軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヴィルオルへの報告

実家に戻るよりも先に、私はバーベンベルク公爵家の屋敷へヴィルオルとコンラートとの出来事を報告するために訪問した。

入れ違いになって学校に戻っていたらどうしようかと思っていたが、ヴィルオルは調査から帰ってきたばかりだったようだ。

「よかった。午後からお前と話すために、学校に行こうと思っていたんだ」

危うく入れ違いになるところだったようだ。

昨日、コンラートに殴られた痕は回復術で治している。

見た目で何かあったかわからないだろうと思っていたのに、ヴィルオルは即座に気付いた。

「おい、何かあったな?」

「どうしてわかった?」

「いつもより元気がないからだ」

普段、私はどれだけ元気いっぱいな様子でヴィルオルに会っていたのか。

しかし、そうなってしまうのも無理はない。

一度目の人生で私に致命傷を与え、さらに邪竜を召喚したのがコンラートだと発覚したのだから。

図々しい私でも、ショックを受けてしまったのだろう。

「実は昨日、コンラートが話をしたいと手紙を送ってきたので、放課後、二人で会ったんだ」

「なっ――!?」

ヴィルオルは今回の調査で、コンラートと二人きりで会うな、話さなくてもいいと私に注意しようと思っていたらしい。

「あの男、デタラメな奴だったんだ! 体が弱いというのも嘘で、入院もしていない! 医者の診察書は偽造したものだった」

「なるほど、そうだったのか」

コンラートの様子があまりにもおかしかったため、ヴィルオルは独自に調査をしたらしい。そのさい、さまざまなことが明らかとなったという。

「アマーリア・フォン・ジーベルの両親と付き合いがあった武器商人だが、コンラート・フォン・ケルントンと関係がある組織だったようで」

昨日の会話から、コンラートはアマーリアの所在を把握しているような発言をしていた。 きっと裏社会で暗躍し、邪竜復活のために活動していたのだろう。

「すまない、話を折ってしまった。して、昨日、奴と何があったのだ?」

「何から話してよいのやら」

コンラートの実際の発言と、一度目の人生であったことがごちゃ混ぜとなり、まだ頭の中で考えがまとまっていない。

ひとつ、確かなのは彼が私に結婚か、死かの二択を迫ったこと。

それを説明すると、ヴィルオルは怒りの形相を浮かべる。

「あの男、よりにもよってユークリッドの命を狙うなど」

「その件なのだが」

聖水に浸けた布に包んでいた、邪竜のナイフをヴィルオルに見せる。

「なんだ、この、禍々しい気を放つナイフは」

「コンラートが所持していたナイフなんだ」

「触れないほうがいい!」

「ああ、そうだと思って、直接握らないようにしていた」

リーベは精霊なので平気な様子でいたものの、私が触れたら悪影響を及ぼすだろうと思って、ハンカチ越しに握って持ち帰ったのだ。

「いったい何で作ったら、このような邪悪な物ができるというのか」

邪竜の 棘突起(スパイク) から作られた、唯一無二邪悪なナイフである。

どこでこれを得たのかも、コンラートから聞き出す必要があるだろう。

「私との騒動を起こしたあと、コンラートは先生達に拘束され、騎士隊に突き出されたと聞いたのだが」

「 竜騎士隊(うち) にはいない」

駆けつけた騎士は父が隊長を務める妖精騎士隊でもなかった。

「ということは、通常部隊の騎士達だったか」

「おそらくそうなのだろう」

ここでふと思い出す。

一度目の人生で私を邪竜のナイフで突き刺したあと、コンラートは姿を消した。

「もしかしたら、コンラートは転移の 魔法札(スクロール) を所持しているかもしれない」

「なんだと!?」

「もしも使っていたとしたら」

「 拘留場(こうりゅうじょう) はもぬけの殻だ!」

竜騎士隊や妖精騎士隊では、拘留場に拘置させる場合は、一度服を脱がせ、所持物を没収する。

「それが通常部隊の騎士隊でもしていたらいいのだが」

「確認に行こう」

すぐさま拘留場に向かい、コンラートとの面会を望んだのだが――。

一時間、長く待たせると思っていたら、青い顔をした騎士がやってきて私達に告げた。

「コンラート・フォン・ケルントンの姿が消えており、現在、捜索中でして」

「なっ!?」

どうやら気付くのが遅かったらしい。昨日のうちから言っておけば、 コンラートを逃がさずに済んだというのに。

なんでも私物は没収していたようだが、魔法の使用を禁止する独房に入れていたわけではないという。

「それらの施設は、その、うちの部隊にはなく」

「ではなぜ、コンラート・フォン・ケルントンを、竜騎士隊か妖精騎士隊に移送しなかったのだ!?」

「ヴィルオル、落ち着け」

コンラートは魔法札を使ったのではなく、転移魔法を使えた可能性があるようだ。

「転移魔法など、国内でも一部の魔法使いにしか使えない魔法なのだが……」

そこまで実力があるのに、どうして邪竜召喚なんて目論んでいたのか。

考えるのは時間の無駄だ。コンラートの心理なんて、理解できるわけがないのだから。

「ヴィルオル、コンラートを探しに行こう」

「ああ、絶対に懲らしめてやる!」

騎士隊の拘置場をあとにし、私達はコンラートの捜索を始めることとなった。