軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

発展の序章2

電動機(モーター) と言われても、何に使われているのか想像しにくいかもしれないけれど、前世で馴染のある掃除機、洗濯機、扇風機など家電製品の多くには大小様々な電動機が使われていた。

もっと身近なところでだと『水道』も電動機を動力としたポンプによって成り立っている。

そんな前世の利便性が高い世界を引き合いに、『蓄電魔石』と『電動機』の有効活用方法を皆に説明。

結果、エレン達に開発してもらった木炭を燃料とする『発電機』の試作機を基礎部分に発電所をバルディア領内に建設することが決まった。

魔法を利用した水力発電や風力発電も考えてはいるけれど、まずは『加工作業』の負担を少しでも減らし、かつ効率的にできるように『電動工具』の開発と電力源の確保を優先するべきだろう。

ドワーフのエレンとアレックスは、工具という言葉を聞くと身を乗り出した。

「蓄電魔石を小型化して、小型の電動機と組み合わせた『工具』を開発するわけですか。確かにそんな便利な工具があれば、現状よりもかなり作業効率があがりそうです。ね、アレックス」

「うん。それに、力の大きい電動機を使えば大型の加工機も造れるんじゃないかな?」

「そうだね。僕の前世でも大型の電動機を使った加工機は沢山あったよ。木や鉄とか様々な資材を加工機で切断、圧縮、研磨して最後の細かい部分を職人の方々が仕上げしていた感じかな」

そう答えると、エレン達は期待に満ちた表情を浮かべた。

前世の件については、この場にいる皆には以前説明しているから引き合いに出しても問題はない。

むしろ、こうして円滑に話を進めるために伝えたからね。

エレン達との話がある程度まとまると、視線をサンドラに向けた。

「サンドラには、エレン達と協力して『通信魔法』をより有効活用できるように改善の研究をお願いしたいんだ。これも『蓄電魔石』を使って『通信』の補助する道具を作ればできると思う」

『通信魔法』とは鼠人族のサルビア、シルビア、セルビアの三姉妹と鳥人族のアリア達から教わった魔法を組み合わせて以前に創造した魔法だ。

わかりやすく言えば雷の属性魔法を用いて『無線通信による会話』を行えるようにしたものである。

だけど、使用時に発信者と受信者が同時に発動する必要の制約などもあり、まだまだ改善の余地がある魔法だ。

「畏まりました。私も『蓄電魔石』でどのような事ができるのか、非常に興味があります。色々と試してみましょう」

「うん。お願いね」

彼女が頷くと、話題はバルディア領から帝都までの道路整備に移る。

皇帝のアーウィン陛下から受注した道路整備は、第二騎士団の団員達によりすぐに施工が始まった。

今の進捗状況であれば、施工完了までに一ヶ月とかからないだろう。

道路整備が終われば、クリスと僕が皇后のマチルダ陛下から受注した『甘酒』の納品も開始される。

また、クリスは懇親会の場で普段は会えない貴族達に顔を売りつつ、特定の貴族には僕がお願いしたことを交渉してくれていたのである。

クリスは一枚の書類を僕と父上の前に差し出した。

「ライナー様、リッド様。『雷光石』の仕入れについてですが、帝国内で産出地を持っている貴族の方々との交渉は順調です。当分は滞りなく、数量を確保できるでしょう」

父上と書類に目を通すと、こちらが希望した金額で契約がまとまっているものがほとんどだった。

「ありがとう、クリス。それにしても、結構安い金額で提示したのによく先方の人達は了承してくれたね」

「うむ。貴族達がよくこれで首を縦に振ったものだ」

貴族達に提示した内容は、現状における雷光石の相場を調べ、大量に買い付ける条件の元に算出したかなり強めの金額だった。

それ故、相手側の交渉を予想していたんだけれど、こんなにも順調に話が進むとは思っておらず父上と共に驚嘆したのである。

彼女はニヤリと笑った。

「雷光石は使い道がなく価値が無いと言われていましたから、彼等からすればバルディア家との取引ができることの方が重要なようです。合せて、先方の奥様向けにマチルダ陛下が愛用している化粧水やお気に召した甘酒を多少融通します……そうお伝えしたら、すぐに首を縦に振ってくれましたよ」

