作品タイトル不明
165 盛り上がってますわね!
たくさんの出し物があった。
少年たちが、ただ「わーっ!」と叫ぶ声の大きさを競い合ったり、そこへ小さな子供たちまで乗り込んで舞台が落ちそうな子供たちで一杯になり、おおわらわになったりした。
ただ、舞台の上でボードゲームを競い合う姿を観るものもあったし、お婆さんたちの滑らかなダンスもあった。
ハルムはアセリアと共に広場を動き回り、ある時は勝手に膨らみ、ある時は勝手に発生している出し物をなんとか回そうと躍起になっていた。
「アセリアちゃん、これどこに置くんだい?」
「食事はウィンリーにおまかせしてありますわ。先ほどレアクさんのところにいらっしゃいましたけど」
「あいよー」
二人が村長の家の前に戻ってきた時には、すっかりへとへとだった。
確保していたクッションの上に二人で座り込む。
「大変ですわね。夜会より大変な部分もありますわ」
ふとそんなこと口にした。
夜会は招待客がどこのどんな人間で、何を成したのか把握しなくてはならなかった。
それに加えてドレスの色が被ってはいけないとか、言語や文化にも気を配らなくてはならないとか、決まりはたくさんあった。
けれど、流石に招待客はこれほど多くはない。
これほど突然誰かが舞台に上がることも、演目自体が自然発生することもなかった。
「大変さが違いますね」
ハルムが笑いながら、ふっと息をつく。
おかしいですわ。
今までも夜会やお茶会でハルムと動いたことは何度もありますのに。
これほどハルムの顔を見たのは、初めてな気がしますわね。
アセリアが辺りを見渡すと、夕陽の中で広場の周りに取り付けたランプに火が灯されたところだった。
目の前がオレンジ色に染まることで、思いの外空が暗くなっていたことに気付く。
その、徐々に明るくなる広場の姿に、人々は感嘆の声を上げる。
それは、アセリアも例外ではなかった。
「ああ、とても美しいですわ」
その呟きに呼応するように、ハルムが、
「そうですね」
といつになく目をみはる。
楽隊が、音を鳴らしだす。
たくさんの食事や酒が、ランプの灯りの中で美味しそうに色づいている。
「かんぱーい」
今日何度目になるかわからない乾杯の声が、そこら中から沸き上がる。
「すごーい!」
子供たちの声が、華やかに広場を彩る。
「大変ですけれど、これは、やってよかったですわね」
「はい」
アセリアがハルムの方を見ると、ハルムと目が合った。
そこでやっと見られていたことに気付き、ドギマギと目を逸らす。
「来年も楽しみですね」
ハルムがそう言うので、胸が躍ってしまう。
「ええ。来年も」
そんなことをあまりにも当たり前みたいに言うものだから。
来年も一緒にいるのだと、そう確信した。