軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23 ちょっと待った

「国王陛下、並びに王妃様のお考えとしては……婚約解消の提案を受け入れてくださると?」

「ああ、婚約の破棄ではなく解消が望みなのだろう?」

私はこくりと頷いた。お父様もだ。

「婚約とアレクシス殿下に思うところはあれど、王家と強く対立する気はありません。虫のいい話だと思いますが」

「いいや、そんなことはない。我々としてはオードファラン家からのその提案を受け入れるつもりだ。もうアレクシスが問題のある行動をして、良くない状況になってから随分経つからな……」

陛下も王妃様も、婚約解消に協力的。

考えられるパターンの中でも、これは最良のパターンだろう。

だいたい、こういうのは王族の誰かが悪役令嬢にとって不都合な相手だったりするから。

あっさりと私たちの婚約は解消される。

お父様だって反対していない。

ならば、これでゲームの流れから、破滅フラグからは解放される?

なんとまぁ運のいい転生だ。

「…………」

しかし、しかしである。ならばこそ今の私には余裕があるということ。

陛下、王妃様、公爵であるお父様が私の味方といえる。

はたして、このままでいいものか。

「宰相閣下、閣下はどう思われますか? 穏便な解消といえど、王家と公爵家の縁組が破談になるならば、その影響は大きいと思います。閣下のご子息であられるフィリップ様もその影響を受けるでしょう」

ちなみに今言ったようにフィリップ様のお父様が宰相閣下だ。

これもあるある。

フィリップ様と同じ青色の髪のナイスミドル。

「元より現状に至った時点で対処能力がない無能です。失敗が誰にでもあり、まだ学生の内だからと再度の機会を与えるのは吝かではないですが……。今回の件、ただの失敗といえるとは思えません。長期に渡り、第一王子がその婚約者を愚弄する形になったのを諫めなかったのです。はたして、そんなことさえ出来ない、分からない者に、若気の至りだの、些細な失敗などの評価をすべきかどうか」

辛口ねぇ。これは相当、ご子息にお怒りだった様子。

「では、宰相の判断としてはやはり私と殿下の婚約解消には反対しないと?」

「ええ、オードファラン嬢。幸い、王家には優秀な第二王子殿下もいらっしゃいます」

あらまぁ。これ、私たちがどうこう以前にけっこう厳しめに評価されていたみたい?

それもあるあるなのよね。

おかしくなっているのは学生たち、攻略対象たちだけだという。

恋は人を愚かにさせるのね、ちゃんちゃん。

……でも。

「ならばいいな? オードファラン公爵。アレクシスとマリアンヌの婚約を──」

「少々お待ちいただけますか、陛下」

私は陛下の宣言を遮った。

公の場では出来ない、不敬な振る舞いである。

「何か他に求めることがあるか? マリアンヌ」

陛下が受け入れてくださったのは穏便な解決だから。

これが婚約破棄で慰謝料がどうのという完全な有責を相手に求めるのなら、もう少し考え直すだろう。

穏便な解消でも、後に手厚い対応をしてくれる可能性もあるが……。

基本は放置し、公爵家で私の今後は勝手に考えてくれ、というところ。

別に私はそれでもいいと思っている。

親の愛情に甘えているだけかもしれないけど。

ただ、ここまで私にとって条件のいい状態ならば、だ。

破滅フラグからただただ逃げるだけに終わるのもどうかと思う。

私にはさらに踏み込む余裕がある。

パターンでいうとかなり後回しに考えていたものだ。

もっと王家が私にとって敵対的であるという最悪なのを想定していたからね。

でも、完全に味方というパターンも考えていなくはなかった。

ここからは、そちらに向かうとしよう。

「……陛下、王妃様、宰相閣下。そしてお父様。今から私は、ある告白をせねばなりません。それは到底信じられないこと。しかし公爵令嬢として誓います。けして嘘は吐かないと」

私がそう切り出すと皆、怪訝な顔をする。

何を言い出すつもりかと。私は深呼吸してから続けた。

「アレクシス殿下たちが囲い込んでいる令嬢、ヘレン・アウグスト男爵令嬢と……私、マリアンヌ・オードファランは『転生者』です」

そう、告げた。

「……テン? 何だ?」

私はまっすぐに陛下を見据える。

「このことを打ち明けるにあたり、著しく私の評価を下げるかもしれません。正気を疑われてしまうかもしれない。しかし、陛下も王妃様も、宰相閣下もご子息を厳しく評価し、私に敬意を払ってくださいました。ならば、私も誠実に……彼らの可能性に光がまだあると示すべきと思いました」

「光、とな」

「はい、陛下。アレクシス・リムレート第一王子、フィリップ・ラビス侯爵令息、ルドルフ・バーニ伯爵令息、ロッツォ・ニールセン、彼ら四人は現在、当人では抗うことの出来ない『せん妄状態』に陥っている可能性がございます。そして、そのせん妄状態は、ある時期まで、けして解けぬ可能性が……僅かながらございます。その時期さえ乗り越えたなら、四人とも皆、真っ当な判断能力を取り戻すやもしれません。確実にとは言い切れませんが」

即ち、それは『ゲーム期間』。

ゲームのエンディングが終わった後に、彼らは今までの判断を自分でも『何故そうしたのか』と思うかもしれない。

だって、少なくともアレクシス殿下は今までは真っ当な王子をしていた。

廃嫡などされない程度には、だ。

それが学園に入ってからこっち、おかしな行動をし始めた。

それは運命の強制力的なものが彼らにそうさせているのでは?

これも、けっこうあるあるパターンじゃない?

もしも、このパターンだったら、ちょっと私も思うところがある。

彼らは加害者ではない、被害者だ。

だというのに、誰にもそのことを理解してもらえない可能性がある。

彼らはやらかした人間として人生を棒に振り、後悔に塗れた人生を送ることになるだろう。

……でも、私なら『あり得る』と理解出来てしまう。

そんなの、ちょっと……ねぇ?

それでも私は悪役令嬢。まずは自分の破滅フラグを何とかしなければ、人のことなんて構っていられない。

でも、陛下たちがここまで私に協力的だというのなら話は違うだろう。

この件の検証は絶対にしておくべきだと思うのだ。

ヘレンさんが魅了の魔法なりを使えるパターンもあるけど……。

そんなの使えているなら私の立場は今、もっと最悪になっているはずだ。

だから、少なくとも無制限に使えるような魅了はない。

「……マリアンヌ嬢、詳しく話してもらえるか?」

「はい、陛下。信じられないことを申し上げると思いますが、どうか聞いてください」