「な、なるほどね……」

確かに懇親会以降、バルディア家との取引を希望する貴族は多い。

それに、帝都ではマチルダ陛下が好評したクリスティ商会の化粧水や甘酒を欲する貴婦人の声が日に日に強くなっているそうだ。

クリスはその点を理解して交渉に臨んだということだろう。

彼女の手腕に苦笑しながらも、それから暫く皆との打ち合わせは続いた。

打ち合わせが終わると、皆は「それでは失礼します」と言って執務室から退室。

部屋には父上と二人だけになった。

ディアナは執務室の外で待機しており、ファラ、アスナ、カペラは宿舎の執務室で第二騎士団関係の事務仕事をしてくれている。

当初はファラに事務仕事をお願いするつもりはなかった。

しかし、彼女から「少しでもお力になりたいのです。どうか、お役に立たせてください」という申し出があり、第二騎士団の事務仕事をお願いするようになったのだ。

最近は空いている時間があれば、ファラと一緒によく宿舎で事務仕事している。

それから程なくして、机を挟んで正面のソファーに座っている父上が「ふぅ……」と息を吐く。

「さてと、次は領内の動きについてだが、バルディア騎士団に所属する騎士の子供達に教育課程を施す件はどうなっている?」

「はい。今回は試験的に定員は三十名までとし、獣人族の子達と同じ教育課程の訓練と調整を行っております」

帝都に行っている間、バルディア領内では獣人族の子達と同様の教育課程を試験的に施す人族の子供達を募集していた。

試験的である為、募集されたのはバルディア騎士団に所属する騎士の子供に絞ったけどね。

鉢巻戦や第二騎士団の活躍を目の当たりにしていた親と子供達はその知らせを聞き、バルディア家が扱う知識、魔法、武術を学べると歓喜してくれたそうだ。

ただ、募集に対して応募が多すぎた為、筆記、武術、魔法の試験が行われた。

そして、帝都から帰ってきた僕にその試験結果がガルンから報告され、選別することになったのである。

選別から漏れた子供達には、来年度も募集をかけるだろうから、その際に優先して受け入れたい。

また、その時に備えて基礎的な部分を磨いておいてほしい、と伝えている。

その結果、何を子供に教えたらいいですか⁉ と熱心なご両親の問い合わせも殺到したけどね……。

試験から選別された三十名の中には、バルディア騎士団の副団長であるクロスの娘でメルの友人、『ティス』の名前もある。

彼女は以前に出会った時から日々の鍛錬を欠かさずにいたらしく、ティスの試験結果はすべて満点だった。

しかし、彼女がよりメルの身近に居ることになったことである問題も発生している。

「……ただ、ですね」と歯切れ悪く呟くと、父上の眉間に皺が寄った。

「ただ……なんだ?」

「メルも時折、その子供達に混じって訓練を受けているみたいです」

「な……⁉」

父上は目を丸くするが、それもそうだろう。

僕だって子供達の訓練教官達から報告を受けた時は同様の反応だった。

メルは騎士の子供達が宿舎に集められ訓練されることを知ると、「私も皆と一緒に受けたい!」と言い出してダナエの制止も振り切り、教官の騎士達に直談判したそうだ。

当初は断っていた教官達だったが、メルに押し負けてやむを得ず「せめて、メルディ様にそれ相応の実力があれば……」と断り文句を言ったらしい。

しかし、それは失言だった。

メルは僕やファラとの訓練に参加しており、『それ相応の実力』はすでに身に着けていたのである。

その時のメルは、それはそれは可愛らしく微笑んだらしい。

試験において最優秀だったティスと手合わせを行い実力を示し、教官達と子供達を黙らせたそうだ。

とはいえ、その話はダナエを通じて母上の知るところとなり、僕が父上のお叱りを受けるが如く、メルは母上からお叱りを受けたと聞いている。

だが、それでも彼女はめげずに子供達との訓練に参加しているらしい。

身分は違えど同年代の子達と触れ合えるのが楽しいらしく、母上も叱りはしたがメルの気持ちに理解も示しており、多少は黙認しているようだ。

説明が終わると父上は項垂れながら額に手を当てつつ、小さく首を横に振った。

「はぁ……。メルがお前の影響で武術や魔法に興味を持ってから嫌な予感はしていたが、いよいよという感じだな」

「あ、あはは。でも、メルの年齢ならお転婆ぐらいが丁度良いのではないでしょうか?」

「お転婆か……。まぁ、良い。メルの件はナナリーに任せよう」

そう言うと、父上は顔を上げていつも通りの厳格な表情に戻る。

そして、鋭い眼差しをこちらに向けた。

「それよりお前には話がある」

「なんでしょうか?」と首を傾げると父上はソファーの背もたれに身を任せ、おもむろに言った。

「年齢的には少し早いが、お前にはバルディア家の後継者として必要なことを学び始めてもらう」

「後継者として必要なこと……ですか。畏まりました。でも、それはどなたから習うのでしょうか?」

雰囲気と物言いから察するに、普段と学んでいる事とは違う何か帝王学的なものだろうか?

そう思っていると父上は身を乗り出して不敵に笑った。

「決まっている……私からだ」