軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武術訓練の開始

魔法訓練がひと段落すると、次は武術訓練に移行していく。

教官となるのは、クロス、ネルスといった騎士団員という構成になっている。

出来ればルーベンスにも加わって欲しかったのだが、彼は副団長になるためダイナスの下で頑張っているのでそれは難しい。

皆は魔法訓練で少し疲れた顔を浮かべているが、僕は微笑みながらクロス達を紹介していく。

「さて皆、次は武術訓練です。皆の基礎的な身体能力は僕より高いから、彼らからしっかり学んでくれれば近接戦はきっと僕よりも強くなれると思うから頑張ってね」

僕が皆に言葉を掛けると、クロスが一歩前に出て自己紹介を始める。

「改めて、バルディア騎士団で副団長を務めているクロスだ。君達の潜在能力の高さはすでに鉢巻戦で知っている。その力を最大限活かせるようにこれから指導をしていくつもりだ。よろしく頼む」

クロスの挨拶が終わると、続いてディアナやルーベンスの幼馴染であるネルスが前に出る。

「同じく、バルディア騎士団に所属しているネルスだ。私はクロス副団長の補佐をする立場になる。まぁ、これからよろしく頼む」

クロスは少し厳しめな言い方をするが、ネルスは少しおどけたような感じでの挨拶を行う。

しかし、クロスはそれを咎めようとはしないので、ひょっとすると意図的にしているのかもしれない。

二人の挨拶が終わると、準備運動が行われ訓練が開始された。

今回の訓練には僕も参加して、皆と一緒におこなっていく。

最初は走り込みなどの基礎訓練から始まり、体をほぐし終えると体力測定のような感じで各々の得意分野を確認していき、身体能力の高さで班別けがされる。

これは、より効率的な訓練をする為だ。

あと、今後彼らが所属する部署によっては、そこまでの戦闘力を求めない場合もある。

それでも、万が一に備えて彼らには武術を学んでもらう予定だ。

だけど、非戦闘員のような立場になる子達の訓練内容は少し軽めになるので、その為の班分けでもある。

やがて体力測定が終わり、班分けも落ち着くとクロスが声を轟かす。

「よし。いまの分けた班のメンバーを覚えておくように。今後の訓練では大概一緒になる面々だからな。それから、鳥人族のアリア達はリッド様のもとに集まってくれ。では、それぞれの班で訓練を開始するぞ」

彼の説明が終わるとあちこちで返事が聞こえ、班ごとで訓練が開始される。

基本的には、担当教官の騎士と子供達で模擬戦や組手を順番に行っていく感じだ。

後は、『武術の形』の基本を学んでもらう。

この『武術の形』というのが主にクロス、カペラ、ディアナ、ルーベンスの四名が構築したもので、レナルーテとバルディア騎士団の武術が融合されたものになっており、僕が扱う『武術の形』でもある。

