軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドと打ち合わせ

木炭車と懐中時計の完成後、僕と父上は様々な方向に動き始めた。

父上は、レナルーテに書簡を送り国境付近での会議を打診。

帝国の皇帝にも確認と根回しの為、すぐに帝都に出発したのである。

バルディア領に残された僕は、第二騎士団の設立に向けてクロス、カペラ、ディアナ達と部隊編成の打ち合わせを行っていた。

戦闘特化、公共事業専門など調整することは多い。

その中、第二騎士団の内部に組織する部隊で調整が難航しているのが、主に僕、ディアナ、カペラの三人で考えている諜報部隊だ。

なお、第二騎士団内において、諜報機関の名称は『バルディア辺境特務機関』の予定となっている。

獣人族は種族によって属性素質や得意分野が異なる為、特化にするかバランスを取るかで調整が難航しているという感じだ。

そんな調整を行いながら、今日の僕は応接室で来客を待っている。

僕は、懐から懐中時計を取り出して時間を確認すると「そろそろかな」と呟いた。

その時、応接室のドアがノックされ、メイドから来客が告げられる。

すぐに通すように伝え、僕は彼女の来訪を待つ。

それから間もなく、ドアが再度ノックされ返事をすると来客が応接室に入室した。

「リッド様、お待たせして申し訳ありません」

「やぁ、クリス。待っていたよ」

クリスは綺麗な金髪の髪を靡かせ、凛々しい面持ちを浮かべている。

僕は、答えながらソファーに座るように彼女を促した。

そう、今日の来客はクリスだ。

彼女は僕に促されるまま、ソファーに座ると微笑んだ。

「リッド様。今日はどんな商品のご相談でしょうか」

「はは、話が早くて助かるよ。まずは、これさ」

僕は彼女の問いかけに答えながら、ゆっくりと懐中時計を机の上に置いた。

クリスがこれを見るのは初めてのはずだ。

彼女は怪訝な面持ちを浮かべて僕に問い掛ける。

「これは……なんでしょうか」

「それを手に取って、出っ張りの部分にあるボタンを押してみてごらん。カバーが開くからさ。落とさないように気を付けてね」

「なるほど。肖像画を入れたりする、アクセサリーのロケットみたいな感じですね」

彼女は丁寧に懐中時計を手に取ると、僕に言われた通りボタンを押す。

カバーが開き、時計の文字盤を見た彼女は、一瞬きょとんとするがすぐに時計であることに気付いてその場で勢いよく立ち上がった。

「リッド様、これは携帯できる時計ですか⁉」

「そうさ、懐の中に入れて携帯できる時計。『懐中時計』だね。どうだい、凄いでしょ?」

「す、凄いも何もないですよ。こんなもの、大陸中の国と貴族が欲しがります。私も欲しいぐらいですし……」

クリスの言葉に僕にニコリと微笑むと、後ろに控えていたディアナに声を掛ける。

「ディアナ、準備していたものを机に置いてくれるかな」

「承知しました」

ディアナは、僕とクリスの間にある机に装飾が施された『木箱』を置くと、会釈して後ろに下がった。

その間に、クリスはソファーに腰を下ろす。

僕は、机の上に置かれた木箱を目の前に座っているクリスにそのまま、スッと差し出した。

「クリスにずっと渡そうと思っていたんだ。開けてみて」

「私に……ですか? では、僭越ながら失礼して改めさせて頂きます」

畏まった様子で木箱を開けたクリスは、目を丸くする。

そこには、バルディア家の紋章が入った『懐中時計』が用意されていたからだ。

実は、懐中時計の開発に着手する時から、最初の完成品を渡す相手はほぼ決めていた。

その内の一人が、僕の眼の前にいるクリスだ。

彼女は困惑した様子で僕に視線を向ける。

「リッド様、いくら何でもこんな貴重なものは受け取れません。あ、いえ、もし頂けるのであれば適切な金額をお支払い致します」

ただでは受け取れないが、購入できるなら欲しいというのがクリスらしい。

彼女が運営しているクリスティ商会は、僕と出会った時と比べるとかなり規模が大きくなっている。

それこそ、『時は金なり』と言わんばかりの忙しさだろう。

手軽に時間を確認できる『懐中時計』は、クリスにとって間違いなく魅力的な商品のはずだ。

しかし、僕は彼女の答えに軽く首を横に振る。

「いやいや、その『懐中時計』をクリスに使って欲しいんだ。勿論、理由はいくつかある。一つは広告塔として、一つは改善点を教えて欲しい。最後は……その時計をもうしばらくしたら帝都の貴族に売りたいんだよ。それこそ、適切な……いや、適切過ぎる値段でね」

僕は言い終えると同時に、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

クリスは、言葉の意図にすぐに気付き、黒く微笑んだ。

「そういうことですか……ふふ、リッド様も中々に商魂たくましいですねぇ」

「ありがとう、褒め言葉として受け取るよ」

こうして、クリスとの打ち合わせが始まったのであった。