軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

102話 収穫しました!

「ほうほう。こうして、刈るんだな」

メッテは俺が作った長柄の鎌を手に、グランク麦を刈り取っていた。

「あまり勢いよく振り回さないようにな。それと、常に他の者と距離を取ってくれ」

俺の声に亜人たちは元気よく返事をして、収穫を続ける。

ヴァースブルグから帰った翌朝、俺たちは早速実ったグランク麦を収穫していた。

メルクは慎重にグランク麦を刈る亜人たちを見て呟く。

「一人でやった方が安全で速そう」

「まあメッテや鬼人、ミノタウロスなら、そうかもしれないな」

あの鎌は紫鉄で切れ味も耐久度も優れている。ばっさばっさと切れるしあまり人手もいらなそうだ。

鬼人やミノタウロスは周囲を気にしすぎて、歯がゆそうにも見えるし。もっとぶんぶん鎌振り回したいだろうな……

あとはゴーレムの何体かを改造して、収穫など農作業に特化させてもいいかも。

収穫したグランク麦は、ウィズの指揮の下、実と茎によって分けられている。スライムが実に覆いかぶさり、小麦の実だけを体へと吸収していくのだ。そうして集まった実は、近くにある箱へと放出される。

昔遠征の際、俺は遠征先の農民のために脱穀機を作ったことがある。

ウィズはそれを見てか、自らの体を使い実と茎を分けていた。まるで自分ならもっと綺麗に分けられるとでも言わんばかりに。あいつは変なところが負けず嫌いだ。

一応脱穀機は作ったが、この速さならスライムに任せてもいいかもしれない。

「エクレシアさんたちのほうも、順調のようですね」

イリアは、麦畑の隣で雑草を移動させているエントたちを見て呟いた。

雑草が無くなり剥き出しとなった土を、根で耕すようにかき混ぜていく。

川からの水を流す用水路も延伸し、今までの畑の五倍の広さにするつもりだ。

拡大した畑は、半分はグランク麦を、もう半分はヴァースブルクで得たマギ豆や野菜類の種子を植えていく。

「大きいともっと綺麗かも」

メルクの言う通り、大きな畑は壮観だ。

だが、大きいとそれだけ管理が大変。虫や鳥などの対策もしなければいけない。ボアが来て食い荒らすこともあるだろう。

そんなことを考えていると、南の空に無数の黒い影が飛んでくることに気が付く。

メルクがそれを見て呟く。

「魔物のカラス?」

「アロークローだな。だけど」

アロークローの前に、もっと大きな翼を持つ者たち──アスハたち天狗が飛んでいく。皆、武器を持って。

天狗がクロスボウや弓で、数体のアロークローを射落とすと、アロークローは回れ右して去っていく。

天狗の中から、アスハがぱたぱたとこちらに飛んできた。

「アスハさん、さすがですね!」

「空は私たちにお任せください。アロークローなら慣れたものです」

アスハは自信たっぷりにそう答えた。

以前はどこか弱気なアスハだったが、最近はちょっと自分に自信がついてきたのだろうか頼もしい発言が多い。

「でも、アロークローの襲来、最近多くなってますよね。エクレシアさんに聞いたら、昨日もやってきたとか」

「そうだな……」

俺は射落としたアロークローを運ぶ亜人を見る。

メルクもそれを見て呟く。

「今日も美味しい焼き鳥が食べられそう。そういえば、ヨシュアはアロークローあまり食べない」

「そ、そんなことはない。美味しくいただくよ。ただ、確かに多いなって」

アロークローは野生の個体はあまりいない。

人間が見るアロークローのほとんどは、魔王軍が制空戦力として飼育しているとされていた。

だから、これだけ大量にやってくるということは、魔王軍の大軍がまだ南に展開していることになる。

魔王軍の脅威はしばらく残りそうだ。

それとは別に、最近進んでアロークローの肉を食べないのには理由がある。

南にある人間の都市が落ちている以上、アロークローは人の肉を口にしていると見て間違いない。そんな魔物を食べるということは、つまり……

まあ人も魔物も死ねば土に還る以上、そこはあまり気にしても仕方ない。人間でないメルクたちに言って変に気を遣わせるのも悪いだろう。まだまだ食糧事情は安定してないし。

「ともかく、南はもっと警戒態勢を厳重にしてもいいかもな。それとやっぱり」

俺は川に目を向けた。

「一度、南を見に行こうかな。そう遠くない場所に海があるはずだ。そこから、魔王軍の動きも見れるかも。だが、どれぐらいかかるか」

俺の言葉に、アスハが頷く。

「一度、私も川に沿って南へ飛んだことがあります。ここからだと、ヴァースブルグと同じぐらいの距離があります」

「おお、そうか。なら、船でも作って、一度海へ出るかな」

そう言うと、メルクが尻尾を振りながら言う。

「メルクも行く。しょっぱい水で満たされた場所」

「わ、私ももちろんヨシュア様をお守りするためにお供します!」

「私も今度は行きたい!」

イリアとメッテもすかさず言った。

三人とも海を見たことがないのか、興味津々といった様子だ。

「よし、なら明日か明後日にでも行こうか。海へ」

はいとイリアたちは元気よく返事をしてくれた。

魔王軍の動きを探る……だけでなく、エルフのモニカが話してくれた、水辺の亜人カッパについても調べたい。もし彼らとも協力できれば、もっとフェンデル同盟は安泰になる。

モニカによればカッパは昔、北のほうの川沿いに住んでいたらしい。だが最近は、めっきり見かけなくなったとか。

そのため、もっと北の川沿いか、南の海へ移動した可能性があるのだ。

ただ北にいけばいくほど、人間の多い土地だ。

となると、人が少ない南の海沿いの可能性のほうが、俺は高いと思う。

あるいはもう絶滅している可能性もありそうだが……

「ともかく、今日はまずパンだ。パン窯……の前にまずはあれを作らないと」

俺は強い風が吹く川沿いに目を向けるのだった。