軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新屋敷3

「造りや工夫……ですか?」

「うん。まぁ、『百聞は一見に如かず』って言うから案内しながら説明するね」

きょとんとするファラにニコリと微笑んだ僕は、ゆっくり歩き始めた。

内装は将来的に外交の場としても使われることも意識して気品ある造りだけど、それだけじゃない。

本屋敷で働いているメイド長のマリエッタやダナエ達といったメイド達の意見を積極的に取り入れて、新屋敷は動線や掃除のしやすさも考えられている。

より屋敷内が綺麗にしやすく、同時に維持できる造りになっているというわけだ。

そんな内装の造りを説明しながら足を進めていき食堂、執務室、貴賓室、温泉と案内と説明を行っていく。

特に温泉に関してはファラの希望もあり特に力を入れた施設だ。

温泉は男湯と女湯に分かれており、それぞれに脱衣所と大きな檜風呂とサウナが設置されている。

外には屋根付きで岩の露天風呂、壺湯、横になれる浅風呂と種類も豊富だ。

前世の記憶にあった温泉施設を参考にして造った結果なんだけどね。

ここまでの施設は、本屋敷や宿舎には費用的な問題もあって設置が出来ていない。

だから僕やファラが実際に住み始めたら、父上やメルも利用したいという話もあるぐらいだ。

露天風呂まで紹介し終えたところで、僕はファラに振り返る。

「……とまぁ、本場レナルーテの温泉には負けるかも知れないけど、どうかな」

「はわぁ……さすがリッド様というか、凄すぎて圧倒されますね」

目を輝かせて嬉しそうに言うと、彼女は視線をアスナに移して言葉を続けた。

「レナルーテの温泉でも、こんな規模で色んな種類があるなんて聞いたことがありません。アスナはどうですか?」

「確かに、私もここまでの温泉施設は聞いたことも見たこともありませんね」

「ふふ、喜んでくれたみたいで良かったよ」

彼女達の様子に、僕は笑みを溢した。

ふと、周りのダークエルフの面々にも視線を移すと、皆一様に嬉しそうに頷いてくれているようだ。

その時、ファラが首を傾げながら話しかけてくる。

「ところでリッド様……『サウナ』とはなんでしょうか?」

「あ、そっか。サウナはレナルーテにはないんだね」

問い掛けに頷きながら答えると、僕はサウナについて説明を皆に行う。

蒸気で体を温め、水風呂と交互に利用することで新陳代謝を促して体に溜まった老廃物を排出。

効果としては美容と健康に貢献できるし、心もすっきりできる。

ただ、年齢的に僕とファラにはまだ早いかもしれないと、苦笑しながら話した。

すると、ファラを含めたダークエルフの面々の目が輝きを増す。

「なるほど……美容と健康ですか。これは、毎日利用しなくてはなりませんね」

「あはは。喜んでくれるのは嬉しいけど、やり過ぎも体に良くないから適度にね」

やがて温泉の説明が終わると、今度は希望のあった和室や縁側などを案内するべく移動を開始する。

新屋敷は部屋にも種類がいくつかある。

レナルーテ文化の色濃い部屋……前世の記憶で言うなら和室だ。

お茶が出来るように囲炉裏も用意されている部屋もある。

他にも帝国文化の部屋と、二国の文化を取り入れた部屋など様々だ。

そして、新屋敷最後の部屋に辿り着くと、僕は咳払いをする。

「ここがファラの寝室になる部屋だね」

そう言うと、僕は部屋のドアを開けて室内にファラを案内する。

彼女用の部屋の造りは、レナルーテとマグノリアの二国文化を取り入れた内装だ。

部屋も結構な広さも有している。

ファラは部屋の中を嬉しそうに目を輝かせながら見回すと、嬉しそうに微笑んだ。

「リッド様、こんな素敵なお部屋をご用意して頂き、本当にありがとうございます」

「良かった。気に入ってもらえて嬉しいよ」

笑みを溢して僕が頷いたその時、ファラが部屋の奥にあるドアを見つけて首を傾げた。

