軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔法訓練の開始

「さて、今日はお待ちかねの魔法修練の日です。サンドラ先生が中心となって教えてくれますので、しっかり話を聞くように。僕も参加するからみんな一緒に頑張りましょう」

僕は今、宿舎の屋外訓練場にディアナやサンドラ達、そして獣人族の子達と集まっている。

そう、今日から魔法教育が開始されるのだ。

正直、昨日からワクワクしっぱなしである。

子供達の属性素質はすでに確認済みの為、後は自由に使えるようになるだけだ。

そうすれば、僕の事業は大きく動き出す。

その為に、僕も今回はサンドラ達と同様に教える側に回っているわけだ。

サンドラは僕の紹介で咳払いをすると、一歩前に出て獣人族の子達を見回すと自己紹介を始める。

「ただいまご紹介に与りました、サンドラ・アーネストです。ちなみに、リッド様に魔法を教えたのは私です。さらに、今からお教えする魔法教育は、リッド様と私達によって作製されました。つまり、皆さんの頑張り次第では、リッド様のような魔法も使えるようになるかもしれないということです」

彼女の自己紹介と説明が終わると獣人族の子達から明るく、期待に満ちたどよめきが起きる。

彼らは、僕の魔法を身をもって実体験している子がほとんどだ。

だから、同じような魔法が使えると聞いて浮かれているのかもしれない。

僕は彼らを見渡すと、ニコリと微笑んだ。

「何か気になる点はあったかな?」

問いかけると、早速数名が挙手をしたので僕は順番に尋ねていく。

「うん……まずは、兎人族のオヴェリアからいこうか」

オヴェリアは色んな意味で目立っているので、ここにいる皆で知らない子はいないだろう。

それに、結構なムードメーカーにもなってくれている気がする。

彼女は、笑みを浮かべながら答えた。

「リッド様のような魔法って言ってたけどよ。試合中に見せていた魔法を教えてくれんのか」

「そうだね。属性魔法の基本は、僕とサンドラで開発した『槍系統魔法』というので統一するからその認識で良いよ」

「そうかい……へへ、楽しみだな」

彼女は僕の答えを聞くと嬉しそうに頷く。

なお、『槍系統魔法』というのは、僕が主に使っている『火槍』などだ。

本当は、僕一人で創ったのだけど、外聞的なことを考えてサンドラと共同開発した魔法ということにしている。

オヴェリアとのやり取りが終わると、僕は次の子に視線を向ける。

「じゃあ、次は君ね……えっと、たしか鼠人族のサルビアだったかな」

「はい……覚えて頂けていて光栄です。ちなみに、その『槍系統魔法』というのはすでに、他の魔法を扱えていても教えて頂けるのでしょうか?」

「勿論だよ。むしろ、君達が魔法を使えるならぜひ教えてほしいと思っているよ」

「私達の魔法を……ですか? でも、リッド様のように凄い魔法なんてお見せ出来ません」

サルビアは言い終えると少し自信なさげに俯いてしまう。

そんな彼女に僕は首を横に振ってから優しく語り掛けた。

「そんなことはないよ。魔法を使えるだけでも十分に凄いことなんだから、魔法に凄いも凄くないもないさ。だから、自信を持って君達の魔法を今度教えてほしいな」

「……‼ わかりました。ありがとうございます」

サルビアは、僕の答えにパァっと明るい表情を見せながらはにかんでいる。

ここにいる皆が、どのような経緯で魔法を使えるようになったのかはわからない。

だけど、使えていることは本当に凄いことだと思う。

僕が周りを見渡すと、手を上げている子がもう一人いたので視線を向ける。

「君は牛人族のベルカランだったね」

「わ~、名前を覚えていてくれたんですねぇ。感激です。ええと、私は魔法もそうですけど『身体強化』を扱えるようになりたいんですけど……そちらも教えて頂けるのでしょうか?」

