軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第242話】ホッケハルンの決戦④ コラック攻防戦(上)

「さて、どう攻めようかしら?」

長柄槍の林を見ながらニーズホックは呟いた。

近づいてみれば、行手を遮っているのは長柄槍の林だけではない、地面を掘り返してあり、ボコボコと波打っている。実に騎馬隊泣かせの最悪な環境だ。

「当然遊軍もいるんでしょうね」ニーズホックの独り言にレゾールが応じる。

ここまで準備をしている以上、ロアが大人しく砦に籠っていることはあり得ない。こちらが進軍に悪戦苦闘しているところを背後から突くなんて、いかにもやりそうなことだ。

「そうねぇ。本当に厄介だわ」

「どうします。遊軍を警戒する部隊を出しますか?」

レゾールの提案にニーズホックは少し考える。常套手段であれば、部隊を出して周囲を警戒させるところだが、少々気にかかる部分もある。

ロアは当然こちらの動きを読んでいる。確か、コラックに入った第10騎士団は6000以上という報告だった。

第二騎士団は4000まではいない。ここで警戒部隊を出すとすれば、どれだけ出すか?

無難なのは1000ほどだろう。けれど、あの小さな砦にどれだけの兵士が籠っているか? 半分の3000? それとも、5000近く? 読み間違えれば、警戒に出した1000を無駄死にさせかねない。

全く、嫌なところに籠ってくれたものね。。。これが大きな砦なら、防衛のための兵士が一定数必要だ。ゆえに砦内の兵数を読みやすくなる。

ところがコラックの砦は本当に小さなものだ。守るだけなら1000や2000の兵がいれば十分事足りる。

けれど、 こちら(ニーズホック) にそう思わせて、砦への寄せ手を減らしたところで、砦の中に全軍で待ち伏せている可能性も否定できない。

「、、、、警戒の部隊は出さずに行きましょう」

「、、、宜しいので?」

「良くはないけれど、仕方がないと言ったところかしらね。砦の様子がわからない状況で、あまり兵を割りたくないわ。それに、ロアの遊軍がいたとしてもこちらが砦に集中していれば、いやでも出てくるでしょ。とにかく周辺の警戒は怠らずに、砦を目指す」

「畏まりました」

基本戦略が決まったところで、レゾールが各部隊へ通達してゆく。

そうして第二騎士団は、ゆっくりと砦へ侵攻し始めた。

ササールは槍の代用に使えるだけあって、しなやかで硬い。つまり、剣などで斬るのも難しく、手間でも一本一本抜いては捨て、抜いては捨てを繰り返しながら進むしかない。

業を煮やした兵士の一人が、腹立ち紛れに突き刺さるササールに槍をぶつけて弾き飛ばそうとしたが、反動のついたササールが跳ね返って馬に当たり、ちょっとした混乱を呼んだりしていた。

時間をかけて適当な距離までやって来たが、ここからは守備側の弓の射程。

塁壁にずらりと並んだ兵士から、弓矢の歓迎だ。

必然、第二騎士団は段々と固まるようにして盾の傘の下に隠れながら、ササールの林を処理して進まねばならない。

そうこうしているうちに、ロアのもう一つの罠が発動する。

「うわっ!」

先頭を進む一頭の馬が突然立ち上がり、兵士を振り落としたのだ。そしてすぐに「鉄でできた逆茂木が埋められている! 気をつけろ! 土が盛られた部分を踏むな!」との指示が飛ぶ。

本当にやってくれるわね、、、、

矢の雨を避けながら、徹底的な第二騎士団潰しの策に、ニーズホックはつい感心してしまうのだった。

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「第二騎士団、逆茂木の地帯に辿り着きました!」

伝令の言葉を聞いて、僕はふうと息を吐く。上手くいってくれた。

「しかし鉄製の逆茂木など、どうしたのだ? そんなものをこの砦で作っていたのか?」リヴォーテが興味深そうに聞いてくる。

「いや、ここで作ったわけではないですよ? ですが、そこは機密ということで」と僕は答えをはぐらかす。

これはレイズ様の館の倉庫に眠っていた、移動式の逆茂木だ。

僕は遺跡で第二騎士団と決別した段階で、この逆茂木のことを思いだし、何かに使えるのではないかと考えていた。

そのため、王都へ先行するネルフィアに頼んで、密かに運び出してもらっておいたのだ。

持ち出した逆茂木はそこそこ場所を取るため、仮置きに選ばれたのがこのコラックの砦だった。

もちろんそこまで数があるわけではないので、こうして土を掘り返して、盛り土で逆茂木を隠すことで、どこに逆茂木があるのか分からなくしたのである。

ホックさん達は逆茂木がいくつあるかわかっていない。どうしても土が盛られたところは避けながらの進軍になる。そうなれば、、、、僕は司令部に定めた場所から再び塁壁の上に上がる。

第二騎士団は段々と、蛇が進むように蛇行した一つの列になりつつあった。

「、、、そろそろですか?」僕と同じ光景を見ていたウィックハルトが聞く。

「そうだね、、、、もう少しだけこのままで。引き続き弓兵には人ではなくて馬を狙うか、なるべく威嚇に留めるように指示を」

「はっ!」

、、、、ここまではほぼ狙い通りに進んでいる。あとは、ホックさん次第だ。

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これは思ったよりもまずい。

ニーズホックは苦虫を噛み潰す。槍の林だけならともかく、逆茂木のせいで真っ直ぐに進めない。加えて矢の雨。部隊が広く展開できない。今、後ろから襲われたら砦との挟撃もあり得る。

ただ、この状況でもニーズホックはまだ勝機はあると踏んでいた。状況を一転させるのは、ロアの遊軍の登場。兵の数はともかく、遊軍が存在するのは間違いない。そいつらが顔を出した時が好機。

第二騎士団の最後尾には、あえてレゾールの率いる部隊を置いた。ニーズホックが手塩にかけた部隊の中でも、最強と言って良い一団だ。

遊軍が現れれば、全軍を反転一気、遊軍との野戦に持ち込み撃破。相手の策を潰してから、あとはじっくり砦を攻めれば良いのだ。

ロア、槍の林は面白い策だけど、自分の首を絞めたわね。

遊軍と第二騎士団が野戦になれば、当然砦から挟撃の兵が出るだろう。けれど、自らが作った林が邪魔をする。砦からの救援がもたつけば、第二騎士団の独擅場だ。たとえ第10騎士団であっても、馬上での野戦ならニーズホックの作り上げた精鋭の騎馬隊には敵わない。

耐えるのはそれまで。

矢の雨にさらされながら徐々に前進する第二騎士団を見ながら、ニーズホックはただその時を待っていた。