「あれ……リッド様。このドアはどこに繋がっているのでしょうか?」

「ああ、それはね。隣の僕の部屋に行き来できるようになっているんだよ」

「え……」

彼女はきょとんした後、何を想像したのか急にハッとする。

そして、顔を赤らめて耳をパタパタと上下させ始めた。

そんな微笑ましい彼女の様子に笑みを溢しつつ、僕は淡々と説明を続けていく。

「バルディア領は他国との国境に位置している領地だから、そのドアは万が一の有事に備えて設置されているドアなんだ」

「あ……⁉ そ、そうですよね」

話を聞いたファラは、途端に慌てて繕うように深呼吸を行っている。

そんな彼女の様子に周りの皆は、笑みを浮かべた。

寝室には他にも脱出用の隠し通路もあるんだけど、これについてはファラやアスナにだけ伝えておくべきだろう。

彼女が落ち着いたところで、庭園と室内訓練場の案内に移った。

庭園は『枯山水』のような造りでファラが希望した『桜の木』もレナルーテから輸送、問題なく移殖されてある。

時期になれば花見もできることだろう。

桜の木に問題があるとすれば様々な管理だけど……庭師がいるから何とかなるかな。

「うわぁ、縁側から眺めることもできますし、庭園を歩くだけでもすっごく楽しいです」

「ふふ、喜んでくれて嬉しいよ」

楽しそうに話すファラに笑みを浮かべて答えるとそのまま、僕は新屋敷に併設されている室内訓練場に足を運ぶ。

ここの見た目は大きな道場のような感じになっており、アスナから以前もらった意見を参考にしている建物だ。

一通り見て回ると、アスナが感嘆した様子で呟いた。

「これは素晴らしい道場ですね。大きさも広さも申し分ありません。これならば、天候に左右されずに日々修練に励めるでしょう。リッド様、無理を聞いて頂きありがとうございます」

「いやいや、僕も修練に使用するからさ。だけど、アスナにそう言ってもらえるなら問題ないね」

アスナと二人で話していると、ファラが何やら意気込んだ面持ちで話しかけてきた。

「リッド様、こちらは私も使用しても良いでしょうか?」

「え、うん。それは問題ないけど、ダンスの練習とかかな」

「はい。それも勿論ですけど、やはり『武術』の訓練に使いたいです」

使用目的を聞いた僕は、予想外の答えに思わず「そ、そうなんだね」と頷いた。

そういえば、ファラも武術を始めたと言っていたな。

アスナも筋が良いと言っていたけど、実際はどれほどの実力なんだろう。

すると、僕の思ったことを察したのかアスナが笑みを浮かべた。

「リッド様。ご心配なさらずとも近いうちに姫様と訓練を通じて、手合わせをする機会があるかと存じます。その時を楽しみにしていて下さい」

「あはは……そ、そうだね。楽しみにしておくよ」

何故だろう。

アスナの言葉にどこか不安を感じる僕がいた。

しかし、当のファラは嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。

僕は「ゴホン」と咳払いすると「じゃあ、次の場所に行こうか」と声をかけて、案内を再開した。

実は、新屋敷の敷地内には他にもクリスティ商会の事務所や少し離れたところにエレン達に任せている工房、サンドラ達の研究所もある。

だけど、今日はそこまで案内しなくても大丈夫だろう。

ちなみに事務所、研究所や工房も新屋敷の予算に組み込んでいたんだけど、父上からは何も言われなかった。

本当に大丈夫だったんだろうか……?

そんな事を思いながら足を進めるうちに、新屋敷の案内は粗方終わる。

そして、最初の場所に戻ってきた僕は皆を見渡すとファラに視線を向けた。

「大体これで、新屋敷の案内は終わったね。じゃあ、次は第二騎士団の皆にファラを紹介したいんだけど、大丈夫かな?」

「はい。私も獣人族の皆さんにはご挨拶したいと思っておりましたから」

こうして、新屋敷の案内を終えた僕はファラを第二騎士団の皆に紹介すべくまた移動を開始するのであった。