「そうだね。だけど『身体強化』は魔法……正確には魔力の扱いがある程度出来ないと扱えないから、まずは魔法を使えるようになるのが先決だね」

「わかりましたぁ。楽しみです」

ベルカランは僕の答えにニコリと笑みを浮かべている。

身体強化は他の子達も興味がある内容だったのか、彼女に答えたつもりが皆の目が期待の色に染まっているようだ。

目の前にいる子達を見回すけど、もう手を上げている子はいない。

僕は咳払いして注目を集める。

「さて、それじゃあ魔法訓練を始めようか」

「はい‼」

僕の言葉に、獣人族の子達は勢いよく一斉に答えるのであった。

魔法訓練を始めてしばらくして、あちこちでは少しずつ「できたぁああ‼」と歓喜の声が聞こえてきている。

面白い事に、魔法の扱いに関しては種族というより個人差という感じが強いようだ。

それに、出来ている子は元から何かしらの魔法を扱えている子が多い。

あと意外なことに、猫人族のミア達や兎人族のオヴェリア達は苦戦している。

しかし、彼女達は身体強化や獣化をしていたのですぐに出来ると思っていたがどうも勝手が違うらしい。

僕は、悪戦苦闘しているオヴェリアに近寄ると問い掛ける。

「はは、苦戦しているみたいだね」

「……なんかこう、感覚が掴めなくてよ。コツとかってないのか?」

彼女はハッとして僕に振り向くと、決まりの悪そうな表情をしながら、意を決したように問いかけに答える。

僕はそんな彼女の様子に思案顔を見せた。

「ふむ。でも、オヴェリアは身体強化とか獣化が出来るでしょ? その時に、魔力の流れとかは感じたりしないの?」

「いや、身体強化とか獣化はこう……感覚で出来るんだよなぁ。こんな、魔力の流れを感じたりはしねぇんだ。体の限界と一緒に、獣化は解けるからよ」

彼女の答えは非常に興味深い。

僕やサンドラ達は魔法発動の為に、一つずつの感覚を掴んでいくイメージだ。

恐らくオヴェリアに限らず、身体強化を使えておきながら魔法発動が苦手という子達は無意識では魔力を扱える。

だけど、意識的に使おうとすると普段無意識に使っているから、今度は感覚がわからないのだろう。

僕とは覚えていく順序が逆だ。

その時、ディアナが呆れ顔で彼女に話しかけた。

「オヴェリア……そろそろ、言葉遣いを意識しなさい。先日から言われているでしょう」

「へ……んん‼ 承知しました。これでよろしいでしょうか?」

「はぁ……いまはそれで良いでしょう」

ディアナの言葉にオヴェリアは少しニヤけながら、おどけて答えている。

二人のやりとりを横目で見ていた僕は、ニヤリと意地の悪そうな笑みを浮かべてオヴェリアに問い掛けた。

「ふふ……オヴェリア、魔力変換の感覚を掴むのは大変でしょ。通常だと時間が掛かるけど『ある方法』を使えばすぐにでも『魔力変換の感覚のコツ』を知るきっかけを作れるけど、どうだい試してみるかい?」

「……な、なんだよ、その薄気味悪い笑みは……でも、まぁ、いち早くは使えるようにはなりたい……です」

彼女は僕の黒い笑みに気付いているようで、たじろいでいる。

だけど、それでもコツは掴みたいようで、目は好奇心の色に染まっていた。

きっと、初めての僕もこんな表情を浮かべていたのだろう。

「……いいんだね。じゃあ、両手を出してもらってもいいかな」

「……こうか?」

訝しい顔を浮かべている彼女の両手を、僕は笑みを浮かべたまま掴む。

「じゃあ、やるね。頑張ってね」

「……? 何をがんばるぅうううう⁉」

オヴェリアが一瞬きょとんとした顔を浮かべるが、すぐに『バチン‼』という凄い音が辺りに鳴り響き、彼女がその場で痛みに悶えている。

必死に逃れようとする彼女だが、僕が両手をがっちり掴んでいるので逃げられない。

「さ……裂ける‼ 体が裂ける……‼」

「大丈夫。そう言って本当に裂けた人はいないらしいから。もう少し頑張ってね」

彼女は痛みに悶えながら、僕の顔を見る。

そして、僕がニッコリと微笑むと絶望の表情を浮かべるのであった。

「はぁはぁ……」

オヴェリアはビリビリから解放されると、怨めしい目を僕に向けながら肩を上下させている。

彼女に施したのは特殊魔法『魔力変換強制自覚』だ。

僕が魔法を初めてサンドラに習った時に、施された懐かしい魔法でもある。

僕は彼女に微笑みながら尋ねた。

「あはは、ごめんよ。でも、どうだい? さっきよりも魔力を感じるんじゃないかな?」

「はぁ……そんなわけ……⁉」

彼女は自身の中で今までとは違う何かを感じたようでハッとする。

僕はニコリと微笑みながら、話を続けた。

「自覚できたみたいだね。じゃあ、僕が試合中に何度も見せた『水槍』を思い出してごらん。イメージが出来たらあの的に向かって発動してみようか。最初は魔法名を口に出そうね」

オヴェリアは僕の問い掛けに「わかった」と頷くと深呼吸をして集中する。

そして、右手を的に向かって差し出すと「水槍‼」と叫んだ。

その瞬間、彼女の右手から水槍が生成されて、見事に的に命中する。

「……すげぇ、あたしでも本当に魔法が使えるんだな……」

彼女は魔法を放った自身の右手を見つめながら感慨深げに呟いている。

そんな彼女に僕はニコリと微笑む。

「おめでとう、オヴェリア。その感覚を忘れないようにね」

「ああ‼ リッド様、恩に……きますでございます」

彼女は満面の笑みを浮かべ変な敬語を使いペコリと頭を下げた後、嬉々として魔法訓練に挑み始める。

その時、視線を感じてふと周りを見渡すと、他の子達が何やら目を期待の色に染めていることに気が付いた。

その中、シェリルやミアがおずおずとやってきて僕に話しかけてくる。

「あの……リッド様、まことに恐縮なのですが私にも、そのオヴェリアが体験した魔法を施して頂くことは可能でしょうか?」

「お、俺もお願い……します」

「うん、いいよ。でも、凄く痛いから覚悟してね」

僕の答えを聞いた二人は、パァと明るく嬉しそうに微笑んだ。

「……‼ は、はい‼ よろしくお願いします‼」

「ありがとう……ございます」

彼女達に満面の笑みを見せ、優しく微笑みながら魔力変換強制自覚を僕は容赦なく行う。

シェリルとミアが想像以上の痛みに悶えたのは言うまでもない。

それでも皆は、魔法を積極的に使えるようになりたいと思ってくれたらしく、僕の前には長蛇の列が出来た。

その後、しばらく訓練場には子供達による阿鼻叫喚の叫びがしばらく響き続ける。

ちなみに、サンドラや他の先生も同じ魔法を使えると説明したのだが、何故か僕の前から長蛇の列が消えることはなかった。