作品タイトル不明
161 準備が進みますわね!
「じゃあ、この倉庫にお願いしますわ」
そう言うと、男性たちが意気込んで、
「おう!」
と大きな声を上げた。
今日はファエンが手に入れて来てくれたものを、倉庫に保管する日だった。
村の男性たちが意気込んでいるのは、ファエンが持って来たものの中に、お目当てのものがあるから。
収穫祭のためのお酒だ。
村でもお酒は作っているらしい。
けれどそれはレアクが中心になって作った果実酒で、それほどたくさんあるわけではない。
今回は、お祭ということで、アセリアは5つの樽にたくさん入ったお酒を振る舞うことにしたのだ。
「たくさんありますわね」
「ああ。甘いものもな」
と言って取り出したのは、砂糖の入った壺だ。
「あら……!よくこんな高級品、手に入れる方が大変ですのに」
「ケーキでもなんでもるくるんじゃないかと思ってな」
アセリアはその言葉に微笑む。
「子供たちがよろこびますわ」
「アセリアちゃん」
倉庫の入口で声をかけてきたのは。バルドだった。
「お疲れ様ですわ」
「ああ。ここまでやっちゃうなんて、すごいよ」
「たいしたことはありませんわ」
「毎年、出来るといいよね」
バルドが、言う。
毎年収穫祭を。
もうすでに、広場は出来ているのだから、これほどお金もかからない。
いけるんじゃないだろうか。
毎年。
「ええ。きっと出来ますわ」
未来を想う。
悪くない気分だ。
その時、倉庫の中へ、ハルムが入って来た。
アセリアを見て、一瞬、立ち止まる。
「ハルム」
ハルムがバルドを見る。それから、アセリアを見た。
「お嬢様。そろそろ帰りませんか?作業はこれで終わりです」
「ええ、もちろ……」
言い終わる前に、ハルムがズカズカと歩いて来て、アセリアの背を押し、促して来た。
バルドとの間を邪魔するように。
アセリアは、その手に促され、そのまま歩き出す。
とてとてとて、と三歩歩いたところで、バルドの方へ向き直った。
「あ、おつかれさまでしたわ」
取ってつけたような挨拶に、バルドが苦笑した。
「ああ。また」
歩いて家へと戻る。
なぜかハルムは、速足だった。
スタスタとついて行っていたアセリアだったけれど、村はずれまできたところで、結局呼び止める羽目になる。
「ハルム!」
声を出しただけで、ハルムの足がぴたりと止まる。
やっととまったハルムと、目が合った。
「早すぎますわ」
立ったまま向かい合う。
ハルムが、ちょっと悲しそうな目でアセリアを見た。
……何ですかしら。
「最近、」
小さな声が、ハルムの唇から漏れ出る。
最近?
次の言葉を待つ。
けれど、ハルムが次に口にしたのは、その言葉の続きではなかった。
「すみません、遅くしますね」
「……ええ」
ハルムと目が合ったままだ。
どうして少し悲しそうなんですの?
ハルムが目を逸らして、また前を歩き始めた。
その背中を眺める。
……どうしたっていいますの?