作品タイトル不明
157 秋ですわね!
葉が落ちる。
村は、すっかり秋の風景になっていた。
「これが秋、ですのね」
感慨深く辺りを見渡す。
「そのようですね」
アセリアの隣に座っているのはハルムだ。
それぞれの作業の合間に、落ちあって昼食を食べていた。
二人とも、秋を知らなかった。
王都にも、もちろん秋はある。
けれどそれは、落ち葉が落ちることや、旬の食材があること、自分たちの冬支度をすることなどの意味はなかった。
王都にももちろん木はあるけれど、管理された木ばかりで、あまり落ち葉を見た覚えがない。
そもそも、景色を見ながらのんびり街を歩いた覚えもない。
王都の秋といえば、どのデザイナーがどんな新作ドレスを出しただの、どの地方がどんな名産品を作っただの、どんな防寒具をどの孤児院に買うかだの、そんな意味合いを持っていた。
二人とも、秋の景色を見るのは初めてだった。
「葉は落ちるものですのね」
「森も、今は落ち葉だらけでしょうね」
「では、リーフも落ち葉に埋もれてしまいますわね」
「冬はずんぐりした体型になるらしいので、落ち葉に埋もれながらのそのそと歩くんでしょうね」
それを聞いて、アセリアはむくむくの茶色い塊がモゾモゾ動いている姿を想像し、クスクスと笑った。
村へ戻ると、広場で薬師のレアクと橋造りをしていた棟梁が椅子に座ってのんびりと話し込んでいた。
「いやぁ〜、めでたいめでたい」
すでに酔っているのか、棟梁の声は音量が大きい。
何がめでたいのかといえば。そう、橋が完成したのだ。
「ようハルム」
棟梁がハルムに声をかける。ハルムも、今まで村の代表として頑張ってやってきてくれた。
「酒飲めや〜」
「いえ、私は結構です」
「ごきげんよう、棟梁のおじさま」
素直なカーテシーで挨拶をすると、棟梁が、
「アセリアちゃん!いい橋だぜ〜」
とにこやかに笑う。
「ええ。そのようですわね。これで……、イチゴを売りにいけますわ」
やっとだ。
まだ、スタートラインにつけるようになっただけだけれど、大きな一歩には違いなかった。
川を渡れば小さな村がある。
さらに大きな湖を回り込めば、観光地となっている大きな町がある。
そこまで手を伸ばせれば、この村の収入も安定してくるだろう。
「お祝いいたしませんと。もうすぐ、収穫祭をこの広場で行いますの。そこで、一緒にお祝いしてもよろしいですかしら?」
そう提案すると、棟梁の目がキラキラと輝いた。
「そりゃあ、ありがたいねえ!」
棟梁が、自慢げに鼻をこする。
「ふふふん。まあ、まだ発つつもりもないからなぁ」
そしてまた、嬉しそうに木でできたジョッキを持ち上げ、腹に酒を流し込むのだった。