軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新屋敷

屋敷で父上やメルとの朝食終えた僕とファラは、母上に顔を見せると新屋敷に馬車で移動を開始。

そして、僕が乗り物に弱いことを知っている彼女が、心配そうにこちらを見つめている。

「リッド様、乗り物酔いは大丈夫ですか?」

「はは、心配してくれてありがとう。だけど、短い距離なら大丈夫なんだ」

彼女に、僕は笑みを浮かべて答えた。

すると、彼女は安堵した様子で笑みを溢しながら胸を撫で降ろしている。

そんなファラに、僕は少しおどけて話を続けた。

「なんか、乗り物だけは弱いんだ。将来的に良くなれば良いんだけどねぇ」

「ふふ、リッド様の『意外な弱点』というわけですね」

「ま、まぁ、確かにそうとも言えるかもね」

思わぬ指摘に、僕は少しバツの悪い表情を浮かべた。

言われてみれば、確かに僕の『意外な弱点』なのかもしれないなぁ。

この事は父上や母上、メルにも良くからかわれている事でもある。

なお、母上に話したのはメルだ。

「ははうえ、にいさまってね。すぐにのりものよいをするんだよ」

「あら、そうなの? ふふ、私もそれは初耳ね」

あの時の母上の瞳が、興味津々という感じで輝いていたのは忘れられない。

ちなみにその時の僕は、「あはは……」と頷きながら苦笑していた。

そんなことを思い返していると、ファラが僕の顔を覗き込みながら嬉しそうに話し始める。

「それにしても、今日の『朝食』は驚きました。まさか、レナルーテと同じ『ご飯』が食べられるなんて思ってもいませんでしたから」

そう言うと彼女は、耳を上下させながらはにかんだ。

思案していた僕は、彼女の言葉にハッとして顔を上げるとニコリと微笑む。

「ふふ、喜んでくれて良かった。ファラが来る日に向けて、色々と調整していた甲斐があったよ」

そう、今日の屋敷でファラやアスナ。

そして、彼女達と共にやってきたダークエルフの皆に出した朝食は、レナルーテの食文化に沿ったもの。

つまり、米、みそ汁、漬物、煮物など……わかりやすく言えば日本食のような感じだ。

実はレナルーテへ最初に行った時から、クリスの商会を通して米や調味料関係などをバルディア領に継続的に輸入している。

勿論、調理方法もバルディア家に仕えてくれている料理長のアーリィを中心に研究をしてもらった。

結果、バルディア家においての食事は大幅に種類が増え、帝国とレナルーテの両文化を合せた食事が出ている。

僕の言葉を聞いたファラは少し顔を赤らめて嬉しそうに微笑むが、程なくして畏まった表情を浮かべた。

「そうなんですね……改めて、バルディア領に来たダークエルフ一同を代表して感謝致します」

言い終えると彼女はその場でスッと頭を下げて一礼する。

すると、隣で控えていたアスナも連動するように頭を下げた。

僕は慌てて二人に顔を上げてもらうと話を続ける。

「二人共、そんなに畏まらないで大丈夫だよ。それに、ファラが来ることはわかっていたから当然のことをしたまでさ」

「リッド様……本当にありがとうございます」

ファラは僕の言葉を聞くと、笑みを浮かべる。

その時、彼女の隣に控えていたアスナが頷きながら呟いた。

「リッド様、私からも改めて御礼申し上げます。しかし……『甘酒』まで出て来るなんて思いもしませんでした」

「ふふ、あれは『米』の料理方法を研究していく中、レナルーテから得た情報を元に料理長達が頑張ってくれたんだよ。今では、貴重な甘味としてバルディア領の皆からも好評だね。ね、ディアナ」

