軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドの提案、バルディアの名

「え、えっと。いえ、ライナー様も、その、気にしないでください。僕もリッドのおかげで地上に出てこられましたので。あは、あはは……」

決まりが悪そうに視線を泳がせるフェイを見て、父上は「そうか。では、改めて自己紹介をさせてもらおう」と切り出し、名前と帝国に属するバルディア家について簡単に説明する。

全て初めて聞く内容らしく、彼は興味深そうに何度も相槌を打っていた。

父上の説明が終わると、フェイも牢宮核の化身がどういったものかを語り始める。

「牢宮核の魔力を好きに扱えるから、僕が牢宮核の化身であることは間違いないと思う。ただ、正直なところ、どうして自分が生まれたのかはよくわからないんだ。逆に僕と同じような存在を見聞きしたことはあるの?」

彼の真剣な問いかけに、父上は腕を組んで唸った。

「……少なからず、私は牢宮核の化身という存在を見たのは初めてだ。君と同じ存在がいるかは、これから調べてみなければわからない。明確な答えを出せずに申し訳ない」

「いえ、大丈夫です。調べてくれるだけでも嬉しいですから」

父上の真摯な口調と言葉に、フェイも納得した様子でこくりと頷いた。

彼の説明が粗方終わると、僕も会話に参加して牢宮に誘われた状況、脱出までの経緯を語っていく。

大まかな流れはこうだ。

地上で唐突に誘いの牢宮に迷い込んだ僕はフェイと出会い、彼の地上に出たいという願いを叶えて脱出するべく最下層を目指した。

途中でイビ・パドグリーとマルバス・グランドークの二人とも思いがけない邂逅を果たすも、全員の目的が同じことから一時的に手を結び、全七階層にあった試練を乗り越えることに成功。

先に二人はそれぞれに誘われた場所に戻り、僕は約束を果たすために牢宮核の化身であるフェイと契約を締結させる。

牢宮に囚われていた人達も街付近に解放し、地上に戻ってきたと、そう告げた。

なお、フェイとの契約は『僕が牢宮核の発する魔力の受信器となることでフェイが地上に出られるようになる。

その代わり、僕も牢宮核が溜め込んでいる膨大な魔力を使用することができるようになったらしい』と説明した。

実際、何がどうできるかという具体的な検証はこれからだからね。

「……以上が牢宮に誘われて起きたことです」

「そうか。しかし、イビ・パドグリーとマルバス・グランドークと牢宮で出会うとはな。相変わらず、お前は奇妙な巡り合わせを持っているものだ」

「あはは。この件は、僕もさすがにそう思います」

「まぁ、何にしてもお前が無事で良かったよ」

父上が呆れ顔を浮かべると、僕は頬を掻いて苦笑した。

牢宮に誘われたこと自体が珍しいことなのに、その先で僕と関わりをもつ人物に出会うなんてね。

確率にしたらどんな数字になるのやら。

少し部屋の緊張感が緩んだので、僕は話頭を転じた。

「父上。それでフェイの処遇なんですが、彼にバルディアの名を与えられないでしょうか」

「当家の名を与える、か。それはつまり、新たな家族として受け容れるということか?」

「え……⁉」

フェイが目を大きく見開いた。

この件は彼に伝えていなかったからね。

僕は父上の言葉に即答で頷いた。

「はい。契約のこともありますが、フェイの持つ力は膨大です。時間と共に彼の存在が知られれば、知られるだけ良からぬ輩がやってくることでしょう。しかし、バルディアの名を持てば少なからず僕達で彼を守ることができます」

「ふむ……」

口元に手を当て、父上が思案顔を浮かべる中で僕は言葉を続けた。

「それにフェイは、牢宮で過ごしていたので地上の知識がありません。バルディアで過ごし、常識や道徳を学んでもらうためにも当家の一員になってもらったほうが良いかと」

「……そうだな。話を聞くかぎり、それが一番よさそうだ」

父上がこくりと頷くと、フェイが「本当⁉」と嬉しそうに飛び上がった。

「ありがとう、ライナー様」

「いや、君はリッドを助けてくれたんだ。お礼を言うのはこちらだよ。ただ、当家の名を正式に与えるためには様々な手続きが必要になる。暫く待ってもらうことになるが、良いかな」

「うん、ずっと牢宮に籠もっていたんだもん。待つぐらいなんともないさ」

「申し訳ない。だが、出来る限り手続きは早く進めるように努めよう」

フェイが嬉しそうに頷くと、父上はふっと表情を崩して優しく微笑んだ。

父上なら僕の申し出を受け容れてくれるだろうと思っていたけどね。

無事に話が進んだことに僕は胸を撫で下ろしつつ、咳払いをした。

「良かったね、フェイ。でも、これから君はバルディアの一員となるんだから軽率な言動は慎まないと駄目だからね」

「わかってるよ。でも、僕に家族、家族ができるなんてなぁ。えへへ」

家族が出来たことが相当に嬉しいみたい。

フェイは、はにかみながら両頬に手を充てて体をくねくねさせている。

でも、何やらハッとして「あ、そうだ」と口火を切った。

「じゃあ、僕もお礼に牢宮の出入り口を近くに作ってあげようか。いつでも、誰でも挑戦できるようにね。でも、危ないから止めておいたほうがいいか」

彼の言葉に僕は目を丸くし「ちょ、ちょっと待って」と発してしまった。

「牢宮の出入り口って、そんな簡単に作れるものなの⁉」

「魔力消費が多いから簡単って訳じゃないけど、どこでも作ることはできるかな。必要なら牢宮の中をいじくることもできるよ」

さも当然のように答えるフェイの姿に、僕は唖然としてしまった。

出入り口をどこにでも作れ、必要なら中を造り変えて管理可能な牢宮。

それはもう、バルディアに『牢宮』という新たな資源ができたということだ。

前世で例えるなら、莫大か無尽蔵の油田が発見されたに等しい。

「……それは実に有り難い申し出だ。しかし、魔物が地上に溢れるようなことになっては困るが、その点はどうなるのかな」

父上が目付きを鋭くして切り出した。表情が『領主』のそれになっている。

「僕が管理しているかぎり溢れることは絶対にないと思うよ。あれは牢宮核がさらに魔力を得ようと欲張った結果だからね」

「興味深い。今後の牢宮対応においても、フェイ君の意見は良い参考になりそうだ。牢宮の件、また改めて話を聞かせてくれ」

「うん。僕はいつでも大丈夫だよ」

頼られることが嬉しかったのか、彼は満面の笑みを浮かべて頷いた。

本当に安全かつ自由に出入り可能な牢宮が出来れば、バルディアの発展は飛躍すること間違いない。

どちらにしても、後でフェイに牢宮をどんな風にいじって造れるのか聞いてみよう。

前世では『クラフト系やローグライク系のゲーム』も好きだったから、すでに色んな構想が頭の中を巡っている。

「さて、牢宮でのことは粗方わかった。では、次は私からアーウィン達の来訪について説明させてもらうぞ」

「……⁉ 承知しました」

父上が真顔で話頭を転じ、僕は気持ちを切り替えて畏まった。