軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

襲撃犯

しかし、クリスと顔はそっくりでも明らかに雰囲気が違う。

服装もクリスと良く似ているけれど、雑に開けている上、何と言ってもこれ見よがしに大きい胸は本人はない身体的特徴の一つと言える。

とにもかくにも、クリスと顔は同じでも本人とは似ても似つかないほどに妖艶で蠱惑的だ。

「クリス様と同じ顔であの姿……品がありませんね」

右隣に控えるディアナは嫌悪感を露わにしている……いつも以上にちょっと怖い。

だけど、クリスによく似ている女性の両隣にいる青年と少女以外は、クリスティ商会で見たことのあるような顔ばかりだ。

「なるほどね……。こんな感じでバルディア家の人員にも成りすまして、工房を襲撃したわけか」

「そのようですね……」と左隣にいたカペラが頷くと、彼は一歩前に出た。

「貴殿達の馬車。そして、服装からクリスティ商会の一団とお見受けするが、それを証明できる物は何かお持ちか? それから、貴女の名前を伺いたい」

「私の名前? ふふ、そうねぇ……クレアと呼んで頂戴。それと、証明できる物なんて持っていないわ。その理由は……ここに駆け付けてきた貴方達が一番わかるわよね?」

その一言が確定的になり、この場にいる皆の顔つきが険しいものに変わる。

「聞きたい事は山のようにあるけど……まずは、僕の大事な仲間を返してもらうよ」

怒気を込めて威圧するように言うと、クレアは僕を見て「あら……貴方は……うふふ」と笑う。

そして、「えぇ、良いわよ」と頷いた。

思わず眉を顰めると、彼女は楽し気に話を続ける。

「追いつかれた場合、あの子達のことは初めから諦めるつもりだったもの。でも、そうねぇ。その代りと言ってはなんだけれど、私達のことは見逃してくれないかしら?」

「……そんなこと許すわけないだろ。あの子達は取り戻す。そして、君達は生きたまま捕まえる。だけど、手向かうなら容赦はしない」

淡々と告げるが、クレアは動じない。

「やっぱり、そうよねぇ。じゃあ、坊やと少しだけ遊んであげるわ。ローゼン、リーリエ。貴方達はあっちのメイドとダークエルフをお願いね」

すると、名前を呼ばれた青年がクレアに尋ねた。

「主様。なら、僕はあのメイドとやりたいです。ああいう、気の強いお姉さんみたいな人が僕の好みですから」

「あら、ローゼン。貴方はやっぱりいい趣味ね」

二人が怪しく笑うと、残っていた少女がカペラを指差して声を荒らげる。

「えぇ⁉ じゃあ、あたしはあっちの仏頂面ですか⁉ 嫌ですよ。あいつ、私達と同じ雰囲気がしますもん」

「そう言わないの、リーリエ。今日は貴女が『妹』なんでしょ? それなら、兄であるローゼンの言う事を聞きなさい」

「う……わかりましたよ。はぁ……今日はなんでコインの表が出るってしたんだろ。裏なら、あたしが『姉』だったのになぁ」

リーリエと呼ばれた少女はラファに諭されてしゅんとするが、そんな彼女の言動にローゼンがおどけて笑う。

「あは。生まれて来る時と一緒で『運』だからね。しょうがないさ」

「ちぇ……しょうがない。じゃあ、あたしが仏頂面の相手をするわ」

「ありがとう、リーリエ。じゃあ、僕はメイドのお姉さんの相手をするよ」

「ふふ、いい子達ね」

ラファ、ローゼン、リーリエ達は楽しそうにしているが、その動きや気配は異常な威圧感があり、下手に手を出せない。

やがて、ローゼンはディアナの前に、リーリエはカペラの前に出た。

「よろしくね、お姉さん」

「言っておきますが、私は貴方のようなお子様に興味はありません」

「うーん。いいね。そういうところも僕の好みだよ」

ディアナはローゼンをギロリと睨むが、彼はそれすらも楽しんでいるらしい。

「はぁ……仏頂面が相手か。あんた、恋人とか恋愛経験ないでしょ?」

「初対面の相手に随分と失礼ですね。残念ながら、私は既婚者です」

「……⁉ あっは。それは面白いわね。いいわ……少しあんたに興味が湧いたから、遊んであげる」

カペラの答えは予想外だったらしく、リーリエのやる気のなかった瞳の色が興味に染まっていく。

彼等のやり取りを楽しそうに見ていたクレアが怪しく瞳を光らせて、僕とアーモンドの前にやってくる。

「二人の相手は私がするわ。それに、特に『坊や』のことはずっと気になっていたの。こうして直接会えるなんて、運命にでも導かれたのかしらねぇ」

彼女は僕のことを指差しながら嬉しそうに目を細めている。

「……残念だけど、運命があるとすれば君が捕えられることじゃないかな?」

「あら、つれない事を言うのね」

不敵に笑うクレアだが、間近にすると得体のしれない言動からは想像もつかないほどの威圧感がある。

思わず息を飲むと、傍にいたアーモンドが呟いた。

「リッド。君は狐人族で『獣化』できる者と対峙したことはあるかい?」

「いや……残念ながらないね」

「ディアナとカペラもかい?」

「正確にはわからないけれど、多分ないと思う」

「そうか。なら……」と言うと、アーモンドは声を張り上げた。

「聞いてほしい。狐人族が獣化する際は、魔力総量……言ってしまえば『当人の強さ』応じて、尻尾の数が増える。当然、多ければ多い程、強い相手だ。油断しないでほしい」

その声が辺りに響くと、クレア達は一様に微笑んだ。

「私達のことを説明してくれて、ありがとう。それじゃあ、そろそろ始めようかしらね」

クレアはそう言うと、先程まで乗っていた馬車の周りで構えている輩に向かって叫んだ。

「貴方達は、ここにいても邪魔よ。坊や達の相手は私達がするわ。馬車と荷を捨て、先に行きなさい」

「承知しました。主様」

その言葉が合図となりクレア、ローゼン、リーリエを除いた輩達が一斉に走り出す。

「……⁉ 逃がさない!」

咄嗟に魔法を発動しようとするが、一瞬でクレアに間合いを詰められた。

「な……⁉」

「坊やの相手はこっちでしょう? 私だけを見てなきゃダメよ?」

彼女はどこから取り出した如意棒のような武器を振り、魔法を使わせまいと猛攻を繰り出してきた。

当然、訓練とは違い殺気が含まれているものだ。

それに加えて、クレアの棒術は変則的であり、初めて見る動きである。

その為、対処がどうしても遅れてしまい魔法を発動することができない。

「リッド!」とアーモンドが助太刀に入ってくれたことで、何とかクレアとの間合いを取れた。

「ふふ。坊や達、仲が良いのね」その様子に、彼女は目を細めている。

周りを見ると逃げ出した輩達はすでに僕達の後方に走り去っていた。

その上、ローゼンとリーリエもかなりの手練れらしくディアナとカペラも手一杯になっているようだ。