなんて。

もしかしたら今日、武闘大会に参加しているかもしれない。遠くからでもヴィルオルを目にすることができるのだ、と期待で胸が高鳴っていたというのに。私自身に興味を持たれて動揺してしまったのだろう。

私は死に際に彼と仲よくなりたい、だなんて願ったのに、無視して逃げるように去ってしまった。

絶対にいい印象は持たれなかっただろう。

もうライバル関係になることはないのだから、敵対視されることなんてない、と思っていたのに。

後悔の念に襲われるも、あのときどういう反応を返すのが正解だったのかはわからないまま。

うだうだと考えを張り巡らしているうちに、武闘大会の開会式が始まった。

この武闘大会はリウドルフィング公爵家の当主が隊長を務める妖精騎士隊と、バーベンベルク公爵家の当主が隊長を務める竜騎士隊の御前試合である。

国王陛下を初めとする王家の方々も楽しみにしているようで、毎年開催したい、という声も上がるほどだった。

ちなみに参加するのは一部の騎士のみ。大半の騎士達は普段通りの任務に就いている。

武闘大会に集まる騎士は実力者ばかりだが、護衛対象となる王族もやってくるので、襲撃の心配はないというわけだった。

国王陛下からのありがたい話がある中、エルマは爆睡していた。

ディルクでさえ起きているというのに、と呆れてしまう。

続けて妖精騎士隊の隊長である父と、竜騎士隊の隊長であるバーベンベルク公爵が宣誓の言葉を読む。

「ディルク、父上が出てきたよ」

「くーま、くまっさ~~ん!」

ディルクはくまのぬいぐるみに夢中で、父の登場にも無反応だった。

母は困った表情を浮かべ、エルマは笑っていた。

「この子ったら」

「母上、本番は試合ですので」

「そうですれど」

きっと父の試合が行われる頃には、くまのぬいぐるみに飽きているだろう。

今はぐずらすに大人しく座っていることを褒めてあげようと思った。

最初は王族と近衛隊長の模擬戦が行われる。

王族側は王太子殿下だった。

御年二十七歳で、輝くような美貌に女性陣からの羨望の眼差しが集まっている。

十五年後、王太子殿下は恰幅がよくなり、見る影もなくなっていたのだが。

近衛隊長と王太子殿下の美しい剣の打ち合いに見とれてしまう。

「ディルク、見たか?」

「くま!」

いまだ、ディルクはくまのぬいぐるみに夢中だった。

父が知ったら嘆くに決まっているだろう。

次の試合は従騎士達の戦いである。

一度目の人生では、私もこの大会に参加していた。

そのさい、ヴィルオルに勝ってしまったことが、ライバル視される大きなきっかけとなった。

ヴィルオルは最年少で出場となったようで、周囲に座っていた人達が口々に優秀な子だと噂していた。この場に父がいなくて本当によかった、と思う。

ついにヴィルオルが登場した。

期待の従騎士だからか、ワッと歓声が集まる。

ヴィルオルは落ち着いていて、冷静な様子で剣を抜いていた。

私と初めて戦ったときは少し緊張していたようなので、一度目の人生とは状況が違うのだな、と思う。

審判の合図で試合が始まり、両者が動き始める。

相手側――妖精騎士隊に所属する従騎士は猪突猛進とばかりに剣を掲げて走ってきたが、ヴィルオルはひらりと回避し、胴に一撃を加えた。

重たい攻撃だったようで、妖精騎士隊の従騎士は倒れてしまう。

決着は一瞬でついたようだ。

息をするのも忘れるくらい見入ってしまった。

それは私だけでなく、ディルクもだった。

「かっこい~い!」

瞳をキラキラ輝かせ、ヴィルオルが戦う様子を見ていたようだ。

「すごい! すごい!」

ヴィルオルがいなくなってからも、ディルクは興奮した様子で話していた。

くまはいつの間にか、エルマに押しつけられていたようだ。

まさかヴィルオルの戦いがディルクの胸に響くなんて。

その後もディルクは勝ち続け、十歳の子相手にも勝利していた。

結果、ヴィルオルが優勝したようだ。

表彰式で彼は観客のほうをキョロキョロ見ていた。家族の姿でも探しているのだろうか?

生意気なように見えて、まだ子どもっぽいところがあるのだな、とほっこりしてしまった。

従騎士部門の表彰式のあとも、ディルクの興奮は冷めやらぬようだった。

父が戦っている様子を見たら、さらにびっくりするだろう。

そう思っていたが――父が戦う時間帯は遅く、ディルクは眠ってしまった。

父がバーベンベルク公爵に勝利し、大きな歓声に包まれても起きる気配はなく。

こちらに向かって父が手を振るも、ディルクは夢の中。

なんとも切ない結果となった。