軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第243話】ホッケハルンの決戦⑤ コラック攻防戦(下)

「矢が止んだ、、、?」

砦の門までもう少し、というところまで迫った第二騎士団。異変はそこで起きた。

先ほどまで降り注いでいた矢が、ピタリと止んだのである。

「矢が尽きた?」ニーズホックが塁壁を見れば、先ほどまでこちらを狙っていた弓兵が綺麗にいなくなっている。

これをどう判断するべきか?

そろそろ後方からの奇襲に注意するべきかしらね。

弓兵も砦内に下げて、私たちを挟撃する準備、それが一番しっくりくる。けれど、懸念もあった。肝心の遊軍が現れない。

仮に遊軍など存在せず、砦の中に総兵力を抱えているとすればどうか。いや、それなら弓兵を下げた意味が分からない。弓兵がいる方が圧倒的に有利なはず。

なら、本当に矢が尽きた?

これだけ用意していたロアが、矢の数の見込みを間違えるなどあるのだろうか?

一度、退いた方が良いかしら、、、

ニーズホックの中に迷いが生まれる。この戦い、最初からずっとロアに翻弄されっぱなしである。また何か企んでいるのでは、という気持ちが拭えない。

けれど砦からの矢の脅威がなくなった今、第二騎士団の先頭は多少なりとも進行速度を増し、城門にもう手が届くところまで進んでいた。

ここまで来たのなら押し切ってしまうべき。ニーズホックはそう思い直し、前線の様子を見守る。

城門の破壊には暫しの時を要したが、その間砦からの抵抗はない。拍子抜けするほど簡単に突破することに成功する。

「扉が開いたぞ!!」との声と、それに応じる歓声が轟いた。

そうしてコラックの砦に傾れ込む第二騎士団の兵士たち。

「?」

ニーズホックに再びの違和感。それでもこの身動きの取れぬ場所に立ちすくむよりは、砦に入ってしまった方がマシだ。止まることなく次々と砦に滑り込む。

そしてニーズホックは違和感の正体を知る。

「無人? どういうこと?」

砦の中には誰もおらず、ニーズホックを待っていたのは困惑する部下達ばかり。

一体これは、、、、ニーズホックが考えるよりも先に、事態は動いた。

最後方を付いてきていたレゾールが叫ぶ!

「後方より敵兵!! 数が、、、、数は5000、いや6000以上!!!」

その言葉を聞くに至りニーズホックは悟った。

「やられた、、、、これが、狙い」

第二騎士団は四方を槍の林と逆茂木によって囲まれ、満足に出陣もできぬ小さな砦に閉じ込められたのである。

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「上手くいったわね」

「うん」

ラピリアの言葉に僕は短く答える。

第二騎士団の侵入より少し前に、裏門から脱出した僕や弓兵達。

すぐに砦の外で出番を待っていた本隊と合流。ぐるりと迂回すると、ホックさん達が苦労して作った砦までの道を、封鎖するように布陣したのだ。

ここまで計画通りに進んでくれた。

そしてこの段階で勝負はついたと言って良い。

満足に出陣できない環境に閉じ込められた第二騎士団。残された選択肢は、馬から降りて砦に籠ることだけれど、砦にはもう戦う武器は何もない。

そして騎馬を降りた第二騎士団にはもはや、脅威を感じない。

それでも第二騎士団が砦を頼りに最後まで戦うというのなら、僕らも相応の被害を覚悟しなくてはならないけれど、、、、、

僕は、ホックさんの判断力と、そして決断を信じたい。

第二騎士団が囚われたコラックの砦を睨むことしばし。

「白旗、降伏ですね」

塁壁に立つ一人の兵士が、大きな白い旗を振るのが確認できた。

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こちらが白旗を確認した合図を送ると、少ししてホックさんとレゾールさんの2人だけが砦から出てこちらへやって来る。

僕らのそばまでやってきたホックさんは、すっきりとした顔で「参った。完敗よ」と改めて宣言。

「降伏を受け入れます」と答える僕に、

「さあ、じゃあ約束を守ってもらいましょ? アタシの首と引き換えに、第二騎士団の安全を保証してもらえるかしら」

ホックさんの言葉に僕は首を振る。

その様子を見て眉根を寄せるホックさん。

「約束を反故にするということ、、、、?」

「違いますよ。約束通り第二騎士団は僕が責任を持って面倒を見ます。ですが、その第二騎士団の中には、ホックさん、あなたも含まれます。言いましたよね、敵わないと思ったら、潔く降伏してくださいって」

第二騎士団の安全が確保できたことを確認したホックさんは再び表情を緩め、答える。

「アタシも言わなかった? アタシは必ず義理を果たすって」

「もう、十分にルシファルへの義理は果たしたんじゃないですか?」

「、、、、」

ホックさんは答えない。

そんな、僕とホックさんのやり取りを黙って聞いていたレゾールさんが、「あの、、、ロア殿にお願いがあるのですが、、、」と口を挟んできた。

「なんです?」

レゾールさんは、コラックの砦を指差して。

「負けておいてなんですが、あの砦、我々にくれませんか?」という。

レゾールさんの言葉に、きょとんとする一同。

最初に気づいたのはホックさん。

「レゾール、貴方、まさか、、、、”それで3つ目”を叶えたってことにするつもり?」

その言葉で僕も気づく。

かつて、ホックさんの言っていた魔人の約束。

ーーー「魔人は3つの願いを叶えることができる、でも、3つ目の願いを叶えると、魔人は対価を奪い去ってゆくわ。だから決して3つ目の願いを言ってはいけない。2つの願いで満足しなくてはいけないのよ」ーーーー

そしてこうも言っていた。

ーーー「魔人の約束はまだ後一つ、残ったまま」ーーー

僕は少し笑ってしまう。そうか、それが最後の願いだったのか。確かに”それ”なら、ホックさんの義理は果たせる。

突然笑い出した僕に、事情が分からない人たちは怪訝な顔をして、あの場に立ち会っていたウィックハルトと双子は「ああ、なるほど」と言って、こちらもやっぱり少し笑った。

僕はレゾールさんに向かって「流石ですね」と伝え、レゾールさんは「なんとかできないかと、ずっと考えていましたから」と頭を下げる。

僕は小さく頷くと、

「わかりました。コラックの砦は第二騎士団に引き渡します」そう、はっきりと告げた。

この瞬間、魔人の3つ目の願いは叶えられたのである。