軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドと騎士団

「父上、道の整備を公共事業として獣人族の子達に従事させるのであれば、予定より早いですが第二騎士団の設立を許可して頂けないでしょうか?」

様々な打ち合わせをしていく中、僕は今後の活動の主軸になっていくであろう、第二騎士団の設立を父上に打診した。

僕の名前を使い活動する方法もあるけど、『バルディア第二騎士団』という名が知れ渡るほうが存在感や影響力は大きくなるだろう。

活動にあたっての権限や獣人族の皆の立場も考えれば、第二騎士団設立をしておくほうが将来的にも動きやすくなるはずだ。

父上は、俯き考える素振りを見せる。

「ふむ、確かに領内の公共事業をするのであれば設立するべきだろうな。しかし、騎士団となれば領地や国の有事になれば必ず動かねばならん。その点をしっかりと認識しておけ」

領地や国の有事という言葉を使った父上は、眼の鋭さが一瞬増して僕は思わず『ドキリ』とする。

バルディア領は辺境であり、帝都よりも有事に関わる可能性も高い。

父上なりに、恐らく心配してくれているのだろう。

僕は、ゆっくりと頷いた。

「はい、覚悟しております」

「そうか……よかろう、第二騎士団の設立を許可しよう。それから、ダイナス……は忙しいか。副団長のクロスに相談して編成の原案を作って提出しろ」

「承知しました。今後のこともありますので、第二騎士団の編成を急ぎます」

僕は返事をしながら内心では歓喜していた。

獣人族の子供達の属性素質や得意分野などに分けて編成を行い、第二騎士団として活動を開始する。

第二騎士団設立というのは途中から加わった要素だけど、概ね計画は今のところ順調と言えるだろう。

設立許可が出たので、僕はガルンの紅茶を一口飲んでから新たな議題を口にする。

「父上、今後のことについてですが、魔法と武術の教育課程を領民の子供達にも施す計画でご相談があります」

「予定より大分早いな。その件についてはもう少し先だと思っていたぞ」

少し驚いた様子の父上だが、表情は厳格なままである。

父上の言葉に頷きながら、僕は話を続けた。

「僕もそう考えておりました。ですが……今日、クロスの家を訪問したことで妙案が浮かんだ次第です」

「ほう……聞かせてみろ」

厳格な面持ちで鋭い眼を光らせる父上に、僕は丁寧に妙案を説明していく。

一般的な領民の子供達に魔法や武術の教育課程を施す前段階として、バルディア騎士団に所属している騎士達の子供を三十名ほど募集する。

応募人数が多い場合には試験を行い、その過程で訓練を体験させ本当について来られるかどうかを確認。

受験に落ちた子については、次回の募集に備えてもらうという考えだ。

募集人数も教育課程を改善していけば、いずれはもっと多くすることもできるだろう。

親である騎士達は、魔法や武術の有用性はすでに認識しているはずだし、鉢巻戦での僕の姿も見ている者も多い。

何より、領主が主催している教育課程だ。

応募人数も多くなるだろうという予測も立つ。

「父上、どうでしょうか? 実際、クロスの子供である『ティス』は将来、両親のような騎士になりたいと言っています。他の騎士の子供達にも同様に高い志の子がいるでしょう。その子達を、育て、成長させることがバルディア領の発展にも繋がると存じます」

僕の説明を聞き終えた父上は、考え込むような素振りを見せてから悠然と呟く。

「バルディア騎士団に所属する騎士の子供達か……言われてみれば、確かに一般的な領民の子供よりは、両親の協力も得やすいだろうな。よかろう、その方向で原案を作り提出しろ」

「承知致しました。すぐに取り掛かります」

打ち合わせがほとんど終わった僕は、父上としばらく談笑する。

僕は、話をする中で木炭車の運転を父上に勧めた。

多分、父上に黒眼鏡は似合うと思う。

それに、母上が快復したら、家族皆で領内を木炭車で移動したら楽しそうだ。

父上も満更ではないようで、少し表情を崩している。

「ふむ、ならば私も今度運転をしてみるか」

「ふふ、楽しいと思いますよ。でも、試乗するからには感想も聞かせて下さいね」

笑みを浮かべて答える僕だったが、ふいにメルのことを思い出しハッとする。

父上は僕の表情の変化に気付き、怪訝な面持ちを浮かべた。

「リッド、どうした……何か、伝え忘れでもあったのか?」

「あぁー……そうですね。実はメルのことなんですけど……」

その後、クロスの子供であるティスと仲良くなったメルが唐突に武術を習いたいと言い始めたことを父上に説明する。

僕、ディアナ、ダナエの三人で必死に止めたが納得してもらえず、メルが父上に直接話すと言い始めたことを伝えた。

説明を聞き終えた父上は額に手を添えて俯き、呆れ顔でため息を吐く。

「……メルが魔法を習いたいと言い始めた時から、悪い予感はしていたのだ。これも、リッドお前の影響か?」

「いやいや、メルにも何か考えがあるのだと思いますよ。本人に直接聞いてみてはいかがですか」

僕の答えを聞いた父上は、ゆっくりと顔を上げてから呟いた。

「そうだな、そうするか」

「では、僕の話はあらかた終わりましたから、メルに伝えてきますね」

「う、うむ……」

僕は机の上にある紅茶を飲み干すと、執務室を後にしてメルに「父上が呼んでいるよ」と伝える。

この時のメルは「わかった、じゃあいってくる」と僕に答え、何やら決意に満ちた目を輝かせながら、喜び勇んで父上の待つ執務室に向かうのであった。

ちなみに、父上とメルがどんな話をしたのか僕は知らない。

しかしそれから数日間、メルは執務室を毎日尋ねていたようで、最終的に父上が根負けしたらしい。

メルはそのことを、僕に満面の笑みで「ちちうえがね、わかったっていってくれたの」と教えてくれた。

武術を習うことを認めてもらえたのが、よっぽど嬉しかったのだろう。

その日のうちにメルは、母上にも僕がいる目の前で伝えた。

母上はメルの話を満面の笑みを浮かべて聞き終えると、ゆっくりと僕に視線を向ける。

「ふふ、リッド。悪いけど、メルと二人でライナーを呼んで来てくれない。少し……話したいことがあるの」

「は、はい……」

母上の浮かべた笑みに、何やら途轍もない凄みを感じた僕に戦慄が走ったのは言うまでもない。

その後、メルと二人で母上が呼んでいることを父上に伝える。

僕達の話を聞いた父上は、額に手を添えて俯くと、珍しくどんよりとした雰囲気を纏ったのであった。