作品タイトル不明
第37話 カツアゲ
教会の司祭様が出向いたと思ったらとんでも要求をしてきて、全員が固まっていた。
「司祭様、こちらの方たちは他国のお客様で奉納ではなく商売に来られた方です」
と商会長がフォローを入れる。
「でしたら奉納すれば、我が協会の名誉司祭の位を差し上げましょう。それで充分では無いですか」
思っていた以上に好き勝手やっているようだ。
「これほどの品…きっと聖女様もお喜びになる。すぐにそしてあるだけのものを奉納しなさい」
これは話になるのか…と心配していると…。
「司祭様、お心遣い感謝します。ただ、我が国ではこの製品を作る為に魔石を必要としており金銭も名誉も不要ですので魔石を代わりに頂けないでしょうか?」
「ほう…魔石…なるほど、そういう事ですか。でしたらいますぐに大量の魔石をお渡ししましょう…その代わりわかっていますね」
「はい、もちろん…こちらは奉納とさせて頂き魔石は私共で処分という形で処理させて頂きます」
「物わかりの良いもので助かるわ、今日中に我が教会に奉納なさい」
言いたいことだけを言ってそのまま、また店を出て帰っていってしまった。
「本当によろしかったのですか?」
元々魔石で取引すると伝えてはいたのだがすべてを魔石という事でかなり驚いていた。
「ええ、私共が必要としているのは魔石でしたのでそちらが手に入るのであれば問題はありません。輸送費などは塩の代金で賄わせて頂きますが」
と言って誤魔化す。
今回、この国に来たのは魔石の数が充分にあるのに国内での需要が少ない国だったという理由も大きく関係していた。
この国では、魔石は教会へと奉納すると代わりに食べ物がもらえる。
そして教会は、その魔石を死靈術で蘇らせた使者のエネルギー源としている。
本来であればそれで消費するので魔石の量が少ないと思われるのだが…。
「死靈はとても燃費がいいのよ、魔石を一つあげれば1ヶ月は持つわ」
激しい動きをさせなければ死靈術は非常に燃費がよく魔石が必要ではあるが、そこまで消費はしないという事だった。
しかし、魔石は奉納されれば食事を施さねばならず教会としては余った魔石を他国へと輸出していた。
子供でも倒せる魔物からとれる魔石を奉納したら食事の提供というのが、この国の基礎となっているので辞める事が出来ず、といった具合である。
魔石自体は他国ではそれなりに使用されている。
まぁその理由は四英雄自体は禁術を使う際に、魔石に頼っているという事情もある。
しかしこの国の聖女様は自前の魔力が非常に多く、魔石が不要。
という背景もあり魔石が売るほど余っているというのがこの国の実情であった。
なので金銭などを要求すると渋い顔をする教会も、魔石であれば快く取引してくれるという訳である。
この事情についてはメイから聞いていた。
正確にはメイが匿われていた村で聞いた情報らしい。
そんな訳で無事に魔石を仕入れる事が出来た。
商会長の奥様に売った分も含めて金貨は全部で50枚。
仕入れ値を考えれば完全にプラスである。
教会で奉納した際に荷馬車一杯の魔石を受け取り教会をあとにした。
帰り際に、また持ってくるようにしかも今回のより多くというとんでもない要求を受けたがにこやかに笑って流しておいた。
市販の化粧水などを入れ替えた入れ物にはノースリーン共和国のマークが入れてあるのだが、深く追求されることはなかった。
「もっと聞かれると思ったのだけど聞かれなかったわね」
「気付いてない訳ではないと思いますよ、商会長との取引の際には聞かれましたし」
「あれはあくまでも奉納物ですから…どこの物なのかはあえて聞かないんじゃないですかね…まぁ無くなったら催促にいきそうな雰囲気しかありませんでしたけどね」
催促をされてもそんな商品は取り扱っていないのだから応えようもないと思うが…。
とりあえず街を出てすぐに魔石はすべてまとめ売りの出品登録を行った。
金貨も一部を除いて同様の処理を行った。
無事に取引というよりはカツアゲにあった気分ではあるが必要なものは手に入ったのでそのまま家へと帰った。
「ああ!戻ってきた!大丈夫だった?つけられたりとか…」
不安そうなメイだったが…。
「全然大丈夫でしたよ、とりあえず予定通り。魔石を511kg調達しました」
出品で突っ込むと勝手に軽量してくれるので非常に便利だったりする。
熊たちから取った魔石がおよそ10キロ×3だったので1人分はこれで溜まったと思われる。
「まずはメイで試すのが一番でしょうね」
「えっ!?」
「そうですね…俺とエルナさんは出来れば同時に召喚してもらうのが良いと思います」
現状家の周辺には結界が張ってあるのだが、その気になれば破ってくる魔物もいるそうで何かあった時にエルナがいないと撃退出来ない。
メイは何かあっても隠れる事は可能な為、今回はお留守番してもらった。
つまり、俺1人にされた瞬間に何かあった場合詰みという事である。
そもそも俺がいないとこちらの世界から物を送れないので今後こちらの世界に来ることが不可能となってしまう。
「今のままだと、全員であっちに移動した場合、アヤネに転移してこっちにきてもらった後に召喚魔法を使ってもらうって流れになりますよね」
「まぁそうなるわね…」
「確かに不便よね…」
「何か効率的な方法を考えましょうか…」
とりあえず魔石は手に入れたので、今後の為に魔法陣の改良に乗り出す事になった。