軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新魔法の報告

「……魔力譲渡魔法、か。またとんでもない魔法を会得したものだ」

牢宮内に建てられた屋敷の執務室。机を挟んで僕、ファラ、フェイの報告を聞いた父上は、ソファーに座ったまま呆れ顔を浮かべて深いため息を吐いた。

その姿を目の当たりにし、僕の隣で足を伸ばしてちょこんと座っていたフェイが「ねぇ、リッド」と首を傾げた。

「魔力譲渡魔法は君達にとって、価値のある新魔法なんでしょ? どうして、ライナー……じゃなくて、父君はため息を吐いているの?」

「あ、あはは。価値がありすぎて、大騒ぎになるから簡単に公表できることじゃないからかな」

「ふーん。人って面倒臭いんだねぇ」

僕が苦笑しながら答え、フェイがやれやれと肩を竦めた。

すると、「ふふ、そうですね」と僕の横に腰掛けていたファラがにこりと微笑んだ。アスナは部屋の壁際に控えて畏まっている。

「でも、価値や本質を見極めることは社会では大切なことなんですよ」

「へぇ、そういうものかねぇ」

フェイはあまり興味なさそうに相槌を打った。実際、牢宮の化身である彼には人同士の政には興味がないんだろう。

ちなみにフェイが父上のことを『父君』と言ったのは、フェイがバルディア家の一員となったからだ。

呼び方は『父上』や『お義父様』で大丈夫と説明したんだけどね。

『皆と同じだとつまらないからライナーは父君、ナナリーは母君って呼ぶよ』と、フェイなりの拘りがあるらしくて頑なだった。

『別に悪い呼称ではないし、構わない』ということで、父上と母上も許している。当人達が良いと言っている以上、僕が口を挟むことでもないだろう。

「しかし、短期間でよくまとめたものだな」

父上はそう言って、机の上にあった『報告書』を手に取った。

もちろん、僕が予め作って渡したものだ。

「いえ、ここで数日は経過しております。地上と流れる時間が違いますので短期間というわけではありません」

ファラ、フェイ、アスナに魔力譲渡魔法の研究、開発に協力してもらってから現時点で数日が経過している。

日々欠かさず高負荷修練を行いつつ、魔力譲渡魔法における検証結果の報告書をまとめ、今日は父上に報告するため牢宮の屋敷に足を運んでもらったのだ。

移動はフェイにお願いして、バルディア邸の執務室と牢宮を繋ぐ黒渦の道を作ってもらった。

父上一人なら地上の執務室に籠もったまま、何かしらの理由を付けて人の立ち入りを禁じれば人目も避けられて噂が立つこともないからね。

「そうか。そうだったな」

父上は少し寂しそうに相槌を打ち、報告書に目を落とした。

「どうかされましたか?」

「いや、気にするな。それにしても『魔力譲渡には、術者と対象者が一種以上同じ属性素質を持ち、術者に高い魔力変換と魔力調整技術がなければ不可能と思われる』か。よく気付き、調べたものだ」

「ありがとうございます。でも、ファラが全面的に協力してくれたおかげです」

ちらりと横を見やると、彼女は「とんでもないことです」と謙虚に頭を振った。

「私は何もしておりません。ただ、リッド様の魔力を受け取っただけですから」

「そんなことはないよ。ファラはちゃんと感覚を具体的に細かく教えてくれたじゃないか。だからこそ詳細な報告書が書けたんだ。間違いなく君のおかげだよ」

僕が力強く告げると、ファラは少し頬を赤く染め「そう言って頂けると、とても嬉しいです」と俯いてしまう。

「なるほど、仲が良いようで結構だ」

父上はそう切り出し、真顔となって「しかし……」と続けた。

「報告書にはこうも記載されている。『また、譲渡する魔力に属性不一致があった場合、拒絶反応が起きて術者と対象者の双方に衝撃と激痛が走る』とな。まさか、これもファラと試したのか?」

『例え本人が了承していたとしても傷つけるような真似をしたのであれば許さんぞ』

父上の鋭い眼光に射貫かれると同時に、言わんとしていることを直感で察した。

「いえいえ。そんなことはしておりません」

「ほう。では、アスナで試した、というつもりではあるまいな?」

『お前は貴族の嫡男だ。好奇心による軽率な行いで女性を傷つけることは許されんぞ』

再び鋭い眼光に射貫かれ、僕はぞくりとするも慌てて首を横に振った。