軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22 謁見

お父様と共に国王陛下、王妃様との会合が決まった。

主に私とアレクシス殿下の婚約についての話し合いだ。

アレクシス殿下を抜きにしての話し合いをお願いしている。

まぁ、そっちは叶うか分からないけど。

「うーん……」

私は私室で陛下たちが取ってくるだろう行動パターンを予測し、対策を立てていた。

まず第一に今回の殿下たちの『風評被害』を責められるパターン。

うん、まったく弁解の余地がないわね。

徹頭徹尾、私が発端なんだもの。これに対策? ナイナイ。

「なるようになる、何とかなる……ね!」

ちなみに『なんとかなる』という楽観の裏では必ず『何とかしてくれている人』が居るものだ。

今回のそれはお父様かしら?

よーし、公爵閣下にお任せ!

「……私、王妃になんて向いてないわねぇ」

対策のためのメモ書きをやめて、ベッドにボスンと大の字になる。

今世の肉体スペックというか、悪役令嬢スペックがあるため、『仕事』としてはこなせると思う。

王子妃として政務をしたりね。しかし、いかんせん性格や性質的に向いているとは思えない。

それでも無理して国のため、領地のため、民のために頑張るのが貴族というものだけど。

オードファラン公爵家は、私のお兄様が継ぐ。私は爵位を得ず、嫁ぐ側だ。

でも、アレクシス殿下はまだ立太子していない。

公爵家の後ろ盾を得た上で、まだ保留というか、決定していない状態だ。

一概にそれはアレクシス殿下だけのせいとは言い切れまい。

資質を問われているのは私もだ。特に陛下目線ではそうよね。

でもねぇ。

裕福、かつ名家のお嬢様。家族仲良好、自分の見た目も綺麗で体型もいい。

前世目線でこんなに何もかも揃っている状況以上に望むものが私にはない。

向上心がないのだ。それって王族の妻としてどうなんだろう。

散財だけする王妃とかになったり……。

「このままいくと破滅しそうだから、緩やかにそれを回避出来ればそれで良かったのだけど」

いざ、アレクシス殿下と婚約解消となるとこの先どうしたものか。

前世の知識はあるだけでは意味がない。

何かしら事業に起こすだけの資産と、この国に合わせて成功させるための実力が必要だ。

薔薇文化は、たまたま嵌っただけ。

基本的に場当たり的な解決手段や、思い付きの実行の連続で乗り切ってきた。

人生このままってどうなの。

「哲学だわ」

かなり思考が脱線してしまった。

やりたいことなんて特にない、むしろ満たされていて『それでいい』人生だ。

ゲームの破滅フラグを解消するのは降りかかる火の粉を払っているだけ。

まぁ、最近は『ちょっと』やり過ぎだったけど。

強いてやりたいことがあるというのなら……うーん、色々と楽しいこと?

「もう寝よっ」

明日は陛下への謁見だ。

◇◆◇

お父様と共に王宮へ向かう。

通されたのは内々で話をするための部屋。

たぶん、防音とかきっちりしている場所だ。

そこに国王、王妃、宰相が待っていた。

「ジオルド・オードファラン、参りました。国王陛下、王妃様」

「マリアンヌ・オードファラン、参りました。王国の太陽にご挨拶申し上げます」

国王陛下は四十代中盤で、王妃様も同じくらいの年齢。

陛下はアレクシス殿下と同じ金色の髪と金色の眼をしている。

威厳はありつつも、まだ若い印象ね。

前世記憶の影響か、攻略対象たちの年齢層よりも魅力的に感じる……。

あらまぁ、私って枯れ専疑惑が……?

前世の記憶なんてはっきりしているワケじゃないんだけど。

「よく来てくれたな、公爵、そしてマリアンヌ。さぁ、座ってくれ」

私とお父様は陛下に促されるまま、彼らの対面のソファに座った。

宰相はそばに立っているみたい? 座ってていいのに。

「まず初めにはっきりとさせておこう」

国王陛下が切り出した。

私は思わず、ごくりと唾を飲み込む。

やっぱり怒られるか。そうよね、お父様、頑張って私を守ってね!

いえ、責任は取りますけども。

「すまなかった、マリアンヌ!」

国王陛下が勢いよく頭を下げた。

「え」

思わず私の口からは間の抜けた声が出たわ。

「愚息が申し訳ない態度を取っていたこと、謝罪する。マリアンヌ・オードファラン公爵令嬢」

あらぁ。

これ、もしかして私たちの方が立場が上だったり?

陛下の耳にどのような情報が入っているのだろう。

散々にアレクシス殿下の風評被害をもたらした私は今、被害者側なのだろうか。

はて?

「……陛下が、そのように頭を下げないでください。一介の令嬢などに」

私がそう告げると陛下は頭を上げて首を横に振った。

「いいや。オードファラン公爵家の令嬢を蔑ろにしていい理由はない。たとえ王家といえどもな」

陛下はどうやら公爵家に敬意を払うタイプの陛下らしい。

これは中々に『当たり』パターンでは?

