軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新屋敷2

「え……あの、この規模で『宿舎』なんですか……?」

「あはは、やっぱり驚くよね。僕もこの『宿舎』を作れるとは、最初は思っていなかったんだよね」

驚きと戸惑いを隠せないファラに、笑みを溢しながら答えた。

すると彼女は、きょとんとした後、首を傾げる。

「……? どういうことでしょうか」

「いや、実はね……」

僕は彼女に新屋敷と宿舎建設において起きたことを丁寧に話し始める。

レナルーテでファラとの顔合わせが終わった後、僕は彼女の部屋に伺い『どんな屋敷』で過ごしたいかを尋ねた。

勿論、同じ部屋にいたアスナやディアナの意見も聞いている。

その時、ディアナから『バルディア家で屋敷を支えている人達の意見も聞くべき』と助言を受けた。

それもそうだな、と彼女の意見に納得した僕は、バルディア家に戻るとすぐにメイド達や執事のガルン、他にも働いている皆の意見を積極的に取り入れたのだ。

様々な意見が出る中、メイド達の結婚、出産、育児による離職者が非常に多いという問題点がみえてきた。

僕なりに労働環境の改善が何かできないかと考え、思いついたのが託児所である。

出産、育児を経験している人達を新たに採用して託児所を任せることで、新たな雇用を生み出すことに加え有能な人材の放出を防ぐことにも繋がるというわけだ。

こうして、新屋敷に託児所の原案が含まれる。

しかしこの時の僕は、原案がそのまま通るなんて思っていなかった。

最初に無理難題を言う事で、少しでも新屋敷の予算を増やす……それぐらいの気持ちだったのだ。

ところがいざ父上に原案を提出すると、まさかの素通りである。

尤も当初屋敷内に建設予定だった託児所が、来客や警護の観点から宿舎内に建設されるなどの細かい設計変更はあったけどね。

ちなみに、託児所の利用はバルディア家で務めている人であれば、誰でも受け入れ可能としている。

意外にも子供がいるメイドの他、騎士団の面々からも申し込みが多い。

この託児所も仕組みをもう少し見直して、一般化できれば領地発展に繋がる可能性もあるだろう。

粗方の説明を終えると、僕は微笑した。

「……というわけなんだ」

「なるほど……リッド様は凄いことをお考えになるんですね。でも、仕える者達の為にここまでの施設を用意するなんて、素晴らしい事だと思います」

「そう言ってもらえると、僕も嬉しいよ」

ファラは当初は驚いた表情だったけど、今は感嘆した様子で屋敷を見上げている。

ふと、周りに見てみると、彼女と一緒にやってきたダークエルフの面々も目を輝かせてくれているみたいだ。

折角だから、もう少し宿舎の施設を説明した方が良いかな。

「あ、それとね。宿舎には託児所以外に温泉、食堂、サウナ、屋上、運動場とかも完備しているけど、他にも何か気になる点があれば教えてね。全部対応は出来ないかも知れないけど、出来る限り要望には沿うようにするからさ」

しかし、僕の予想に反してダークエルフの面々は真っ青な顔をして首を勢いよく横に振った。

皆の意図が分らずポカンとしていると、ファラがクスクスと笑い始める。

「ふふ、こんな素晴らしい宿舎を用意してくれた『主君』に対して、気になる点など申せませんよ」

「へ……そうなの?」

彼女の言葉にきょとんとしながらダークエルフの皆に視線を移すと、今度は勢いよく首を縦に振っている。

普通に話しただけなんだけど、どうやら結果としては彼らを意図せずに威圧してしまったらしい。

「勿論です。ね、アスナ」

「姫様の仰る通りです。これ程のお屋敷……いえ、宿舎を仕える者達の為に用意するという話は聞いたことがありません。我々としては、リッド様に感謝しきれない程でございます。この御恩は、お仕えすることでお返しできるよう精一杯務めさせて頂きます」

アスナはそう言うと、僕に向かって一礼した。

すると、彼女の動作に連動するようにダークエルフの面々もスッと僕に一礼する。

予想外の出来事に僕は戸惑った表情を浮かべて、必死に皆に顔を上げてもらった。

「そんなに畏まらなくても大丈夫だから。と、ともかく皆が喜んでくれたなら良かったよ。じゃ、じゃあ、次は新屋敷を案内するね」

「はい、よろしくお願いします」

僕の言動を見ていたファラが、笑みを浮かべて頷いた。

こうして、宿舎の紹介が終わり僕は皆に新屋敷を案内するべく移動を開始する。

まぁ、すぐ近くなんだけどね。

新屋敷の前に到着すると、ファラとアスナが茫然としてしまっている。

他のダークエルフの面々も同様だ。

……何やらつい先程見たような光景である。

「えっと此処が今後、僕達が過ごすことになる新屋敷だよ」

「お……大きいお屋敷ですね」

「……さっき宿舎で驚いたのが少し恥ずかしくなります」

何やら目を丸くしているファラに声を掛けた。

それから少しの間を置いて彼女がポツリと呟き、アスナは小さく首を横に振っている。

ちなみに、新屋敷は宿舎の近くにあるけど、陰に隠れていたから宿舎の正面にいた皆には見えていなかった。

勿論、新屋敷は間近で見ればすぐにわかるけど、宿舎よりも大きい。

規模で言えば、僕達が住んでいる本屋敷よりも大きいだろう。

だから驚くのも無理はないと思うけど、さすがに驚き過ぎじゃないかな?

雰囲気を変えるように、僕はあえて「ゴホン」と咳払いをする。

「じゃあ、早速中を案内していくね」

「は、はい」

そう言うと、まだ驚きが隠せない様子のファラ達に案内と説明を始める。

新屋敷は三階建てで地下もあれば、屋上も建設されている建物だ。

新屋敷に入ると、まず高級ホテルのようなソファーやテーブルが設置されたロビーが僕達を出迎えてくれる。

天井には大きなシャンデリアも吊るされており、豪華絢爛であり品がある内装だ。

これは、来賓を案内する少しの間も休んでもらえるようにということ。

加えて、バルディア家の財力を見せつけ、威圧する意味も少しある。

外交において、相手に侮られないようにすることもまた必要なことだからだ。

それと、残念なことに人はどうしても見た目で判断することが多い。

故に新屋敷は将来的な事を考えて内装、外装もかなり意識して建設されている。

しかし今はその効果が表れ過ぎたのかファラやアスナ、ダークエルフの皆の瞳に感動と衝撃の光が灯り、内装に見とれているようだ。

やがて、ファラがうっとりしながら感嘆の声を漏らす。

「はわぁ……なんだか、別世界のような素敵なお屋敷ですね」

「ふふ、皆が気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。でも、見た目だけじゃないんだ。まだまだ、色々な造りや工夫があるからね」

彼女達の嬉しそうな様子を見て、僕は笑みを溢しながら話を続けるのであった。