軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

潜入

コンラートが拠点としているであろう場所は、すでにヴィルオルが把握しているらしい。

場所は城下町から馬を一時間ほど走らせた先にある。

「急ぐぞ!!」

私に向かって言うヴィルオルに、驚きを隠せなかった。

「おい、どうした?」

「いや、君は婦女子である私が足手まといになるとは思わなかったのだな、と」

「お前は聖術が使える上に、普段の身のこなしなども無駄がなく、隙がない。きっと普段から何かしら鍛えているのだろうな、と思っていた」

その通りである。貴族高等学校に入学後は寮生活なので控えていたが、邪竜戦に備えて体を強化していた。

「おそらくお前は一介の騎士よりも動けるだろう。それゆえに、足手まといになると思ったことはない。そんなことは今はどうでもいいから行くぞ!」

「ああ!」

ヴィルオルの隣を並んで走ることができる日が訪れるとは、夢にも思っていなかった。

誇りに思う。

「ユークリッド、馬には乗れるか?」

「もちろん」

「そうでなきゃだ」

バーベンベルク公爵家の馬を駆り、ヴィルオルと共にコンラートが潜伏しているであろう場所を目指す。

そこは武器商人が在庫を管理する倉庫として借りている土地だという。

怪しい車両が出入りし、また入院しているはずのコンラートが行き来していたようだ。 内部までは調べていなかったようだが、ほぼほぼ間違いなく、コンラートが拠点にしているだろうとのこと。

馬を駆って一時間――問題の倉庫から少し離れた湖の湖畔に馬を繋ぎ、私達は徒歩で現場まで向かう。

このような 鬱蒼(うっそう) とした森の中に本当に倉庫なんてあるのか。

なんて考えていたら、本当にあったので驚く。

レンガ造りの建物は、平屋だが天井が高い構造だ。貴族の別荘として建てたものなのだろうか。

十中八九、愛人を囲うために造られたものに違いない。

外には馬が停められており、中に誰かがいるというのは明らかだった。

「正面突破は止めておこう」

「そうだな」

裏口からの侵入を試みる。

内部はそこまで部屋数があるわけではなく、台所に風呂場など、最低限の機能が備わっているだけのように思えた。

ただ、普通の営みを送っているとは思えない。

台所は散乱し、食品が腐ったような腐敗臭をまき散らしている。

風呂場は使っていないのか、物置と化し雑多だった。

他にも、商店の在庫らしい品々が木箱に入って廊下に積み上がっていた。

その中の一つにヴィルオルが視線を向ける。

「あれは――」

「どうした?」

「騎士隊で過去に押収したことがある、違法茶葉だ」

なんでも痩せる効能がある、と貴族女性の間で流行った品のようだが、体に害を及ぼすようで回収となったらしい。

「販売元を割り出すことができなかったようだが、まさかここがそうだったとは」

これだけではなく、危険薬物や法定外の火薬類、取引が禁じられている幻獣の餌など、出るわ出るわの、違法品の百貨店のような品揃えだった。

「コンラート、どうしてこんな……」

「先を進むぞ」

「ああ」

一階部分を探し回ったものの、人の気配すらなく。

客間のみ、人を迎えるためか整えられていた。

けれどもそれ以外は荒れていて、足の踏み場もないくらいに違法な品物が置かれている。

いったいどこに潜伏しているのか、と思っていたら、地下へ繋がる隠し階段をヴィルオルが発見した。

暖炉のマントルピースを動かすと、階段が出てくる。

「よく見つけることができたな」

「妙な気の流れを感じたから」

竜族の 第六感(シックスセンス) とでも言えばいいのか。

私はまったくそういうのは気づけなかった。

「ヴィルオル、少し待っていてくれ」

「どうした?」

「地下で目が見えるよう、祝福を施しておこう」

瞳に祝福を施すと、短時間ではあるが夜目が利くようになる。

「すごいな、助かる」

これで地下でも目立つにコンラートを探し回ることができるだろう。

物音を立てないように慎重に進み、地下へ下り立つ。

初めて踏み入る場所だからか、それともコンラートと会うことに不安を覚えているのか、先ほどからぞくぞくと悪寒が止まらない。

廊下を歩いていると、小部屋がいくつかあったが、そこも商品の在庫が置かれるばかりだった。

けれども、最後に見つけた部屋は施錠されていた。

「おかしい」

きっと何か隠しているに違いない。そう思ったものの、今は扉を壊してまで調べている場合ではなかった。

その後、進んだ先に大きな両開きの扉がある部屋の前に行き着く。

建物の構造上、ここが最後の部屋なのだろう。

扉の隙間から灯りが漏れていた。

「いるな」

ヴィルオルが私にだけ聞こえるような声で囁くように言った。

この先にコンラートがいるかもしれない。

胸が張り裂けそうなほど、ばくばくと脈打っていた。