軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第237話】四たび、あの店で。

どうしてこうなったのだろう?

「第10騎士団も新しくなったことだし、少しは息抜きしない?」

そんなラピリアの提案に乗って、決起集会、、、と言うには大袈裟だけど、ささやかながら気の置けない仲間たちで久しぶりにお酒を楽しもうとしたのが、そもそもの始まり。

ついでにシャリスやグリーズさんも誘って、仲を深めよう。そんな計画だった。

会場はいつものトランザの宿。けれど一つ問題が。

今までは衝立で隠すなどの配慮をしてもらっていたのだけど、いよいよ人数が多くなってきて隠し切れる状況ではなくなってきたのだ。

そこでサザビーが宿と交渉の末、その日の食堂を貸切としてくれたのである。

本来なら宿泊客も利用する食堂を貸し切ると言うことで、当日の宿泊客には部屋まで食事を持って行くと言うから少々申し訳ない。

雲行きがおかしくなったのは、ルファが「せっかくだからシャンダル君の歓迎会もしようよ」と言い出したあたり。

本人に伝えると乗り気だったので、こちらとしても歓迎だ。シャンダルの参加に伴って「貴殿らを信用していないわけではないが、私も立ち会わせてほしい」と希望したのはフランクルト。

フランクルトはルデクへ亡命した身ではあるけれど、今回の一件でゴルベルとの窓口に納まりつつある。

シーベルト王から息子を頼むと託された手前、責務を果たそうと言うのだろう。

今回はフランクルトも大いに活躍したところだし、こちらとしても労いたいところだ。

そうして次に「私も参加したい! 貸切なら問題ないはず!」と主張したのはゼランド王子だ。明らかにルファに誘われたシャンダルに対抗しての名乗りである。

まあ、確かにゼランド王子は以前にもトランザの宿で食事を楽しんだことがあるし、王さえ許可すれば問題ないと言えばない。

そんなゼランド王子を羨ましそうに指を咥えて見ている、巨漢のおじいちゃん。

、、、、ザックハート様も良ければいかがですか?

話はこれだけでは終わらない。

「同じ盟友国なのに、ゴルベルだけ贔屓するのはどうかと思うぞ」と絡んできたのはエンダランド翁。どこから聞きつけたかと思えば、双子がわざわざ翁のところへ行って自慢したらしい。無駄に仲良しだな。

まあ、こんなことで国交に傷がつくのは良くない。希望するなら止めはしません。

「エンダランド様だけそんな場所へ行かせる事はできん!」と残念長髪メガネが言うので、以下略。

と今度は「ロア、せっかくだから第10騎士団の部隊長同士の親交も深めるべきではないか?」とヴィオラさんが言ってきて、、、、ああもう、好きにして!

「一つだけ条件があります。トランザの宿では上下関係なし! 立場をかざすような事があったら、誰であっても追い出しますよ!」

僕が開き直ってそのように宣言するも辞退する者はおらず、こうして予期せぬ大宴会へと傾れ込むのであった。

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「それじゃあ、伝えた通り今日は上下関係は無し! あと喧嘩もダメ! みんなで楽しく飲みましょう!」

僕の挨拶の後は、早々に様々な場所で珍しい組み合わせで言葉を交わし合っている。

ルファの周りに関してはザックハート様とゼランド王子とシャンダルなので、大体いつもの通りであるけれど、それに加えてグリーズさんが加わっていた。グリーズさんはザックハート様に話を聞きに行ったところで巻き込まれた形。

「おいフレ助、それにリヴォ太郎、酒が足りん」

「早く持ってこい」

「「だから変なあだ名で呼ぶなと言ったろう!!」」

一言一句シンクロしたフレインとリヴォーテ。お互い、もしかしてお前も? と言う視線を交わして妙な連帯感を醸し出していた。

「そもそも何でお前らの酒を俺が持ってこなければならんのだ?」

「自分で持ってこい」

フレインとリヴォーテが拒否すると

「今日は新顔の歓迎会だろう」

「ならば主役は私たちのはずだ」

と高らかに宣言する。いや、双子は配属前から僕の部屋に入り浸っていたので、第10騎士団の面々もよく知っている。特に君たちの歓迎会という考えはなかったなぁ。

エンダランド翁は第10騎士団の部隊長たちと歓談中。シャリスも一緒だ。うんうん。ここは安心して見ていられるな。

ちなみにネルフィアとサザビーは、遅れてくるとの連絡があった。

会場の各所で盛り上りを見せており、それと同時にすごい勢いで酒と料理がなくなってゆく。スールちゃんをはじめ、給仕の娘さんたちは大忙しだ。

スールちゃんが僕の元へお酒を持ってきてくれた機を見計らって「騒がしくてごめんね」と謝っておく。

「いえ、これだけ食べて飲んでくれると、宿としては大助かりですよ! それにしても第10騎士団の皆さんは賑やかですね!」と笑顔で答えてくれた。

宿の看板娘さんであるスールちゃんを始め、宿屋の関係者は全員、ここにいるのは第10騎士団の関係者だと思っている。関係者という意味では間違ってもいないので、そのままにしてある。

実際のところ今この場所には、この国の王子と、ゴルベルの王子と、帝国の重鎮も混ざっていますと伝えたらどうなるかなと思った。

よくよく考えたら、前にこのお店には帝国の皇子とその妻を連れてきたこともあったのだ。ルデクで最も要人を歓待した食堂であることは間違いない。

途中まで一緒にいたラピリアがルファに連れて行かれたり、意外に酒に弱くて早々に酔っ払ったリヴォーテに絡まれたウィックハルトが拉致られたりして、偶然僕が一人でテーブルに残ったタイミングがあった。

そんな僕に「やっておるな」と後ろから声をかけてきた人がいる。

誰だろう? そう思って振り向けば、そこにいたのはルデク王国今代の王、ゼウラシア王その人。

「ゼウラシア王!?」

僕が驚いて大声を上げれば、みんなもびっくりして喧騒が止まる。

そんな僕らを見てゼウラシア王は手を挙げる。

「構わずそのまま続けてくれ。今日は上下関係はないのだろう」

そんな風に言う王に、ゼランド王子が「まさか父上も参加されるのですか?」と声をかける。

「そうだ。と言いたいところだが、流石に私がいては気を遣わせるからな。どんな様子か見にきたのと、祝いの酒を持ってきた。皆で飲んでくれ」

そのように宣言すると、ネルフィアとサザビーに続いて、兵士が酒の入った箱を持ち込んでくる。

「さすが王! 太っ腹だな!」

「遠慮なくいただこう!」

ブレない双子に感心しつつも、「それではゆっくりと楽しむが良い」と言い残して帰る王を見送る。

後日、トランザの宿に王がやってきた顛末は、ルデクトラドの市民の間でちょっとした話題になった。

のちに「トランザのように」という言葉が、「今日は上下関係は気にせずに楽しもう」の意味で使われ始めるのは、もう少し後のお話である。