軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

159 現実と想像の間で

ハルムが作業や話し合いで村長の家にいると、目に入るものがあった。

窓の外に、アセリアとバルドが見える。

二人で話している。

何を?

俺の心の中はここのところ、“もしかして”ばかりだ。

もしかして、アセリアが好きなのはアイツなんじゃないか?

もしかして、それで事あるごとにそばにいるのでは。

いや、それはないか。

けど、もしかして。

それは考えすぎか?

誰だ?なんて考える。

そんな時はいつだって、アセリアがバルドと二人でいるのが見える。

アセリアは、元公爵令嬢だ。それも、長年王子の婚約者だった。

何もない相手と二人きりになるのを、嫌悪する。

じゃあ、バルドと今二人でいるのはなんなんだ?

俺は執事だから。世話をする家具のようなものだから。

じゃあ、バルドは?

いつだって、わからなくなるのだ。

もしかして。もしかして。

じゃなかったらいったい、どうしてこう連日二人でいることになるのか。何の話をしているのか。

だって俺は、何を話しているのか聞かされてないから。

そんなことを思い、また憂鬱になる。

そんな気持ちを抱えながら家に帰ると、やはりまた心の中が騒がしくなる。

コトコトと、台所でスープを作っていると、アセリアが隣に寄ってくる。

「美味しそうな匂いですわね」

隣に立ったときの触れそうな距離は、最近いつになく近いと思う。

以前はこんなに近くはなかった。

腕をほんの少し動かしたら掴まえられてしまいそうな、こんなに近くは。

「芋を入れました。本当は、冬越しのために倉庫に入れておくものですが、味をみるために食べてみるようにと、一つオタルさんがくれたんです。甘いらしいですよ」

「いいですわね」

アセリアが、鍋を覗き込み、そしてこちらを向いて笑う。

こんなとき、やはりまた、“もしかして”なんて思う。

アセリアがそばにいたいのは、俺なんじゃないか、と。

それは調子に乗りすぎか?

それとも、現実にあるかもしれないこととして、期待してしまってもいいことだろうか。

期待はしたくない。

けど、期待しないままでいることも出来なかった。

もしそうなら。

もしそうなら、その身体を捕まえて、離さずに済むのに。

手を伸ばせば届きそうな距離なのに。

手を伸ばすと壊れてしまうことが多すぎる。

早く冬になってしまえばいい。

そうすれば家に籠る日も増えるだろう。

二人で家にいるのは、幸せだろうな。

「あれを渡しておきますね」

とベッドに置いておいた上着をアセリアに見せる。

「ウールの外套だそうですよ」

「あら、綺麗ですわね」

それは、真っ赤な色の外套だった。

遠くからでも確認しやすい色がいいとかで、商人が手に入れてきたものだった。

俺は、アセリアに外套を羽織らせる。

スルリと腕を通す。

「いかがですか」

「ええ、これなら温かいですわ」

アセリアが笑顔を見せる度、どうしても心臓が高鳴る。

改めて思う。

俺がそばにいたいのはこの子なのだと。

自分を抑えつけてでも。

一生そばで支えなくてはと、そう思ったのはこの子なのだと。