軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

168 劇が始まりましたわ(1)

すっかり空が暗くなった頃、子供たちの劇が始まる。

この劇が終われば、子供たちは退場。

その区切りとして劇がこの時間になったというわけだ。

退場した後には、子供たちは広場脇の家にしつらえられたベッドルームで一緒に寝ることになっている。

それからあとは、広場で大人たちが酒でのんびりする時間だ。

舞台の上には、子供たちが並んで立っている。

前に立っているのは乙女役のミルデとユニコーン役のセインだ。

「そこは聖なる森の中」

劇が始まる。

広場は、それまでとは打って変わって、しんと静まり返っていた。

誰もが、その劇をじっと眺めている。

今日という日の余韻を味わうように。

「乙女は森に迷い込み、帰り道がわからなくなっていた」

子供たちの晴れ姿に、もうすでに目が潤んでいる大人たちもいるようだ。

「痛っ……怪我をしてしまったみたい……」

ミルデが転んで見せ、足をさする。

それは、小道具も舞台演出も、そういったものはない会話劇のようなものだった。

そもそもアセリアも子供たちも、実際劇というのがどういうものかはハッキリとは知らなかったのだ。

「お嬢さん、困っているの?」

セインが静かに言葉を発する。

劇というものを知らなくても、その劇は確かに劇だった。

「そうなの」

「いいよ。おいで。君の家はこっちだ」

みんなが物語に入り込み、その舞台から目を離すことができなかった。

その舞台は誰かの涙を誘い、そして、

「精霊は、火の精霊、力の精霊、かわいいの精霊、猫の精霊、そしてドラゴンだ」

笑いを誘った。

「なんだそりゃ!」

「ソフテかわいーい!」

乙女は、助けてくれた誰かがユニコーンとは知らず、また森へやって来る。

「ねぇ、あの子また来たんじゃなあい?」

「ガオ、ガオガオガオ」

「でも今度は迷子ってわけじゃなさそうだな」

「……僕にはもう関係ないよ」

「会わないのか?」

「会わないよ。興味本位で近づいてくる人間は山程いるんだ。君たちも、会ってはいけないよ」

「にゃあん」

何度も乙女が森へ足を運ぶうち、ユニコーンが見つかってしまう。

けれどそれというのも、ユニコーンが必ず乙女を見守ろうと、そばに居たからだ。

「……あなたなの?」

「何かあった?」

「あなたに。会いに来たのよ。姿を現して」

「ごめん。悪いけど、君の前に姿を現すことはできない」

「そうなの。でもそれでもいいわ。こういう時は物語では、隣の国の王子か泉の精霊だって、相場が決まっているもの」

「仕方のないお嬢さん。少し話したら、すぐに行くんだよ?」

「ええ。もちろん」

そんなふうに、二人の距離は近づいた。

けれどそんな幸せも、長くは続かなかったのである。

「ねえ!お父様が言うの!この森にはユニコーンが住んでるって。ユニコーンの角は、毒にも病気にも効くから、凄く高く売れるんですって。狩りの案内をするために、私ここに来てるんじゃないわ!」

「ユニコーンなんて、この森にいるもんか。でもそんな危険な地域になるというなら、もう君もここに来てはいけないよ」