軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リッドとアレックス

僕のお願いによって、アレックスと猿人族のトーマとトーナが諦め顔で俯き、どんよりした雰囲気を出している。

ふむ……さすがに無茶ぶりしすぎたかな? そう思っていると、隣にいたメルが目を輝かせながら呟いた。

「ねぇ、にいさま、わたしもさわっていい?」

「あ、うん。はい、壊れないように丁寧に扱ってね」

「はーい、うわぁ……ありがとう、にいさま」

メルは笑みを浮かべ、興味深そうに懐中時計を見ている。

すると、彼女の隣に立っていたダナエが僕に問い掛けた。

「リッド様、時計の小型化は凄いと思いますが、どうしてそんなに急いで個数が必要なのでしょうか?」

「まぁ、至急必要というわけではないんだけどね。でも、バルディア騎士団と関係者の皆には出来る限り早く渡してあげたいんだ。その意味は、ディアナはすぐにわかると思うけどね」

僕はダナエに答えながら、視線をディアナに移す。

ダナエもきょとんとしたままに彼女に視線を移した。

ディアナは僕達の視線を感じて、呆れ顔を浮かべる。

「……時間が各個人。というより、騎士団のような組織で言えば分隊単位もしくは班単位でわかるようになれば、組織力はより一層高まります。全く、リッド様が考えることは末恐ろしいものばかりです」

「はぁ……つまり、どういうことなんでしょうか?」

ダナエは、よくわからない様子で首を傾げている。

僕は苦笑しながら彼女の仕事に例えた。

「あはは、わかりやすく言うとダナエも屋敷の掃除をすると思う。その時、他のメイドと何時までに終わらせようと事前に話し合ったりするでしょ? でも、それは屋敷の中には時計があるから出来るのさ。そもそも時計がなければ、『時間を決めて同時に動く』ことは出来ないんだよ」

「あ……そっか。つまり、どんな場所でも事前の打ち合わせをして『懐中時計』を持っていれば、離れていても行動する時間を合せられる……ということですね?」

僕はダナエの言葉に微笑みながら頷いた。

「そそ。この『懐中時計』は色んな仕事をする人達の助けになるから、バルディア家で責任を持つ立場の人達に、出来る限り早く渡したいんだ。あと、絶対領外に出せないから、父上の許可が取れ次第、バルディア家の紋章も刻印する予定だよ」

ダナエは感心した様子で目を丸くしているが、ディアナは呆れ顔を浮かべたままだ。

そう、屋敷内に時計がある僕達には当たり前で忘れがちだけど、『時間をいつでも確認できる』ということは実は凄いことだったりする。

特に、騎士団と言った班や分隊単位で動く組織であれば、尚更時間が確認出来ることは重要な部分だ。

『懐中時計』が騎士団の隊をまとめる隊長、副隊長の人達の手に届けばバルディア騎士団の組織力はさらに強化されるだろう。

恐らく帝国一になるのではないだろうか? それぐらいの可能性を『懐中時計』は秘めている。

いずれは腕時計も考えていきたいけど、それはまた追々という感じかな。

ダナエ達と話していると、俯いていたアレックスが重々しく顔を上げて呟いた。

「そのお話も伺っておりましたので、衝撃などにも出来る限り強くしたつもりです。でも、さすがに五十個は厳しいかもしれません。正直、仕組みと設計図は完成していますけど、部品がまだ手作りですから……最短でも一個に二~三日かかりますよ」

「……それなら、大量生産用、つまり量産型というのかな。生産ラインを作れるような感じでどうだろう? 貴族向けの超高級志向なやつは手作りと言うか精密に作って欲しいけど、バルディア騎士団向けとかの配布用は簡素な感じで衝撃に強ければいいからさ」

僕の答えにアレックスは腕を組み、眉間に皺を寄せている。

実際、騎士団用と貴族向けは同じにする必要性は全くない。

あくまで騎士団やバルディア家の皆に配布する懐中時計は衝撃に強くて、時間がわかれば良いのだ。

その時、恐る恐る猿人族のトーナが呟いた。

「あの……リッド様にお渡した懐中時計はかなり細かく精巧に作りました。でも、量産用ということであれば、多少の質を落として部品の型取りなどをすれば、できないことはないと思います。その、仕組み自体は完成していますから……」

彼女が話し終えると、続くようにトーマも僕に視線を向ける。

「俺も、量産型専用の部品や作り方を研究すれば……色々と工夫できる余地はまだまだあると思います」

彼女とトーマの呟きに皆の視線が集まり、二人は思わず照れくさそうに顔を赤くしてしまう。

二人の言葉にアレックスは、ひとしきり唸った後に呟いた。

「うーん。一応、まだ月初めだし、なんとかなるかなぁ……」

「まぁ、五十個はあくまで『目標』だからね。とりあえず、出来る限り沢山作ってくれればそれで大丈夫だよ。それに、高すぎる目標を達成できないことより、低すぎる目標を達成してしまうとそこで満足して止まっちゃうから、皆には目標を高く持ってほしいかな」

アレックスはハッとすると苦笑しながら呟いた。

「あはは……承知しました。今月中に五十個を目標に色々と出来る方法を考えてみます。それに、出来ない理由を探すより、出来る方法を考えるほうが楽しいですからね」

「ありがとう。でも、無理はしないでね。人数もいるから交代制とかでちゃんと休んでよ? 此処にいる君たち含めて、とても大切な存在なんだからね」

「はい。健康管理も仕事ですからね。その辺は調整して取り組んでいきます」

こうして、アレックスと猿人族の皆で新たに『懐中時計』の量産型モデルの作成に取り組んでくれることになった。

それから、僕とアレックス達の話が一段落すると、エレンがわざとらしく咳払いをして皆の注目を集める。

「リッド様、アレックスとの打ち合わせはもうありませんか?」

「うん……そうだね。また何かあれば、その都度相談するよ」

頷くと、エレンはニンマリと笑みを浮かべた。

「いよいよ僕達の作品、木炭車のお披露目をする時が来ましたね。では、外の専用倉庫にご案内いたします」

「わかった。じゃあ、行こうか」

「はーい‼」

僕の呼びかけにメルが元気よく返事をしたあと、僕達は工房の来賓室を退室してエレンが案内する『倉庫』に向かうのであった。