軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【第236話】継ぐ者

バリン!

何かが投げつけられて砕ける音がする。

「ルシファル様はどうされたと言うのだ?」ベリアルが困惑の声を漏らす。

側近たちであっても初めて見る荒れ様だ、みなルシファルの籠る部屋を遠巻きに眺めるばかり。

「やはり、レイズに良いようにやられたことが悔しかったのではないだろうか?」別の側近が口にしながら、自分でも納得がいかぬように首を傾げる。

確かに手負いのレイズに散々翻弄された。しかし、我々にとってはようやく届いた朗報であったはずだ。

レイズ=シュタインの死

それが正式に王都から発表された。

それに伴い第10騎士団の新体制が発布され、第一騎士団に届いたのが先ほどのこと。密偵からの報告を聞いたルシファルは、「少し一人にしてほしい」と人払いを望み、その後、この荒れようであった。

ただでさえ第一騎士団の空気は良くない。原因は一向に動こうとしない帝国にあった。

ルシファルは、時間をかければかけるほどルデクは不利になる、と余裕を見せていた。

リフレアはその通りだが、第一騎士団の立場からすれば、時間がかかるほどにリフレアからの価値が下がってゆく。

どうも情報が制限されているようだが、リフレアの使者が帝都で拘束されているという噂も流れている。同時に、帝都で大陸十弓が腕比べをして、そのうちの一人が蒼弓だった、などという話も。

荒唐無稽な噂ではあるが、もしも本当にウィックハルトが帝都にいたのなら、ルデクと帝国の間で何かしらの交渉が行われた可能性もある。

さらに、ここまで密に連絡を取ってきたリフレアの軍師、サクリからの連絡がパタリと途絶えていることも気になった。

「いや、ここのところお疲れであったんだろう。何、レイズが死んだ以上、我々の有利はいよいよ動かぬ。今から出陣が楽しみぞ!」自分に言い聞かせるように話すベリアル。周辺からも中途半端な笑いが溢れる。

そんな会話の間も、彼らは一様にルシファルが一人籠る部屋を見つめていた。

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「うむ。こんなところだろうな。第10騎士団の編成はこれで良い」

無事にゼウラシア王の承認を得て、第10騎士団の陣容は決まった。

「ゼランド、シャンダル、編成会議に立ち合った感想は如何であった?」

王は2人の若者に話を振る。

「勉強になりました。新参であっても適材と思えば果断に要職へ引き上げたこと、私も見習いたいと思います」とゼランド王子。

「うむ。だが、誰でも信用すれば良いと言うものではない。そうだな? ロア」

「ええ。シャリスを中隊長にするにあたっては、様々な人の意見を聞きました。その上で信用できるのではないかと判断したんです」

「ロアの言う通りである。多様な情報を集め、それらを正しく取捨選択してこそ、決断ができると言うことを心得ておけ」

「はい!」

「シャンダルはどうであった?」

「私は、ロア様が将たちから信用されているのがすごいと思いました」まだ顔に幼さの残るシャンダルも、ちゃんとした意見にしようと、言葉を選びながら答える。

「そうか。信用は一朝一夕で得られるものではない。ロアがこれまで数々の功績を積み上げてきたからこそのものだ」

「はい。部隊長の方もそう言っていました。私もたくさんの功績を積みたいと思います」

2人の感想を満足げに聞いた王は、「ご苦労であった。2人は下がれ」と王子たちに退出を促す。

残ったのは、僕とウィックハルトにラピリア。それにネルフィア。

「では、予定通りレイズの件を発表し、同時に第10騎士団の編成についても発布する。変更はないな?」

王の言葉に僕らは頷く。この辺りは事前に話し合っておいたことだ。

「その前に、ロア、お前を貴族格に上げる」

「はい」

これは初耳だったけれど、第10騎士団を預かる上で必要な儀式だろう。別に肩書きがあったところで僕のやることは変わらないので、特に拒否するつもりもない。

少し前だったら、目立つことでやっかみを受けることを避けるために遠慮するところだけど、ここから先は足を引っ張る者がいたら、自分で蹴り落とす覚悟だ。今の僕と仲間たちなら、それができる。

「家名は好きに名乗れるものではない事は知っているな?」

「、、、、初めて知りました」

なんとなく、好きな家名を自分で勝手に名乗るのかと思っていた。

王は少し苦笑してから

「貴族における家名とは重要なものだ。ゆえに、新たに貴族格になる場合は、すでに絶えた家から選ぶこととなる。ネルフィア、一覧を」

「はい」

ネルフィアから僕に一覧が手渡される。

そこにずらりと並ぶ家名。

「、、、、、この中から選べば良いのですか?」

「そうだ」

なら、僕の選ぶ家名は決まっているようなものだ。僕は迷いなくその名を口にする。

「、、、、、そうか。分かった。では、あとは後日、就任式で家名も授ける。今日はここまでだ。ご苦労だった」

僕らが退出しても、ネルフィアは一人残っていた。

「あの家名の因縁を、お教えしなくてよろしいのですか?」

ネルフィアは聞く。

「必要なかろう。元々偶然のような因縁だ。尤も、ルシファルは不快に思うだろうがな」

王は少しだけ口角を上げた。

「良い挑発にはなりますね」ネルフィアもそれだけ言って、その会話は終わった。

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最初に聞いた時は耳を疑った。それでも取り乱さずに人払いを行なった自分を褒めてやりたいくらいだ。

ルシファル=ベラスの実家、ベラス家には不倶戴天とも言える政敵がいた。ルシファルも幼い頃から呪詛のようにその家のことを聞き続けたものだ。

ルシファルの祖父が、ありとあらゆる策謀を巡らせ、ようやく潰えさせた家。

「なぜ、私の前に現れる」

かつてあの男がそれを名乗った時、ルシファルには何か運命めいたものを感じずにはいられなかったし、結果的に見ればそれは正しかったように思う。

頭を抱えるルシファルの前に、あの男の幻影が見えたように思えて、思わず近くにあった花瓶を掴んで投げつける。

そうだ、亡霊だ。

叩き潰してもまた現れる、亡霊。

根絶やしにしなければ。。。。俺のために。ベラス家のために。

シュタイン家を。

ルシファルにもたらされた第10騎士団の新たな指揮官。

そこには「ロア=シュタイン」の名前が、はっきりと記されていたのである。