「私からも謝らせてね、マリアンヌ嬢。アレクシスが貴方を蔑ろにして申し訳なかったわ」

「王妃様まで、そんな。……お言葉ありがたく受け取ります」

とにかく陛下たちの謝罪を素直に受け取る。

問題はここから先の話だろう。

「公爵から聞いている。アレクシスとの婚約を解消したいとな」

「……そうですね。簡単なことではないと思いますが、今の段階では……殿下とは上手くいかないかと」

半年以上、殿下とは没交渉だからね。

まぁ、最近は少しだけ交流があったけれど。

「陛下、王妃様。アレクシス殿下のことはどのように聞いておられるのでしょう? 謝罪までしていただきましたが、私もお父様も苛烈な罰則を殿下に望んでいるのではありません。事実に基づき、それに相応しい対応をしていただきたく思っております」

陛下は頷き、私の問いに答える。

「アレクシスは学園に入ってから一人の女子生徒を囲い、そちらとばかり交流していると聞いている。その間、マリアンヌとはまったく関わろうとしていない。手紙も送っていないらしい。……先日のパーティーではマリアンヌが断ったそうだが……どうも怪しい真似をしでかしたそうだな」

ああ、ドレスの一件。

もしかして、あれが原因で天秤がこちらに傾いたのだろうか。

男色の風評被害の流布も大概だと思うけど……。

「もしかして私のドレスを盗んだ者が判明したのでしょうか」

「ああ、公爵から顛末を聞いた上でこちらでも調べさせてな。察しの通り、アレクシスの企みであった」

まぁ、事実判明!

なぁなぁで終わったかと思ったわ、あの話。

やんわりと、どちらかが犯人だったのかなぁ、で終わるものかと。

まぁ、実際そうよね。アレクシス殿下以外にああいう風に動く人が居ないのだ。

「マリアンヌが上手く躱してくれた上で、オードファラン家との諍いも表立ったものになることなく済んだと聞いている。加えて……公爵を諫めてくれたともな。マリアンヌ、王家と公爵家の仲を取り持ってくれたこと、礼を言う」

「まぁ……そんな」

私はお父様に視線を送ると無言で頷かれた。

なるほど?

あの一件でバッチバチに公爵家と王家で喧嘩しても良かったところを、私が諫めたことになっているのか。

まぁ、父親が娘に対する侮辱で怒り心頭になるのは……さもありなん。

アレで上手く受け流した扱いだった?

「狩猟祭でも性懲りもなく婚約者を差し置いて、例の娘に獲物を贈ったと聞く。重ね重ねすまない、マリアンヌ」

「いえ、あれはまぁ、事前の口約束もあってのことと申しますか……」

それでも婚約者に贈るべきなのだけどね!

陛下はびっくりするぐらい風評被害の件については触れないわね?

まさか耳に入ってないとか、そういうことある?

「……陛下、しかし私も私でアレクシス殿下に対して良くないことをしているのですが。それはご存知なのでしょうか」

藪蛇と思いつつ、聞いてみることにした。

ここで『バレてないから平気!』のノリで話を続けても、何故か私有利の状況だから逆に良くないだろう。

『私、こんなに迷惑だったんですのよー! どう落とし前つけてくださりますの!?』と責め立てたところで『お前のしてきたことをこちらが掴んでいないとでも思ったか?』と凄まれては具合が悪い。

その流れは私不利の状態で終わってしまう。

ならば今の内に自ら白状しておくべきだ。

そうしておけば痛み分けに持っていけるかもしれない。

「……知っている。耳に入っているよ、奴らの風聞もな」

「それはつまり」

「頭の痛いことだ。あんな噂が流れているのに何の対処も出来ず、原因となっている行動も改めない。噂を覆すのは簡単な話だろう? 婚約者であるマリアンヌに敬意を払い、学園でも仲睦まじい姿を見せれば良かったのだ。その努力と行動をすれば良かっただけなのだ。たったそれだけで、あの噂は終わっていた。それがどうしたことだ。今日まで噂を放置し、生徒たちからは『噂通り』だと思われている」

陛下、まるっとご存知でした。ひゃー。

「……陛下や王妃様は、あの噂を流されていたのに動かないでいてくださいましたが」

「狭い学園内でのことだ。あそこまで広く知れ渡っていることだ。そして、アレクシスの行動次第で簡単に覆せることなのだ。それを……わざわざ国王と王妃である我々が動かねば対処が出来ないなど。……我々がただの平民や下位貴族ならばそれでいいのかもしれないが、アレクシスは王族なのだ。被害を受けている家に謝罪こそすれ、対処すべきなのは……」

「まぁ、アレクシス殿下その人ですわね……」

「そうだろう? 加えて、噂を流しているのはマリアンヌだという。まぁ、噂を流したというか、勝手に広がって収拾がつかなくなっている? ようだが」

私の手を離れて凄く拡散されていますからね!

恐るべき人の力。

「だから、マリアンヌに謝罪すべきなのか、好きにさせておくべきなのかと考えてな……」

「……ああ」

そうか。私の与り知らぬことだったならばまだしも。

例の件の発端は間違いなく私だった。

陛下目線で、私当人が対処している以上は口を出せなかった?

「間違えてはいけない。先に道を踏み外したのは間違いなくアレクシスの方なのだ。婚約者を蔑ろにし、婚約者以外の女と懇意になっていた。むしろマリアンヌは数ヶ月は沈黙していただろう? 他の令嬢たちが見かねるほどの事態になってから、ようやく口を開いたと聞いている。……それもその噂が広まり、すぐに対処しようとしたならば、アレクシスが行動を改めることに繋がるものだ。『婚約者からの警告』としては悪くない。実際問題、奴らの行動を見れば『そう見える』のだから」

あ、やっぱり逆ハーレムルートって客観的には『そう見える』のね。

けっして学園の生徒たちが特別な人たちなだけではなかったようだ。

学園の、主に女子生徒たちの名誉は守られたわ!