アスナに答えると、視線を隣に座っていたディアナに移す。

彼女は嬉しそうに、でも淡々と頷いた。

「はい。甘味は貴重でございますから、それに、美容と健康にも良いということでバルディア家のメイド一同喜んでおります」

「え……甘酒が『美容と健康』に良いんですか」

予想外の答えだったのか、ファラが少し驚いた様子で目を白黒させている。

そんな彼女に、僕は頷くと話を続けた。

「うん、実は『甘酒』って凄い栄養素があるんだ。その分、取り過ぎも良くないけどね。けど、毎日コップ一杯分ぐらいならとっても体に良いんだよ」

米をレナルーテから輸入をしたのは様々な理由がある。

僕が食べたいという想いが強かったのは勿論だけど、さすがにそれだけじゃ商売は成り立たない。

そこでメモリーにお願いして、前世の知識から引き出した『お米』の利点を父上やクリスに丁寧に説明したのだ。

帝国文化で使用頻度の高い小麦と同じく保存性に優れ、栄養価が高いこと。

そして甘酒や将来的にお酒を造ることも可能。

尚且つ、お餅や御煎餅など加工することで料理の種類が大幅に増える上、帝国文化ではまだ見た事のない食文化だ。

市場に対して上手く宣伝すれば、潜在性の高い商材になることは間違いない。

当初、僕の説明を聞いた父上やクリスは、半信半疑の様子で首を傾げていた。

だけど、バルディア領で『甘酒』の生産に成功。

味見をしてもらうと、二人は驚愕の表情を浮かべた。

何せ、この世界において『甘味』は貴重かつ高価なものだ。

一般市民では『砂糖』が高価で手が出しづらいから、甘いお菓子を口にすること自体あまりないだろう。

でも、『甘酒』であれば『砂糖』を使用していないから一般市民でも買いやすい価格設定が可能だ。

何より栄養価も高く、美容にも良いとなれば商品としての可能性はとても高い。

父上とクリスは甘酒を口にして、すぐにその利点に気付いたらしく目を光らせる。

「ふむ……少し独特な『甘み』だな。しかし、それでも甘味には変わりない。まずは、バルディア領内の町民に試供して反応を見るのが良かろう。……健康と美容にも良いのであれば、ナナリーや我々も日々摂取するべきだな」

「この『甘酒』は素晴らしいです。砂糖を使わず、米だけで作れるわけですから比較的低価格で販売出来る。その上、美容と健康に良いということは貴族にも売れるでしょう。クリスティ商会で是非とも取り扱いしたいですね」

二人はそう言うと、甘酒を見つめながら不敵に笑っていたのが印象的だった。

ただ、バルディア領での甘酒作りはかなり難航して、生産に成功したのは比較的最近の話だけどね。

思い返していると、ファラが感嘆した様子で声を漏らす。

「へぇ~、レナルーテでは毎日飲んでいましたけど、それは聞いたことがありませんでした」

「まだ一般的な知識ではないからね。だけど、上手く行けば『甘酒』は帝都で流行ると思う。そうすれば、レナルーテから『お米』を沢山輸入するから御義父様が喜んでくれるかもね」

彼女は僕の話を聞いて、一瞬きょとんとするが間もなく嬉しそうに微笑んだ。

その後も皆で雑談をしている間に、馬車は新屋敷に到着。

僕達が乗って来た馬車の後ろには、ファラと共にバルディア領にやってきたダークエルフの面々が乗った馬車も到着している。

乗っている馬車が完全に止まると、僕は先に降りてファラに手を差し出した。

おずおずと僕の手を握り、馬車から降りた彼女は目の前にある建物を見上げて瞳を輝かせる。

「うわぁ、立派なお屋敷ですね。レナルーテにあった迎賓館ぐらいの大きさでしょうか。こちらを私達の為に建てて下さったんですね」

「うん、だけど少し認識が違うかな」

「……?」

彼女は僕の返事の意図がわからないようで、首を傾げている。そんな彼女に僕は微笑みながら話を続けた。

「ここはね、新屋敷で働いてもらう皆の為に建設した『託児所付き』の『宿舎』だよ」

「え……えぇえええ⁉」

予想外の答えだったのか、ファラが驚愕の声を辺りに響かせる。

そして、彼女のお供としてレナルーテからやってきたダークエルフのメイドの皆は、僕の話を耳にして目の前に聳え立つ屋敷に唖然とするのであった。