軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドの友人達

バルディアの名をフェイに与えることを陛下達から許可を得た後、僕達は地上に戻った。

アーウィン陛下と父上は二人で話したいことがあるということで、そのまま父上の執務室に移動する。

マチルダ陛下も母上やエルティア義母様とお茶をするということで、母上達のいる部屋に向かった。

父上達と別れた僕はファラと合流し、帝都からやってきた『友人達』と会うべく移動する。

友人達と子息令嬢達はバルディア第一騎士団による護衛の下、キールとメルの案内による視察から丁度戻ってきたところだった。

子息令嬢の子達に挨拶すると、この場を騎士達とキールとメルにお願いし、僕は久しぶりに会った友人達を来賓室に案内することにした。

友人達というのは、帝都のバルディア邸で親交を深めた皆だ。

皇太子デイビッド・マグノリア。

彼は陛下譲りの顔立ち、綺麗な金髪と水色の瞳を持つ美少年だ。

でも、相変わらず目の奥が笑っていない。この点はマチルダ陛下が近い気がする。

皇女アディール・マグノリア、愛称はアディ。

顔立ちや髪色はマチルダ陛下と似ているけど、彼女は独自の調子と口調を持っている。

ちょっと虚ろな瞳も相まって雰囲気はほわんとした印象を受けるが、母親譲りであろう桃色の目の奥には皇族らしい鋭い光を宿しているようだ。

帝国貴族保守派をまとめる公爵家の令嬢かつ皇太子の婚約者、僕と同じく転生者でもある悪役令嬢ことヴァレリ・エラセニーゼ。

彼女は波打った金髪、鋭い目付きに青い瞳を浮かべている。

一見与える印象は冷たくて高嶺の花のようにも思えるけど、少し抜けているというか。ちょっと面白い女の子だ。

帝国貴族革新派を束ねる侯爵家の養女となった令嬢にして、おそらく『ときレラ』のメインヒロインであるマローネ・ジャンポール。

彼女は白金色【プラチナヘア】の長髪、大きく優しい目の奥には藍色の瞳が浮かび、清楚で神秘的な雰囲気を纏っている。

言動も大人びていて、とても理知的だ。

でも、油断はできない。

『ときレラ』での彼女は男爵家の養女だったんだけど、今は侯爵家の養女となっている。

流れが変わった原因がわからない。僕とヴァレリにとっては監視対象でもある友人だ。

同侯爵家の子息ベルゼリア・ジャンポール。

彼はジャンポール侯爵家直系の男の子で、丸みを帯びた茶髪と優しい目付きに穏やかな青い瞳を浮かべている。

ジャンポール侯爵家の当主ベルルッティやベルガモット卿のような狡知さは見当たらない。

侯爵家は色々と厄介な相手だからマローネ同様、動向も注視しなければいけない相手だ。

ベルゼリアの意思はわからないけど、ジャンポール侯爵家の一員である以上、彼も僕を、バルディア家を注視するよう言われているはずだ。

でも、願うことなら、ベルゼリアはこのまま僕の良き友人として大きくなってほしい。

帝国の最西端に位置し、バルディア家と同じく国境を守る姿から『帝国の盾』と評される辺境伯家の次男デーヴィド・ケルヴィン。

薄茶色の少し跳ねた髪、整った顔立ちと穏やかな目付きに浮かぶ青い瞳。

冷静で論理的な口調も相まって、とても大人びた雰囲気がある。

年齢は僕と同い年のはずなんだけど、僕の目からどうしても年上に見えるんだよね。

前世持ちの僕が言うことじゃないかもしれないけど。

彼の父親グレイド・ケルヴィン辺境伯は一度帝都で会ったことがある。

武士らしい強面だったけど、気さくで明るい人だった。

父上よりも大分年上なはずなのに、グレイド辺境伯が醸し出す雰囲気は若々しく、年齢を全く感じさせなかったんだよね。

