軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッド、一難去ってまた……?

「しかし、まずはこれを見てもらったほうが早かろう」

父上はそう告げると、席を立ち上がって執務机の上から一通の封筒を持ってきた。

「封は開けてある。中を取り出して読んでみろ」

「……拝見します」

差し出された封筒を丁寧に受け取り、裏の封印を確認する。

案の定、皇族の印が押されていた。

アーウィン陛下か、はたまたマチルダ陛下からかな。

執務室の中に緊張感が漂う中、フェイが「ねぇ、リッド」と首を傾げた。

「その封筒がどうかしたの?」

「これはね。僕達、バルディア家が属する帝国の頂点に立つ皇族から届いた手紙なんだ」

「へぇ。それで何が書いてあるのかな?」

「それを今から読むんだよ」

僕はそう答えると、封筒の中身を取り出して手紙に目を通していく。

差出人はアーウィン・マグノリア陛下だ。

僕が外遊から戻ってきて早々、父上は帝都に発った。

その理由は、僕がズベーラから持ち帰ったトーガの歴史問題にも関わってくるであろう闇歴史が記された書物の件を報告するためだ。

でも、僕が山岳地帯の訓練をした日の夕方には帝都から帰ってきていたらしい。

黙々と文字を追っていると、フェイがちょこんと僕の肩に立ち、目を凝らして手紙を見るも「むぅ……」と口を尖らせる。

「リッド、これなんて書いてあるの」

「えっと、読めないの?」

「……牢宮に籠もっていた僕が地上の文字を知るわけないでしょ」

「あ、そっか。ごめんごめん」

頬を膨らませるフェイに軽く謝りつつ、正面を見やると父上はこくりと頷いた。

彼には話しても良いということだろう。

「でも、絶対に他言無用だよ」

「わかった」

フェイの返事を聞くと、僕は手紙の内容を説明していった。

『皇族一同と一部の貴族子息令嬢を連れて見聞を広めるためバルディアに訪れるから、最大限の受け容れ準備をよろしく。今回訪問の最重要事項はリッド・バルディアがズベーラで発見し持ち帰った闇歴史なる書物の確認と獣王戦参戦の激励、以上の二点である』

内容を簡潔に言えば、こんな感じだろうか。

皇族一同ということは両陛下と一緒にデイビッド達もやってくるということだろう。

一部の貴族子息令嬢というのは、デイビッドの婚約者であるヴァレリとかその辺りかな。

「……ということだね」

「要は偉い人が来るから、リッドとライナー様がもてなさないといけないってこと?」

「まぁ、有り体に言えばそういうことかな」

「うわぁ、面倒臭そう」

フェイが心底嫌そうに顔を顰めると、僕と父上は同時に噴き出してしまった。

「思ったことを何でも口にしたら駄目だよ。牢宮と地上は違うんだから」

「そうだな。フェイ、君には地上の常識を学んでもらおう。文字の読み書きと一緒にな」

「えぇ⁉ 僕、そういう面倒臭そうなことは嫌なんだけど」

フェイが青ざめると、僕は咳払いをした。

「バルディアの一員になる、ということは色んな責任も伴うことでもあるんだよ。ちゃんと勉強しないとね」

「うむ、この件はリッドの言うとおりだな。常識と共に文字の読み書きもしっかりと学んでもらうぞ」

「うへぇ。わかりましたよぉ……」

彼がしょぼんと俯くと、父上が咳払いをして「さて……」と切り出した。

「ズベーラで見つかった書物の件、帝都で陛下に報告したところ原書の確認を早急に行うべきだという話になってな。バルディアの発展を直接確かめる良い機会だということで、アーウィン達がバルディアを訪問することになったのだ」

「なるほど、そういうことでしたか。それでしたら、すぐにクリス達にも連絡を取って最高のもてなしを手配します」

「うむ、ナナリーやファラ達にも伝え、すぐに準備に取り掛かるぞ。皆にフェイの紹介もせねばならんからな」

「わかりました」

「しかし、だ」

僕が頷くと、父上が真顔になった。

「いらぬ心配をかけぬため、リッドが牢宮に迷い込んだことは皆には言っておらん。フェイの紹介と合わせて伝えるつもりだが、くれぐれも言葉選びは慎重にな」

「はい、心得ております」

僕と父上は執務室を退室してフェイと廊下で待っていたサンドラ達を連れ立ち、皆が待っているという母上の部屋に向かった。

部屋に入ると、そこには母上を始めとするファラやメル達、皆が勢揃いしていた。

「リッド様、お帰りなさいませ。出迎えに参れず、申し訳ありませんでした」

「いやいや、急に戻ってくることになったし、そのまま執務室に行ったからね。気にしないで大丈夫だよ」

ファラが駆け寄ってきてしゅんとすると、僕は頭を振って微笑んだ。

でも、それよりも個人的に気になることがあって僕は少し下がった。

「……? リッド様、どうかされましたか?」

「いや、訓練が終わってそのまま来たからさ。汗臭いかなって、あはは……」

本当は約三日もの間、牢宮で魔物達を相手に走り回っていたのだ。

執務室で体を拭いたとはいえ、やっぱり気になってしまう。

「汗、ですか?」

ファラはきょとんとして一歩前に出てきた。

「えっと、どうしたの?」

「リッド様、大丈夫です。特に汗臭いということはありませんよ。むしろ……あ、いえ、何でもありません」

「へ……?」

何故か彼女は顔を赤らめ、慌てて少し離れてしまう。

僕が呆気に取られていると、「あらまぁ」と母上が目を細めた。

「二人は本当に仲が良いのね」

「ナナリー様の仰るとおり。毎度、ご馳走様でございます」

ファラの護衛であるアスナが相槌を打ち、僕が「は、はぁ……?」と目を瞬いていると父上が咳払いをしてこの場の耳目を集めた。

「今日はこの場にいる皆に紹介したい者と、伝えたいことがある。心して聞いてくれ」

父上の言葉で部屋の空気がピンと張り詰める。