軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

186 番外編 外からのお客様(1)

ガタゴトと、馬車が近付いてくる音がした。

村人たちが顔をあげる。

アセリアが顔をあげると、茶色の馬車がこちらに向かってくるのが見えた。

ファエンの馬車ではない。商人の馬車でもなければ、家紋もない。

ただの馬車だと言ってもよかった。

その馬車は村の中に入っていくと、広場まできてそこで止まった。

タン、タン。

小気味良い音を立て中から出てきたのは、一人の男性と、一人の若い女性だった。

見たところ、どうやら二人は親子のようだ。

家から出てきた村長と何やら話し、「オウ!」と驚いているようだった。

どうやら会話が通じるか尋ねていたようですわね。あの言葉は、西側の国々で使われているものですわ。

その言葉は、この国の言葉の体系が違うもので、ここでは通じることがない。

アセリアも、ある程度の言葉を覚えるのに苦労したものだった。

「“どうしましたの?”」

その言葉で尋ねる。

「オウ!」

その男は両手をあげ、また驚いてみせた。

驚くのが当たり前の人なのか、文化的なものか。

その男はこう続けた。

「“宿はどこですか?”」

「“この村には、宿はありませんわ”」

素直にそう答えた。

実際、この村には店舗らしきものはない。

男はまた大袈裟に驚いてみせた。

話を聞いてみると、その二人はどうやら親子であるらしい。

「“パパ、あっちの方に行ってもいい?”」

「”パパ、この村には何もないと思うわ“」

父親の方は、どうやら地質学者であるらしく、

「“この辺りにも、地質学的には大切なんだよ”」

と返事をすることが多かった。

チョイチョイっと村長がアセリアを呼ぶ。

「彼ら、なんだって?」

「そうですわね、地質調査をしにきたらしいですわ」

アセリアも、地質学というものが何をするものなのかは詳しくは知らない。

親子は、見たところ貴族でもなさそうだし、お金持ちの一般市民だろう。これも、橋が直った副作用と言えた。この村にも、客が来るようになるということだ。

それで、その村にやって来たお客さんの言うことには。

「”案内はあの人がいいわ!“』

と言った先に立っていたのは、ハルムだった。

なんですのなんですの!?それはさすがによくありませんわ!だって、わたくしのハルムですもの!

ハルムにあのお年頃の女の子の案内役をさせるつもりはない。

アセリアは、その娘の耳元に行き、寄って行ってこう囁いた。

「“あの人はダメですわ。あのひとはわたくしの……『夫』なのですもの”」

別に、結婚した覚えはないのだけれど。

周りに言葉は通じないはずだった。

だからアセリアはいつもよりも、少し大胆なことを言ったのだ。

「“あら、そうなのね!じゃあ仕方ないわね。他の人を案内役につけてくださる?”」