軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最後の戦い

一度、音を立てないようにドアノブを捻る。鍵はかかっていないようだ。

ヴィルオルが強い眼差しを向ける。

準備はいいか聞いているのだろう。頷くと、ヴィルオルはドアノブを押して開いた。

扉の向こうは晩餐会が開けそうなくらいの広い空間。

壁や天井に展開されるいくつもの魔法陣が、怪しく部屋を照らしていた。

「なんだ、この魔法陣は。ユークリッド、何かわかるか?」

「よくないものだということは確かだが、すぐに発動させるものではないように見える」

部屋の中心に、誰かが倒れているのに気付く。

「あれは――アマーリア!?」

駆け寄って安否を確認しようとしたが、ヴィルオルが「待て!!」と叫ぶ。

その言葉に従い動きを止めると、魔法陣が浮かび上がり、そこから鋭い杭が突き出てくる。

あと一歩、足を踏み込んでいたら串刺しになっていただろう。

アマーリアの周りを囲むように杭が突き出て、彼女を捕らえてしまった。

「ネズミが紛れ込んできたと思ったら、あなた方でしたか」

天井に転移の魔法陣が展開され、中心から登場したのはコンラートだった。

「コンラート、やはり君だったのか、アマーリアを連れ去ったのは」

「気付くのが遅いですよ」

「心配する振りをして、どうしてこんなことをするんだ!?」

「彼女が私を裏切って、他の男と結婚しようとしたからです」

以前聞いた話では、アマーリアとの婚約はコンラートのほうから辞退したと言っていた。

「君が断ったんじゃなかったのか?」

「この女が裏切ったんですよ! 婚約はすでに決まっていたのに」

もしかしたらアマーリアは、コンラートの本性に気付き、婚約を辞退したのかもしれない。だとしたら、彼女の人を見る目は確かだったというわけだ。

「もう、いいんです。何もかも、終わったことですから」

「終わったこと?」

「ええ。あなたかアマーリア、どちらが私の妻に相応しいか、迷っていたんです。でも、わかりました。どちらも相応しくないと」

コンラートが指揮者のように指先を動かすと、魔法陣が怪しく発光し、何かが浮かんで出てくる。

壁際の魔法陣の一つに、邪竜のナイフに似たものを発見した。

「このナイフは」

「あなたに奪われた物と同じナイフですよ」

「――!?」

邪竜のナイフはその一本だけでなく、見える範囲だけで五十本以上はあるように思える。

「これは、なんなのだ!?」

「特別に教えて差し上げます。ここにある武器は、〝かつて邪竜だった物〟なんです」

コンラートは得意げに話し始める。

「その昔、国々を 蹂躙(じゅうりん) し、暴力の権化とまで呼ばれていた邪竜が猛威を揮っていたそうなのですが、勇者と聖女の存在によって倒されました」

しかしながら、邪竜は生きとし生ける物の悪意がなくならない限り、滅ぼすことができなかったという。

「勇者は邪竜をバラバラにし、武器の形にしてから封じたんです」

それがここにある魔法陣に封じられた武器だという。

「邪竜の骨、爪、牙、棘突起など、千以上の武器を、ここに集めたんです! もちろん、私はただコレクションするためだけに揃えたわけではありません」

彼の目的、それは――。

「邪竜の復活です!!」

コンラートの暗躍を知っていた私だけでなく、ヴィルオルも冷静に話を聞いていた。

「驚き過ぎて、言葉も出てこなかったようですね」

手の内をここまで明かすとは驚きである。

しかしながら彼がここまでペラペラと語ったのには、理由があった。

「これらの武器は、生贄を与えることによって封印が解けるようになっています。ここまで言えば、これから起こることが理解できますよね?」

「私達を生贄にし、邪竜復活の糧にするつもりなのか?」

「ええ、その通り!!」

コンラートが指先を動かすと、邪竜のナイフが私達に向かって飛んできた。

「ヴィルオル、あのナイフによって負った傷は治らない!」

「また、厄介なものを――!」

邪竜のナイフが矢のように飛んでくる。

これだけのナイフの封印を解くのに、いったい何人もの命を犠牲にしてきたのか。

考えただけで怒りが湧き上がる。

「――聖なる盾よ、我々を守り賜え!!」

聖術による障壁が、迫りくるナイフから守ってくれる。

邪竜のナイフはリーベが回収し、再度動かないよう聖なる結界の中に投げ入れてくれた。

ヴィルオルは剣を抜き、コンラートに迫る。

「ヴィルオル・フォン・バーベンベルク!! あなたみたいな男が、いちばん気に食わないんです!!」

「恨みを買った覚えはないのだが」

「そういうすかしたところが、嫌いなんですよ!!」

コンラートが魔法陣の中から取りだしたのは、 死神の大鎌(デスサイズ) に似た武器。

ヴィルオルの件を受け止めるだけでなく、弾き返す。

「くっ――!」

邪竜の魔力が付与された大鎌は、呪いをまき散らす。

一撃も食らっていないのに、ヴィルオルの動きがどんどん鈍くなっていった。

「この大鎌は、接近するだけでありとあらゆる呪いを食らってしまうものなんですよ」

このままでは負けてしまう。

そう思った瞬間、ヴィルオルの背後に魔法陣が浮かぶのが見えた。

「――!」

何か起こっていると察した瞬間、コンラートは大鎌を振り下ろす。

ヴィルオルは剣で大鎌を払い、コンラートの体共々吹き飛ばす。

大鎌による攻撃はなんとか回避したものの、背後からの攻撃は回避が間に合わない。

そう思った私は叫ぶよりも先に、ヴィルオルのもとへ駆ける。

ヴィルオルに思いっきりぶつかり、彼を遠ざけた。

次の瞬間、魔法陣から禍々しい槍が突き出て――私の心臓を貫いた。