ただ、デーヴィドのお兄さんであるドレイク・ケルヴィン。

残念ながら彼と僕の関係はあまりよくない。

帝城にて行われた御前会議の場で互いの主張をぶつけ合い、僕は勝者、彼は敗者となった。

陛下の御前かつ貴族の面前でバルディアを侮辱した彼の発言は許せなかったし、後悔はしていない。

だからこそ、デーヴィドとは親交を深めておきたいと考えている。

彼らに加え、紹介も兼ねて僕の新しい家族となったティスとシトリーも部屋に呼び、皆でお菓子を摘まみながら談笑しようというわけだ。

『よければ別室で話さない?』

僕が声をかけて誘った時、皆揃って喜んでくれたけど、一番前のめりだったのは意外にもデイビッドだった。

『それは、こちらからもお願いしたい。リッドがズベーラで広げた見聞。そして、各部族長の印象を是非とも聞かせてくれ』

皇太子であるデイビッドは、特別な問題がなければ次期皇帝だ。

知識欲も強いから、国外のことに興味津々だったみたい。

『もちろんだよ』

即答した僕は皆を部屋に案内し、伝えられる内容だけ多少の脚色を交えて面白おかしく説明していった。

皆の反応が特に良かったのは、体格が大きくて食欲旺盛な牛人族や熊人族だ。

彼らがお皿へ極盛りに注ぐ料理を身振り手振りで伝えたところ、皆は目を丸くしながらも興味津々だった。

まぁ、あれは実際に目の当たりにしても驚いたからね。

僕があらかた語り終えると、デイビッドの質問から自然と質疑応答形式となって、話題はズベーラからバルディアの発展までどんどん広がっていった。

「……という感じかな」

皆から飛び交う質問への答えが一息つくと、デイビッドが「なるほど……」と深い相槌を打った。

「本や口伝で知識は得ていたが、実際に見聞きしたリッドの言葉はとても興味深い。やはり百聞は一見にしかず、ということか。私もいずれは各地を回ってみたいものだな」

「デイビッド、その時は、ぜひ私もお供させてください。他国と接する辺境伯家の息子として、私もリッドのように見聞を広めたいですから」

「あの、その……私もお供してよろしいですか。色んな光景、私も見てみたいです」

デーヴィドが目を細め、ベルゼリアがおずおずと手を挙げた。

二人の目には、共通して広い世界に対する強い好奇心の色が宿っている。

「もちろん、構わないぞ」

「じゃあ、私がデイビッドと皆を案内しましょう」

僕が身を乗り出すと、「駄目だ」とデイビッドがきっぱりと告げて首を横に振った。

「え……?」

唐突な発言にきょとんとしていると、彼はにやりと笑った。

「リッドと一緒に行って案内されるのも良いが、それは二度目だ。一度目は何も知らず、自分の直感を頼りに見て回りたいと思ってな。二人はどう思う?」

「私もデイビッドに賛成です。ただ、その時はリッドに見るべきものを記した冊子を書いてもらいましょう」

「それ、とてもいいと思います。冊子作り、私も手伝います。少しですが、絵も描けますので」

デーヴィドとベルゼリアが頷くと、「決まりだな」とデイビッドは嬉しそうに頷いた。

「いずれ、機会があれば行くとしよう」

「……デイビッド、それに二人も。直感を頼りに見て回るのはいいけど、僕を仲間はずれにしなくたっていいじゃないか」

僕が少しムッとして口を尖らすと、「……気にするな、リッちゃん」とアディが口火を切った。

「兄上は負けず嫌いで、少し器の小さいところがあるから」

「……⁉」

「な……⁉ アディ、急に何を言い出すんだ」

彼女の一言に、デイビッドは顔を真っ赤にして声を荒らげる。

一方、彼以外の皆は僕を含めて失笑を堪えるべく縮こまって顔を逸らし、あるいは俯き、肩を小刻みに震わせた。