クロス達が発言した後、周りの模擬戦を観察していると様々な子達が騎士達に挑み、返り討ちにあって目を丸くしている。

恐らく、少しは勝てると思ったのかもしれない。

でも、バルディア騎士団の騎士達は帝国でもかなり練度が高い騎士団だ。

騎士一人にしても、今の子供達ではそう易々と勝てないだろう。

ふと、クロスの班を見てみると鉢巻戦で活躍していた子達がほぼ集まっている。

彼らは、意気揚々とクロスに挑むが、簡単に返り討ちにあって悔しそうな面持ちを浮かべているようだ。

ネルスも少し意外だけど彼らを余裕で返り討ちにしているみたい。

まぁ、クロスは僕よりも確実に強いから、良い刺激になるだろう。

僕は全体を見て、順調にことが進んでいる事に一安心して呟いた。

「うん、思ったより皆が前向きに取り組んでくれているから良かったよ」

「さようでございますね。恐らく、鉢巻戦においてリッド様の実力とお人柄を示したからこそ、彼らも前向きに取り組んでいると存じます」

ディアナが丁寧に答えてくれ、僕は笑みを浮かべた。

「はは、それなら、僕も頑張ったかいがあったかな」

彼女に答えたその時、アリア達が僕のところに手を振りながらやってきた。

「リッド様‼ 私達だけ、ここに集まれって言われてきたけど、何をするの?」

アリアは元気よく声を発しながら、きょとんとした表情を僕に見せる。

彼女の姉妹達も同様だ。そんな彼女達に僕は微笑みながら説明を始めた。

「ふふ、アリア達には少し特別な訓練やお願いをしたくてね。ちなみに、アリア達は『弓』とかって使ったことあるのかな?」

「弓? 弓というか、一通りの武具の扱い方は教わっているから弓は皆使えるよ」

「はい。アリア姉さんの言う通り、私達は基本的な動きだけなら剣、弓、槍は使えます」

「……基本的だから、リッド様の求める内容次第では練習が必要かもです」

僕の問いかけに、アリア、シリア、エリアの三人が答えてくれた。

他の子達も頷いて使えることを教えてくれる。

なるほど、これはありがたい。

実は、鳥人族の彼女達にはある特別な訓練や、任務を今後お願いしようと思っているのだ。

でも、その為には『弓』が扱えるようになってもらうことに加えて、体力も付けてもらう必要がある。

だから、アリア達には特別な訓練を受けてもらうというわけだ。

三人の疑問に答えるように僕は話しを続けた。

「みんな、教えてくれてありがとう。じゃあ、今後の君達の訓練については僕とディアナが受け持つことになるから、よろしくね」

「本当⁉ えへへ、リッド様とお姉ちゃんに教えてもらえるのは嬉しいな」

アリアは、僕達に直接教えてもらえるとは思っていなかったらしく、嬉しそうにはにかんだ。

ディアナもそんな彼女に優しい微笑みを見せる。

「私も、貴方達を受け持つことが出来て嬉しいです。さぁ、では今後の訓練と目的について説明を致しましょう」

「はーい‼」

その後、アリア達は僕とディアナからの話を聞いて目を輝かせながら訓練に臨み始める。

こうして、武術訓練は順調に進むのであった。

「くっそ……クロスの旦那もネルスもとんでもなく強いな」

「はぁはぁ……勘弁してほしいよな。あいつら、息も上がってないぜ」

クロスとネルスが受け持つ班に振り分けられたオヴェリアやミア、その他の面々は騎士達の強さに圧倒されていた。

獣人族の身体能力からすれば、大人の人族ぐらいなら多少は戦える。

しかし、それは浅はかな考えだったとすぐに思い知らされた。

騎士達の動きには無駄がなく、オヴェリアやミア達の動きはすぐに読まれてしまう。

その結果、全く太刀打ちが出来ずに、子供達は地べたに座り込み、肩で息をするはめになっていた。

地べたに座り込む子供達を一瞥したクロスは、ニヤリと笑みを浮かべると挑発するように声を発する。

「どうしたお前達。地べたに座って休む暇があるなら早くかかってこないか。言っておくが……リッド様は俺と毎日、何度も立ち会っている。しかし、お前達のように地べたに座り込んで休むことなどないぞ。それとも、最初の勢いは単なる見せかけだったのか?」

クロスの言葉を聞いた子供達は驚きの表情を浮かべる。

彼らの身体能力を持っていても、彼には太刀打ちできていない。

そんなクロスに、貴族の子息が果敢に毎日挑戦をしているという。

その事実を聞かされた子供達は、反骨心に火が付いたようで目に闘志を宿す。

その中、ゆっくりと立ち上がったオヴェリアが独り言のように呟いた。

「ちっ……言ってくれるぜ」

「獣人を舐めんなよって感じだな」

「全くだわ……でも、リッド様があんなに強い理由も分かった気がするわね」

彼女の呟きに答えたのは、ミアと兎人族のアルマだ。

そんな彼女達に、気付けば近寄ってきていた熊人族のカルアと狼人族のシェリルが続く。

「……そうだな。だが、私達もリッド様が強くなった環境に身を置くのだ。ならば、いずれ追いつくことも可能だろう」

「同感です。私は、必ずリッド様の強さに追いついてみせます……‼」

クロスとネルスは顔を見合すと嬉しそうに微笑んだ。

彼らを強く鍛えれば将来必ず、バルディア領の為になるだろう。

クロスは笑みを浮かべ、再度彼らを挑発する。

「ふふ、その意気だけは認めてやろう。しかし、まだまだ気迫が足りん。俺とネルスの二人で相手をしてやるから、お前達はまとめてかかって来い」

「えぇ、副団長、それは少し面倒くさいですよ」

ネルスはクロスの言葉に気怠そうに返事はするが、その目は真っすぐに子供達を見つめている。

獣人の子供達は挑発とわかっていながらも、二人に果敢に挑んでいくのであった。